(この文章は3/30日に書きました)
・「サステナビリティ」(持続可能性)の歴史
・渋沢栄一『論語と算盤』の内容
・渋沢栄一が設立に関与した481社のうち296社が現在も事業を継続できている秘密
について書いています。
「サステナビリティ」(持続可能性/Sustainability)は、まず国が追究すべきこと
地域(地方)や企業や街の「サステナビリティ」(持続可能性)が問題になっていますが、その大元の国(社会)が「サステナビリティ」でなければなりません。
「温故知新」という言葉があります。『論語』を出典とする故事成語です。原文は「温故而知新、可以為師矣(故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知れば、以って師と為る可し)」です。 歴史や語り継がれていたことの中に、現代にも通用する真理や学ぶべきことがあり、それを修得すれば人生や社会の師匠になれる、というような意味です。故きを温ねるなので、「サステナビリティ」(持続可能性)の考えを、国の問題として考え始めたのは、いつ頃なのかを探ることにします。
国の「サステナビリティ」を世界に先駆けて研究し、構築し、その原理を『古事記』に遺したのが日本人なのです。
時代は、7世紀です。歴史的人物で言いますと、聖徳太子から天武天皇の頃の約100年で国のかたちが定まります。
動物、植物に限らず、生きているものは持続性(継続性)があります。それの反対が死です。そこで成長が止まり、生命体は急速にバラバラに分解し始めます。ということは、持続性を維持するためには、その中心(核)となるものが必要ということです。自然に生まれた生命は、細胞といったミクロのレベルにおいてもすべて核がありますので、敢えて手を加える必要がありません。人間がつくる組織や建物といったものを持続性がある確固としたものとするためには、中心となるべきものを作る必要があるということです。
このメカニズムを発見するまでは、様々な苦労があったと思います。なぜならば、お手本となる国がなかったからです。大陸や半島では、様々な王朝が勃興を繰り返していました。国内においても動乱がうち続いていました。蘇我氏の暗躍と崇峻天皇暗殺事件(592)、十七条憲法(604)、山背大兄王殺害事件(643)、大化の改新(645)、白村江の戦い(663)、壬申の乱(672)と続きます。山背大兄王は聖徳太子の息子です。壬申の乱は、大海人皇子と大友皇子の権力争いです。勝利した大海人皇子が天武天皇として即位します。
このおよそ100年の経験により、国家の中心(核)に天皇を位置づけること、そして、中心(核)が中心の役割を果たすためには、権力を手放すことを思いつきます。コマを思い浮かべてもらえばイメージしやすいと思いますが、コマが勢いよく回っている時、中心軸は止まっているかのようです。中心軸を太くして重くするとコマは上手く回りません。つまり、権力を集中させると、国の持続性(継続性)が弱まることを発見します。
権威者の天皇と権力者(当時)の貴族を分けることにしたのです。そして、天皇と神を神話によってつなげたのです。歴史学者がよく神話は非科学的と言いますが、天皇の権威を高め、ひいては天皇制を守るために作られた話なので、科学とか非科学という次元で推し測るレベルの話ではありません。
なぜ、神(神話)とつなげる作業をしたのか、それは天皇を殺す輩が出ないようにするためと、権力を握った者がさらに天皇の地位を得ようとすることを防ぐためです。いずれにしても、天皇制を強固なものにするための措置なのです。憲法学者の中には、王権神授説のようなものと説明する方がいますが、王権神授説は王の独裁を正当化するご都合主義的な理屈であり、「王権」の「権」は権力の意味なので、全く違います。
日本という国を一つの王朝と見るのが一番科学的だと思いますし、それを世界に向けてアピールすることが日本の防衛にもなります。なぜなら、世界最古の王朝となれば、世界中の人たちが日本を守れと言い始め、攻め滅ぼそうと考えている国の指導者に対する抑止力になるからです。
逆に、反日歴史家たちがそれをさせじと、日本の歴史は「8月革命」があった戦後からとか、明治維新以降の近現代(2022年度から高校に『歴史総合』が導入され、扱うのは日本史、世界史の近現代の予定)からということを言い出して、通史の勉強をさせないような力が働いています。
「サステナビリティ」(持続可能性)を会社づくりの理念に採り入れた最初の人が 渋沢栄一
渋沢栄一(1840~1931)は日本資本主義の父と呼ばれていますが、彼は自身の実業家人生の中で約500社の会社の設立、運営に携わっています。彼は江戸末期に生まれ、江戸幕府に仕えています。パリ万博に使節団として参加し、そこで株式会社の組織や資本主義社会の仕組みを学びます。
東京商工会議所によりますと、彼が設立に関与した企業は481社あり、そのうち296社の会社が現在も事業を継続しているとのことです。そして、関与した企業の6割が平均で120年を超える長寿企業として生き残っているとのことです。長寿の主な理由は何かということですが、ずばり企業理念です。企業理念というのは、彼が常に追究していた
「私益と公益の両立」
です。単なる利益を追求するだけではなく、その事業が公益にかなうものでなければいけないというのが渋澤の経営哲学だったのです。
企業のありかたについてはこちらもどうぞ
彼は日本資本主義の父と呼ばれていますが、彼自身は「合本(がっぽん)主義」という言葉を使っていました。価値を創るもと(本)は資本と公益を考える人材です。それを合わせることにより、共感が広がり、共創の社会となり夢が広がると考えたようです。まさにSDGsの先駆的な考え方がそこにはあります。
つまり、国を富ませ、人々を幸せにするには、「企業の社会貢献」が不可欠とみて、幅広い社会事業、福祉、慈善活動にも取り組んでいます。そういった考え方でしたので、企業が目先の利益のみを追いかけることに対して「経済と道徳のバランスを崩すな」と警告の言葉を発したと言われています(「いま、渋沢栄一から学ぶ」より『日経』2020.3.24日付 )
彼が絶えず気にしていたのはバランスです――「文明の進歩というのは、政治、経済、軍事、商工業、学芸などがことごとく進歩して、初めて真の姿を見ることができる。そのなかのいずれか一つが欠けても、完全な発達、文明の進歩とはいえないのだ」(渋沢栄一『論語と算盤』ちくま新書.2010年/199ページ)。
学芸というのは、現代で言えば、教育、科学技術ということになると思いますが、ここに問題意識をもっていたようです――「今の教育は知識を身につけることを重視した結果、すでに小学校の時代から多くの学科を学び、さらに中学や大学に進んでますますたくさんの知識を積むようになった。ところが、精神を磨くことをなおざりにして、心の学問に力を尽くさないから、品性の面で青年たちに問題が出るようになってしまった」(渋沢栄一 前掲書.193ページ)。この書の原本は1916(大正5)年に書かれています。現代でも通じるような、内容です。
奇しくも、2021年のNHK大河ドラマは渋沢栄一が主人公だそうです。大河ドラマが始まるころは、コロナ騒ぎも一段落をして、その頃は企業として何を追究し、どうあるべきなのかといったことが問われる状況かもしれません。彼の企業理念の考え方が、生かされる時代になってきたのかもしれません。
読んで頂きありがとうございました
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