「副業時代と言われています。副業に興味を持っていますか」
「だって、ウチの会社は副業を認めていないのです」
「そこをまず突破する必要がありますね」
「突破しても、私はアルバイトをするつもりはありません」
「アルバイトか。コンビニのアルバイトのような感覚で副業を考えていますか?」
「ええ、そんな感じで思っていました」
「少しその辺りの認識を変えてもらう必要がありますね」
「副業や兼業を認め始めている企業が増えているという話は知っています」
「そうなんです、あなたも知っているような大手の企業が、副業や兼業を認めるようになってきています」
「それはどうしてですか?」
「それを一口で言うのは難しいですね。各企業の状況が違うからです。ただ、今回のコロナ禍を境にして、認めるという動きが加速していることは確かです」
「安全弁という捉え方なんでしょうか?」
「企業、従業員、両者にとっての安全弁ということでしょうか。まあ、そういう面はあるでしょうね。コロナ禍で企業側に絶対的に雇用を確保できるという自信の揺らぎが出たということもあると思います」
「前にニュースでJALのCA(キャビンアテンダント/客室乗務員)を地方の観光振興業務にあてるというのがありましたよね」
「昨年の夏ころの話でしょ。副業というより、配置転換ですね」
「だけど配置転換で新たなスキルを身に付けて、副業に結びつくこともあるでしょうね」
「あなたのその逞しい考え方がこれからは大事かもしれませんね」
「ここからが本論です ↓」
副業を認める会社が増えている
副業を認める会社が増えています。一昔前であれば、とんでもない話ということで会社から一蹴されたのでしょうが、終身雇用制が崩れ、ジョブ雇用が広がるに連れ、スキルアップにもつながるので、前向きに許諾する会社が増えています。
「一人ひとりのなかに眠る能力や意欲を新たな就労で呼び起こす。そのために組織と人との結びつきをどう工夫するかは人口が減る日本の大テーマであり続ける。兼業や副業の位置づけのように、きっかけがあればがらりと変わるものもある」(上杉素直「地元で輝け元バンカー」『日経』2020.12.31日付)と言います。
そして、中には副業したい人それぞれのもっているスキルや資格を登録してもらい、副業を紹介しているサイトや企業もあるのです。
どのようなスキルで登録しているのかと、登録会社ビザスクのホームページにアクセスしてみました。例えば、「農業生産法人の設立、運営について」、「ITベンチャーの知的管理戦略について」、「企業の人事制度、労務管理について」、「ヘルスケア分野での医療側のニーズについて」、「小売りチェーンでの海外進出について」などです。
完全なプロパーでなくても良いのです。人より半歩まえに行っていて、中にはそのスキルを欲しがるユーザーもいます。この「ビザスクに登録する専門家は約3年で倍増し、今や10万人を突破した」(上杉素直 前掲論文)とのことです。
働き方や生き方が多様化している中で、副業は収入源を複数化して生活を安定させるという側面もありますが、そういった消極的な理由ではなく、これからの時代は積極的に隙間時間を世のため、人のため、自分のために活用する時代ということでしょう。
まず、副業によって新たな人との出会いが期待されます。新たな人的なネットワークを築くこともできます。善き出会いがあなたの人生を全く違った方向に導くかもしれません。</stron
副業から起業、副業から転職
21世紀は起業の数をいかに伸ばすかが経済活性化のカギを握ります。古い体質の企業は倒産して市場から撤退します。経済は生き物なので、これはやむを得ない現象です。丁度、古い髪の毛が抜けて、新しい髪の毛が生えてくるようなものです。倒産した起業の数以上に、若い企業が立ち上がってくれば、経済は発展することができます。
データを見ると、日本人は起業に慎重だということが分かります。
日本 | 米国 | 中国 | |
3年以内に事業を始める計画あり | 8% | 18% | 17% |
新事業に必要な知識や能力がある | 10% | 55% | 25% |
失敗を恐れ起業をためらう | 45% | 39% | 39% |
(村山恵一「ロングテール起業の強さ」『日経』2020.12.5日付)
※対象にしたのは、各国の成人で、2018年に調査したとのこと
日本の起業家の1/3は60代以上
アメリカCBインサイツによると、世界のユニコーン企業は500社に達したそうです。ユニコーン企業というのは、「創業から10年以内で、企業価値評価額が高い未上場のスタートアップ系ベンチャー企業」(『日経ビジネス』2020.5.25)のことで、ギリシャ神話に登場する一角獣の名前を使い「ユニコーン企業」と呼んでいるそうです。米国と中国だけで全体の約8割を占めるものの、シンガポール、インドネシア、インドなどでも次々に誕生していて、日本はわずかに4社とのことです。
日本人の性格からすると、いきなり起業という人は確かに少ないだろうと思われます。これは農耕民族の「血」が冒険をさせないように作用するのだと思います。起業家を増やすためには、それに見合ったシステムなり「動線」を作る必要があるのです。特に若い起業家の育成が重要とのことです。
北海道のある企業はIT教育を手掛ける東京のデジタルハリウッドと組み、起業家を養成するスクールの運営を始めたとのこと。学生スタートアップを支援する企業もあります。そういった環境が整備される中で、日本からも多くの起業家が巣立っていくと思います。また、副業を実際に体験する中で、それが何かのアイディアを生み、起業につながるかもしれません
シリコンバレーの起業家の平均年齢が30代とされる一方で、日本で起業する人の3分の1は60代以上です。日本の若手は特に安定志向で、名がある大企業に就職したがると言います。未開の領域に積極的に挑戦しようとする気風を養うことが学校教育に求められているのかもしれません。
【ユニコーン企業の世界分布図】
読んでいただき、ありがとうございました。