「昨日、高校2年生の従妹さんの進路の話をしましたよね」
「ええ、昨日のアドバイスを含めて、本人にメールしました。どうぞよろしく、と言っていました」
「それでね、あの後いろいろ思うことがあって、文系と言っていたので話をしなかったのですが、これからの時代を考えると情報関係の学部はどうかなと思ってね」
「それは何か理由があるのですか?」
「21世紀はデータの時代ですからね。将来、どの職種に行ったとしても、必要な技能だと思うからです」
「学部としては、どういう学部になるのですか?」
「若い学問なので、大学によって様々な名称をつけているのが現状ですが、例えば「情報学部」、「情報環境学部」、「デジタル情報学部」、「データサイエンス学部」などです。これは学科ですが、「デジタルゲーム学科」というユニークなものもあります」
「ただ、それらは理系学部ですよね」
「数ⅡBまで履修していると言っていたので、大丈夫かなと思って紹介しているのです。まだ新しい学部なので、偏差値的にも高くないので、少し数学を余分に勉強すれば大丈夫だと思います」
「数学は余り得意でないようなことを言っていたように思います」
「であれば、経済学部や経営学部の中で情報学科を設けている大学もありますので、そちらを勧めてみて下さい」
「随分、情報にこだわりますね」
「男性と対等の立場で社会の中で活躍したいという話を聞いていますので、彼女の今の高校での単位取得を見れば、お勧めかなと思っています」
「就職関係は大丈夫ということですね」
「大丈夫どころか、今は人が足りなくて困っているところです。そして、彼女が就職する頃はジョブ型雇用の時代になっていると思いますので、実力次第では新卒で年収1千万ということもあると思います」
「えっ、本当ですか?」
「NECは優秀な社員であれば、新入社員でも1000万円以上を支払う制度を2019年10月から導入しています」
「性別は関係ないですよね」
「もちろん関係ありません。キャリアウーマンで人生を勝負したいという方がいても良いと思います。あと、そういう方は余り文系とか理系とかこだわらず、高校時代は何でも勉強するつもりでいた方が良いと思います。これからの時代は、めまぐるしく変化すると思うからです」
「ここからが本論です ↓」
AI・IT人材が不足の日本
AIやITに関連する人材の供給が追いついていません。各大学で情報関係の学部を大慌てで新設して、人材の育成を始めたばかりというのが、日本の状況です。
21世紀はデータが「経済の米」となります。ちなみに、20世紀の「経済の米」は原油でした。ただ、そんなことは少なくとも10年前に分かっていたことです。分かっていながら、その意味が分からないアナログ世代が政治、経済の各方面でリーダーシップをとっていたため、世界から乗り遅れてしまったのです。
(出典:「朝日新聞デジタル」)
ついでに言いますと、本来は時代を先取りした提言をするのが日本学術会議の使命なのです。調べてみると2011年8月29日に日本学術会議法学委員会の「IT社会と法」分科会が提言を出しています。
それを読むと、IT社会における個人情報の保護というものに問題意識はあるのですが、そこで終わっています。そして、「喫緊の課題としては、東日本大震災からの復興という要請に、『最適IT社会』がどのように応えるべきか、という点を挙げることができる」とあり、人材育成については何も触れていません。
この時すでにアメリカではネットプラットフォーム事業が立ち上げられています。視点として、殆どピンボケだったということが分かると思います。
大所高所からの提言を期待されている日本学術会議としては、来るべきIT社会に向けて日本として人材育成も含めて、どのような戦略で臨めば良いのかということを提言すべきなのですが、それ以前も、それ以降もありません。ただ、反日的な組織であり続ける限りは、ロクな提言は出せないと思っています。何故なのか、普通に考えれば分かると思いますが、例えば会社の首脳部に反発をしているグループが会社が発展するような前向きの提言を出せるはずがありません。成員の能力の問題ではなく,依って立つ立場の問題なのです。
政府の試算によりますと、AIを研究して修士課程を修了する者は、全国で2800人とのこと。全く不足しています。これも政府の試算ですが、先端のIT人材が5万人不足していると言っています。「日本企業の国際競争力を高めるため、産官学で専門人材を育成・供給する仕組み作りが求められている」(「理工系採用未達深刻に」『日経』2019.3.23日付)のです。
AI・IT人材は国際的にも不足気味
実は、今の状況は日本だけではありません。世界には多くの国がありますが、正確に言えば米中、ヨーロッパの国々です。特に、米中間で技術覇権をめぐって激しく争っていますので、それが人材争奪合戦を生んでいるのです。
その方面の高度な知識や技術をもった人材は、世界全体で数百万人単位で不足していると言います。需要があり、供給がなければ当然市場価格は上がります。AI・ITの専門家に対する報酬が上がるメカニズムはそこにあるのです。
【高いレベルのAI人材の分布調査】
アメリカ | 46.0% | 中国 | 11.0% | イギリス | 6.5% |
ドイツ | 4.1% | カナダ | 3.6% | 日本 | 3.5% |
(カナダ「エレメントAI」/『朝日』2019.11.30日付)
そして、1位、2位のアメリカ、中国でもIT人材が不足している状態です。そのため、必然的に報酬が跳ね上がり、人材獲得競争が始まっています。中国はAI大国に向けての計画をスタートさせています。「人材確保のため、中国教育省は18年、5年かけて500人の教師と5000人の学生を養成する計画を始動」(『朝日』2019.11.30日付)しています。
【AI人材の年収、日米中の比較】
プログラムディレクター | CIO(最高情報責任者) | |
アメリカ | 1630~2180万円 | 2180~3820万円 |
中国 | 850~1650万円 | 2330~4660万円 |
日本 | 1200~1600万円 | 1700~2500万円 |
(「AI・5G…技術覇権へ人材争奪戦」『朝日』2019.11.30日付より)
人材争奪合戦の予兆あり
日本のプロ野球である程度の実績を上げると、大リーガーでプレィをします。それと同じようなことがAI・IT業界で起きる可能性があるということです。野球の世界は、ある程度人数が決められていますし、選手で活躍できる年齢が短いので、一種の武者修行と思って日本人の多くは祝福して送り出していますが、それとは比べ物にならない引き抜きが起きる可能性が出てきます。ある者はアメリカへ、ある者は中国へ、ある者はヨーロッパと、日本の頭脳が流出して日本に誰もいなくなってしまうことにもなりかねません。
日本という国に対して、大して未練がなければ、戻ってくることはありません。そうならないためには、どうするか。そんなことも考えなければいけない時代なのです。
しつこく言いますが、こういったことも本来は学術会議が考えることなのです。
多分、考えることはできないと思います。理由は、本文中に書いた通りです。
読んでいただき、ありがとうございました。
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