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「街づくり」に本当に必要なことは、自治体のアイデンティテイーの確立にあり/スマートシティを立ち上げれば街が発展する訳ではない

  • 2020年4月9日
  • 2020年4月10日
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(この文章は4/9日に書きました)

「スマコン路線」(スマートシティ、コンパクトシティ路線)第2弾ということで行きたいと思います。誤解している人が多いからです
女性
それにしても、何とかシテイというのが本当に流行っていますよね

 

確かに、よく新聞に載るようになりましたね。実際に、データを使って都市生活の質を高める「スマコン路線」が世界各地で広がっているからです。

 

女性
コロナシティも広がっています

 

こらこら、冗談でもそういうことは言わないの

 

女性
すいません、反省しています。横文字に日本人は弱いというのもあるんじゃあないでしょうか。

 

日本にはGAFAのような巨大プラットフォーム企業がありませんし、AIの分野でも米中に後れをとっています。そんなところが、負い目になっているのかもしれません

 

女性
ところで、基本的な部分においての街づくりの考え方は、世界共通ですか

 

 

良い質問ですね。そこの部分を確認しないまま、データ先行、技術先行で話が進んでしまっている感じを受けます

 

 

女性
それじゃあ、向こうの主張に引きずられちゃうじゃあないですか

 

2月に日本・バルセロナ スマートシティフォーラムを開催しています私の印象は、かなり引きずられているという印象です

 

女性
国の捉え方が日本と西欧では違うので、当然街づくりの考え方も違いますよね

 

 

そうですね、違います。西欧はとにかく「契約」という概念を持ち出して、住民と行政との緊張関係で物事を発想します。日本はそういう発想はしません。新聞報道を読む限り、そこの出発点を確認しないまま、話し合いをしてしまっている感じをもちます

 

 

女性
その出発点を確認していないと、何か不具合なことがあるのですか?

 

 

住民が求めるものが違っているのに、同じような街づくりを目指すという、あり得ないことが起きることになります。日本人はカネで買えないものを求めようとしますが、西欧人はカネで買えるものを求めようとします。そこが大きな違いです。昨日、このブログで紹介した東北出身の女性の方の投書を思い出してみて下さい
女性
私はあの方の心情が分かります。私は、高校生の時は名古屋まで電車で通っていました。間内(まない)という駅を降りて、自宅まで農道のような道を歩いて帰ります。すれ違う人は、殆どどこの人かが分かりました。「こんにちわ」、「お帰り」とさりげない挨拶、当時は何も思わなかったけれど、今はとても懐かしい気持ちがします

 

帰りたいですか?

 

女性
実際には、無理だと思いますが、時々帰りたいなと思うことはあります。

 

その気持ちは何だろうなということです。多分、多くの日本人の心の奥底にあるものだと思います。それを大事にした街づくりをしないと、1960年代からあちこちに作られたニュータウンのように、設備が古くなったら捨てられるような街になってしまいます

 

女性
今、多摩ニュータウンに住んでおられますよね。愛着はありますか?

 

30年くらい住んでいますが、ありません。何かあれば、引っ越しをすると思いますが、その時も何も思わないと思います。




 狭いながらも楽しかった我が家

「狭いながらも楽しい我が家」、私が子供の頃によく聞いたフレーズです。1960年代というのは、まだ日本も貧しく、家も狭いのが当たり前、テレビ、風呂はないのが当たり前といった時代です。しかし、そういう中で日本人は隣近所和気あいあいと、暮らしていたと思います。学童保育という気のきいたものはありませんでした。放課後は、ガキ大将が近所の子供たちを率いて原っぱで遊んでくれました。

丁度この対極にあるのが、現在の日本の姿ではないでしょうか。広くてきれいなリビング、電化製品は一通り揃った文化的な生活、マイカーという言葉さえ死語になりつつあるほど、当たり前の時代、着るもの食べるものに困ることはありません。

ところが、自殺者は増え、引きこもり、児童虐待が増え、不登校も増えています。なぜでしょうか。簡単に言えば、日本人が求めていることとは違うことが全国で起きているからです。そのデータが出ていても、それを分析しようとしない人たちがいます。それは何故か。思い込みが、邪魔をしてしまっているからです。場合によっては、変なプライドが邪魔をする場合があるかもしれません。

3.11東日本大震災が起こってから9年になります。帰還困難区域の中に福島県富岡町があります。2018年に復興庁などが住民であった人たちに対してアンケート調査を実施しています。富岡町への帰還について、「既に富岡町で生活している」(2.9%)、「戻りたいと考えている(将来的な希望も含む)」(11.1%)、「戻りたいが、戻ることができない」(20.2%)をあわせると、富岡町への帰還意向のある人は34.2%です。これは考えてみれば、すごい数字だと思います。

そして、富岡町に戻ることを決めた理由については、「気持ちが安らぐこと」が57.6%と最も高く、商業施設や医療施設よりもパーセンテージが上です。これもすごいと思います。街づくりを考えている人は、フォーラムを開いて外国の人の意見を聞くのではなく、こういった特異な経験をした地方の人たちの心情に寄り添って考えて欲しいと思います




 日本人が求めている街はカネの力では実現できない

 

日本・バルセロナ スマートシティフォーラムの中の意見を紹介します(「日経」2020,2.25日付)。メルボルン工科大学教授メラニー・ダボン氏「生活のしやすさ(リバビリティ)という指標がある。安全で多様な住宅が公共交通でつながり、歩行可能でインフラなどか整った雇用や教育が提供される。健やかな生活を営むことができる共同空間だ」。バルセロナ土地開発庁ディレクターのジョゼップ・ボイガス氏「人々の周りにタマネギのように、住宅への権利、近隣への権利、都市への権利があり、そして大都市への権利へと都市になる権利が多層的に取り巻く新しい政策……」。

このお二方の意見を聞けば分かると思いますが、生活者の権利や利便性が保障されるような街を考えていると思います。言い方を変えると、カネを多く使えば実現できるような街であれば、彼らは満足するということです。日本人が求めているものは、そういうことではないのです。それが分からないと、街づくりは上手くいきません

 街づくりに本当に必要なもの

日本には勘違いしている首長が多くいます。特に、東京育ちで天下り的に地方の首長になった人は、勘違いをしがちだと思っています。なぜならば、「故郷体験」がないからです。自分の人生の中で、地域において人との繋がりを体験していない方は、どうしても西洋的な街づくりの発想に流れていくと思います。

その典型的なものを紹介します。これはローカルファースト研究所の関幸子氏が富山市を紹介している文章です――「コンパクトシティを強力に推進してきた森雅志市長は、交通が便利になっても、人は『楽しい、おいしい、おしゃれ』の要素がないと街にやってこないと言う。……森市長は5年後を見据え、電気やガス、通信、交通、道路などのインフラ情報を官民で一体化し、生活の質向上に活用するスマートシティを目指す」(「コンパクトシティの先 見据えて」『毎日』2020.4.8日付)。

地方自治体を「便利屋」として捉えています。行政機関を西洋的な「契約」関係で捉えているのでしょう。西洋は「社会契約説」発祥の地なので、公私を問わず契約関係で捉えるというのが一つの常識なのかもしれません

ただ、日本は伝統的にそのようには考えてこなかったのです。だから、西洋的な「スマコン路線」を追究したとしても、人口減、ひきこもりといった地域の課題を解決することもできないでしょうし、住民に満足感を与えることもないだろうと思っています。

お金では絶対に買えないもの、それを自治体が追求すべきことの中軸に据えます。具体的には、文化行事、地方教育、イベント事業、コミュニケーション事業といったところでしょうか。そこに、その自治体のアイデンティティーが反映されているものでなければいけません。

芸能人がやるような思い付きの芸では駄目だということです。先人は、そういった「かたち」がないものに価値を見出してきたのです。それがあれば、住民は住んでいる場所を故郷として認識し始めます。そうすると、不思議なことに、故郷のために何かをしなくてはいけないと思い始めます。

首長の仕事は、自治体をそのレベルまで引き上げることです。住民から集めた税金をインフラ整備にあてることが本当の仕事ではありません。大いなる勘違いをしている方が、日本には多くいます。

読んで頂きありがとうございました




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