
「『2026年問題』ということが言われています。何のことか分かりますか?」

「来年ですよね。何でしょうか?」

「2026年を境に大学進学者が減少に転じます。境目の年ということです。大学淘汰の時代に突入するのです」

「女子大学が共学になったり、募集停止をしたりするところが今でもありますけど……」

「それが一層大きくなるということです。大学ジャーナリストの石渡嶺司氏によると、4年制大学については今後の10年間で少なくとも50校、場合によっては100校なくなると言っています」

「ちょうどその時期にウチの子は大学生ですね。ただ、大学にいくかどうかは本人次第ですけどね」

「親としての腹積もりは必要だとは思いますけど……」

「大学に行くことが当たり前のような雰囲気がありますけど、特に私は余りこだわっていません」

「その位の「構え」の方が良いと思います。「教育虐待」という言葉も生み出され、何が何でも大学と叫ぶ親御さんもいるみたいですからね」

「そういう時代ではないと思いますけどね……。ここからが本論です ↓表紙は「スペースシップアース」提供です」
大学全入時代となって考えるべきこと
文科省によりますと、2024年度の進学率は統計史上最高の62.3%を記録したそうです。今年度以降もこの上昇傾向は続くようです。そのように大学進学率は伸びるのですが、18歳人口が減少し続けますので、大学進学者は2026年度を境に減少していくだろうと言われています。大学人が考えなければいけないことは、「大学淘汰時代」を勝ち抜く戦略です。そして、受験生あるいは保護者が考えるべきことは、これからのAI共生時代における時代状況をどのように読むかです。ということで、今回は後者について書きたいと思います。
大学進学者が村に一人いるかいないかというのは戦前のことですが、戦後は時代とともに進学率が高まり、ついに60%を超えてしまいました。近年は大学全入時代という言葉も生まれ、猫も杓子(しゃくし)も大学を目指すようになったのですが、付和雷同的に行動しているだけのように見えます。何か自分なりの目標・目的があり、それを極めたいために大学に行くと決意している人は1~2割程度ではないかと思われます。
何となく大学を目指し、その後何となく就職してという、ぼんやりとした人生設計しか考えていない人は、これからは弾き飛ばされるかもしれません。自分の適性を見極めた上での進学を考えなければいけない時代になってきたと思います。

(「読売新聞オンライン」)
AI普及によって人手が余る時代
近年の日本は構造的な人手不足になっており、新卒採用は完全な「売り手市場」になっています。そのため、何となく大学に行って何となく単位を取って卒業したという人でも、就活をそれなりに頑張れば、それなりの企業に就職できるのではないかと思います。
ところがアメリカでは各企業がAIを導入し始めたため、新卒採用が大変厳しい状況になりつつあります。ニューヨーク連合銀行によると、2025年1~3月の22~27歳の大卒失業率の割合は5.8%とのことです。全米、つまりすべての年齢層を含んだ失業率は4.1%でしたので、それよりも多いという逆転現象が発生しました。この状況はまだ始まったばかりですが、今後はさらに拡大していくだろうと言われていますし、この流れは日本にすでに来ていると言われています。余り大きな話題にならないだけで、深く静かに新卒の入り口は狭まり始めています。
AIの代替が著しく進んでいる分野は、IT企業の分野です。コンピューターのプログラミング分野で生成AIの活用が広がっていて、アマゾンやマイクロソフトといった業績が好調な大手企業で人員削減が進んでいます。AIがホワイトカラーの仕事を奪っている動きが現れています。アメリカでは名門大の卒業生ですら就職難に直面しているケースも出始めていると言います。明日は我が身なので、その「変化」を念頭に置いて、進路を考えるということでしょう。

(「SHIFT AI」)
AIとの共生時代に「高専」進学は良き選択
AIとの共生時代、何を考えれば良いでしょうか。AIに使われるのではなく、AIを使いこなせるような分野で勝負をするということです。文化、芸術の世界でも、AIを上手く使いこなせば、よりレベルの高い作品を生み出すことができると思います。著作権との絡みがありますが、作者がイニシァティブをとっていれば、問題ないというのが現時点での判断であり、解釈です。
AIを使いこなせるような分野として思いつくのは、テクノロジーの分野です。そんなことから高等専門学校(以下「高専」)が注目を浴びています。テレビでロボットコンテストの模様が放送されるようになって一般的にも知られるようになりましたが、高専は全国に58(国立51、公立3、私立4)校あります。もともとの出発は1962年です。日本の製造業の中核的人材を育成する目的でスタートしました。そのように生まれた高専ですが、多くの優秀な人材を輩出して、今や「KOSEN」は海外で通用するそう言葉だそうです。日本の協力を得てモンゴル、タイ、ベトナム、さらには9月にエジプトで「KOSEN」が開校したそうです。国内でも、山梨県、滋賀県、福岡市、川崎市が開校に向けて準備を始めています。
中学を卒業して5年間、理系の基礎的な勉強と技術を学び、そのまま就職するルートもあります。上級学校への道は、専攻科(2年)から他大学の大学院へのルートと他大学の3年次への編入のルートがあります。高専の魅力は、何と言っても多くのイベントが用意されていることです。下に一覧表にしましたが、殆んどすべてが仲間と共同して何か一つの結果を導き出す作業です。新しい技術を生み出すためには、なるべく多くの人と共同できる体制を組むことが大事です。それを若き時代に体験する機会が多く用意されています。変に、普通課程の高校3年間通い、何となく大学進学することを思っているならば、このような選択肢があることも考えて欲しいと思います。
【高専のイベント】
| 春 | DCON | 「ディブラーニング」を活用した作品の事業性を企業が評価した金額の高さで競う |
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夏 |
WiCON | ワイヤレスの特性を生かした地域課題の解決につながる技術実証提案を競う |
| プロコン | プログラミングを生かして情報処理技術における優れたアイデアと実現力を競う | |
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秋 |
デザコン | 生活環境関連のデザインや想像力、実践力を設計に生かす |
| ロボコン | 課題を解決するために自分たちが作ったロボットが | |
| 高専インカレチャレンジ | イノベーター人材を創出するエコシステム構築を目指して技術を競う | |
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冬 |
GCON | 女子高専生を中心にしたチームが社会課題解決のための技術開発を提案する大会 |
| 高専防災減災コンテスト | 防災減災に関わる地域の社会課題を解決するアイデアとその検証過程を競う |
【参考記事:「高専生 駆けよ 世界へ」『日経』第二部 2025.11.26日付】
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