「100年後に『アフターコロナ』という言葉が、歴史の教科書に載るのではないかと思う位、コロナ禍を境にして政治も経済も流れが変わってきています」
「そういう意味で、コロナの発生源が中国の武漢であったことが象徴的だったと思います」
「中国は、それを認めていませんよ」
「だけどそういったことは、いずれ解明されるでしょうね」
「いずれ科学的に証明される時が来ると思います」
「コロナに象徴されるように中国に振り回された1年だったと思います」
「いい意味でも悪い意味でも中国を軸に世界の政治や経済、さらには防衛問題が動いています」
「今後は、どうなっていくのですか?」
「それがどう展開するか、なかなか予想がつきにくいのです。まだ、アメリカはトランプ政権ですからね、それもあります」
「バイデン政権が動き始めれば、少しは分かるようになるでしょうか?」
「ただ、気を付けなければいけないのは、政治の流れを見ながら経済の流れも見なければいけないということです」
「両方を見なければいけないということですね」
「そうですね、そうすると社会を立体的に見ることができます」
「両方ということはわかりましたが、今は、どちらを重点的に見るべきなのですか?」
「トランプ政権からバイデン政権への移行期で、しかもコロナ禍という状況なので、政治的に大きな動きは起きにくいと思っています。中国も様子を見るという感じになると思います。経済の流れが比較的分かりやすいし、早まっていますので経済動向を注意して欲しいと思います」
「ここからが本論です ↓」
「資本主義の常識がほころびてきた」(『日経』)
コロナという目に見えないウイルスが、人間社会に多くの影響を与えています。感染源も含めて、将来において語り草になるのではないかと思っています。
経済面では、「別の流れ」が急速に来ています。そのことを『日経』は2020年1月1日の1面の冒頭に「さびつく成長の公式」と題して「資本主義の常識がほころびてきた」と報じたのです。そこで言う「資本主義の常識」とは、何か。
簡単に言えば、資本金を元手にして工場を建て、機械を導入して、労働力を使って生産活動をするのが資本主義社会の一つの典型的なパターンであり、イメージではないかと思います。そして、そのような工業社会を金融機関が全面的にバックアップして成長を下支えする、作られた製品は消費者に受け入れられ、日本はもちろん世界市場を席巻して、日本企業は我が世の春を謳歌したのです。その成功体験がいまだに忘れられず、それを継続していくことこそ大事であり、そこに永続した繁栄があると思い込んでしまったのかもしれません。
『日経』(2020.12.21日付)に上級論説委員の西條都夫氏の「市場が映す企業の浮沈」と題する論文が掲載されました。その論文の全体の趣旨は、経済界の新旧プレイヤーの交代が確実に進んでいるというものです。
そのエビデンスとしていくつか事例を紹介していますが、西條氏が強くそれを感じたこととして「米エクソンモービルが今年の8月末に米国を代表する株価指数、ダウ工業株30種平均の構成銘柄から外れたこと」(西條都夫 同上)を上げています。「2010年ごろまで株式時価総額で世界首位の座を争ったそんなお化け企業がダウ平均から外れたのは『石油の世紀』といわれた20世紀がいつの間にか遠い過去に退いた証しだろう」(西條都夫 同上)と言います。
20世紀の後半には、オイルマネー、オイルショックという言葉が作られました。世界経済に産油国の動向が大きな影響を与えたことを示しています。モノづくりには当然エネルギーが必要です。そのエネルギーの主流をなした原油の元売り大手がダウ平均の採用銘柄から外れたことは、もう原油の時代ではないと言っているようなものです。
このままでは、日本の「老舗企業」の将来性は明るくない
西條氏は興味深いデータを載せてくれています。経団連の正副会長を輩出した企業が現在どうなっているかというデータです。株価資産倍率(PBR)という指数があります。株価の時価総額を企業の自己資本で割った値のことです。その数字が1.0を割るということは企業がもっている資本(資産)よりも株価の時価総額が低いということになるのですか、その意味するところは、その企業の将来性がないと国際社会は判断しているということなのです。
「日本企業はもともとこのPBRが低いが、経団連銘柄はさらに低く、19社平均のPBRは0.75倍。」(西條都夫 同上)だそうです。その他、経団連銘柄の数字が紹介されていますが、日本製鉄が0.5、第一生命HD0.4、みずほHD0.4という具合です。テスラと何かと比較されているトヨタは1.1です。
なぜ、このように数字が悪いのか。西條氏は「日本の産業社会の新陳代謝の不足」を指摘しています。
無形資産が多い企業の成長が加速している
今の時代、経済のトレンドが激しく変化しようとしています。その変化に合わせて、企業の組織や雇用の在り方、昇進のシステムを変える必要があります。企業というのは、常に時代が求めるものを先取りして新たな製品やサービスを市場に投入しつづけなければいけません。かつての時代であれば、一つのヒット製品が生まれれば、それを20年、30年同じものを作り続けても良かったかもしれません。もう、そういった時代ではないのです。企業は、新製品や新たなサービスを量産する態勢を作り上げなければいけないのです。それができなくなったら、それは市場から退場するしかないのです。
政治の世界は、元何々という肩書で政治活動をすることも可能です。その人の政治的影響力があると誰かに判断されている限りは、大丈夫なのかもしれません。
その点、経済活動の分野は厳しいものがあるかもしれません。水面下では、し烈な生存競争が行われています。ここ日本で、1年間で倒産する企業の数は、大体1万社です。そして、年間の起業件数は約5万社です。髪の毛と同じです。抜ける毛もあれば、生えてくる毛もあり、全体として髪の毛が増えれば問題はないのです。
抜け毛の原因について、1本1本に理由が明らかになっている訳ではありません。しかし、企業の倒産の場合は、必ず理由があるはずです。
多くの場合は、トレンドを読み間違えての破綻が多いと思われます。大きな流れがどちらに向いて動いているか、最低限そのことだけでも掴まないといけないでしょう。その点で言えば、「経済のデジタル化で富の源泉は知識や情報、データに移った。米アップルなど世界の大手10社のデジタル事業の市場の評価額は約6兆ドルと、すべての日本企業の有形固定資産を2割上回る」(「さびつく成長の公式」『日経』2020.1.1日付)と言います。
そして実際に、無形資産が多い企業の成長が加速しています。それが、トレンドなので、企業は無形資産を増やしてくれそうな人材を雇うか育てる必要があります。どのような人材が無形資産を増やしてくれるか、そういった能力をどのように評価し、開発していくのか、研究しなければいけないことは多いと思われます。
毎朝定時に出社して、上司や同僚と打ち合わせをして仕事につく。会社で勤務時間まで働いてその後帰宅するといったことを繰り返してきた。給与は、働いた分というより。会社があらかじめ定めた給与表によって賃金が支払われる。そのような勤務について何の問題意識も持っていなかったかもしれませんが、コロナ禍を一つのきっかけとして、そういった企業戦士の日常も少しずつ変わっていく兆しが見え始めています。
世界から絶賛された日本型雇用システムは、大量生産を前提とした工業社会では通用したものの、無形資産が完全にトレンドとなった現在経済では却って足かせになります。新たな雇用システムを早急に構築することが各企業に求められているのです。
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