経団連が韓国の全経連と11月15日に首脳懇談会を開き、今後の人材交流など経済連携を強めていく方針を確認したとの新聞報道に接した。共同声明まで出している。内容は①技術革新の推進 ②第三国市場での協力 ③人材交流の推進である。
しかしながら、経団連の首脳部のノー天気振りにはあきれるしかない。韓国では例の徴用工の最高裁判決により、日本製鉄を始めすでに三社の在韓の日本企業に対して、資産売却の手続き申請が原告側から裁判所に出されている。「戦犯企業」という訳の分からない言葉まで使い始めた。このように在韓の日本企業に攻撃をかけられようとしている時に、それらには一切目もくれず、専ら韓国企業と韓国経済だけを助けることを約束してしまった。
「政経分離」という子供だましの屁理屈にだまされた格好である。そもそも輸出管理という経済問題にGSOMIAという政治問題を絡ませている。日本に対しては、「政経分離」を使いながら経済交流という名目での経済サポートを求め、自国への輸出管理に対してはGSOMIAの破棄をちらつかせながら、その撤回を求めている。得意のダブルスタンダード(二重基準)が使われている。
ところで「政経分離」ということが、現実の社会で可能なのだろうか。政治家どうし喧嘩しても、我々財界人は互いに協力しましょうということで、一見可能なように思える。 しかし、現代は福祉国家の時代、夜警国家の時代ならいざ知らず、国家が積極的に経済活動に関わることを由とする時代である。政治と経済が密接に絡み合っているので、分離することは不可能である。
実際に各国の軍事力と政治的発言力は、経済力に支えられている。近年中国が「一帯一路」の名のもとに世界制覇に乗り出したのは、GDPでアメリカについで2位になった自信に裏打ちされている。ついでに言うと、そのような巨大な中国の誕生をアシストしたのが日本である。
1973年に日中友好条約が締結されると、日本企業は安価な労働力を求めて中国に進出した。鄧小平の柔軟で優れた指導力もあり、資本主義的共産主義国として一大発展を遂げる。その礎に貢献したのが日本企業である。
現在は巨大化した中国に呑み込まれるかもしれない、というところまできている。大局観のない財界人の近視眼的な行動が、回りまわって日本に厄災をもたらした好例である。 「政経分離」が誤ったスローガンであることがこれでお分かりであろう。その愚を韓国相手に再び繰り返すことがないことを願っている。