「昨日のブログで紹介しておられた、「週刊新潮」に掲載された元統合幕僚長の論文を読ませて頂きました」
「どうでしたか?」
「久しぶりに長い文章を読んだので、頭が疲れて、昨日はよく眠れました」
「あのね、そういうことではなくて、中身についてのコメントをお願いします」
「ずうっと読んで、最後の言葉にドッキリして、成る程と思って寝ました」
「あなたがドッキリした言葉を紹介して下さいよ」
「「脅威は6年以内」という言葉がショックでした。そして、最後の言葉ですね。我々は台湾有事が『いずれ起きるかもしれない危機』ではなく、『目前に迫った危機』であることを自覚し、決意をもって来るべき日に備えなければならない、とおっしゃっています。ただ、私の感覚は、夢の世界のことを言われているような感じです」
「日本人は、楽天主義者が多いですからね。それは、ある意味ご先祖から受け継いだDNAのなせる業だと思います」
「まだ、大丈夫という楽観的な心情ですか? それはやはり民族の特性ということで説明ができるものなんですか?」
「農耕民族は、じたばたしても最後は天に任せるしかないと考えます。それが農耕民族のDNAです。作物が実るかどうか、もちろん人の力も大事ですが、天が味方しなければ何も獲れません。その点、大陸の狩猟民族は、獲物が獲れるかどうか、さらに多いか少ないかはすべて自分の腕次第というふうに考えます」
「だから「天の神様の言う通り」と言って遊んだのですね。農耕民族はゆったり、のっそりですが、あちら様はじたばたしないとダメと考えるのですね」
「とにかく、余り時間がないので、万が一を考えて国内で法整備、防衛整備をする必要があります」
「一番大事なのは、憲法論議だと思いますけど……」
「9条の考えでは南シナ海、東シナ海の安全を守ることは出来ません。台湾の次は、沖縄、日本が狙われます。そういうラインが見え始めたので、議論をして時代に合った条文に直す必要があると思います」
「ここからが本論です ↓」
独裁者は必ず暴走する
北朝鮮もそうですが、中国の独裁色がここに来て一段階進んでいます。世界の歴史を紐解けば分かるように、古今東西独裁者は国内統治をある程度完成した後、目を外に向けがちです。特に国内の統治に綻(ほころ)びが生じ始めると、その矛盾を覆い隠すように、対外的な威圧行為、もしくは武力行為に向かうという傾向があります。
つまり、統治、綻び・破綻、暴走という段階を踏みます。なぜ、そのような経路を辿るのかということですが、権力を掌握するまでのサクセスストーリーが必ずありますが、それは一人の力では出来ません。必ず、その当人を頂点に押し上げた周りの力があるはずです。
そのまま、無重力軌道に乗って、権威と権力の上に胡坐(あぐら)をかいていれば良いのにと思うのですが、市場経済の「波打ち現象」の影響を必ずどこかで受けます。政治体制は権力を掌握すれば、それでほぼ終わりなのですが、市場経済は権力者といえども完全にコントロールすることは出来ません。もっとも、日本の近くの独裁国家は、その無駄な努力を重ねているようですが……。
完全にコントロールできないということは、不況の時が必ず訪れるということです。それが一つのきっかけとなります。日本の戦前の軍事独裁政権も世界恐慌(1929年)の国内への影響が一つのきっかけになっています。民衆の中から統治に対する不満、権力者は自分の力の不完全さに不満を持つようになります。そして、その解消先を対外的な攻撃に向け始めます。戦争に勝てば、3つの良いことが転がっているからです。領土を手に入れ、自身の名誉を回復でき、民衆の不満をそらすことができます。そして、何よりも英雄伝説という輝かしいシルクロードの道を歩むことが出来ると考えるのです。
(「アマゾン」)
独裁国家を見る視点は2つ――国内経済と軍事力
軍事評論家は軍事予算や軍備状況からしか見ていませんが、国内経済の状況を併せて見る必要があります。その理由は、今書いた通りです。それによって、侵攻の危険度が分かるからです。そう考えると、北朝鮮は国内経済がかなり疲弊しているようなので、いつ暴発してもおかしくないレベルだと思います。
中国経済は、前ほどの勢いがなくなった、少し翳りが見え始めたという程度です。日本総合研究所が「中国経済展望」を2021年10月28日に発表しました。それによると「景気は下振れ圧力を抱えながらも底入れ」という言葉で全体評価しています。「電力不足や不動産市場における調整の影 響を踏まえ、2021年の実質成長率は+8.0% と従来予測より0.4%ポイント引き下げ。22 年は潜在成長率並みの+5.4%と予測」とあり、経済活動はペースダウンしたものの比較的堅調に推移するという見通しを立てています。見る指標は経済成長率だけではダメです。経済成長率というのは数字の上では下がっていくのが当たり前だからです。分母が大きくなるからです。緩やかな下落なら問題ありません。それと、一人当たりのGDPの数字を見ます。
(中国の実質成長率「ニッセイ基礎研究所」)
恒大産業の債務超過問題が話題となっている不動産関係ですが、「不動産への警戒感が強まるものの、価格急落リスクは小」と分析しています。そして「上海総合指数は上昇。今後、金融財政政 策への期待などから、株価は緩やかな上昇 を続ける見通し」と言っています。
来年には冬季オリンピックがあります。彼らは国威発揚の大事な機会であり、世界の協力も必要ですので、攻撃的な言葉を多少トーンダウンしてくるのではないかと思っています。ウイグル人権問題に絡めてボイコットという動きもあります。気持ちは分からないでもありませんが、生産的なやり方ではありません。協力すべき時は協力する、スポーツと政治を絡めないということだと思います。
(「WEDGE infinity(ウエッジ)」)
軍事侵攻に向けて着々と用意をしている
経済状況を横目で見ながら、軍事分析をするということですが、こちらの方はアップテンポで軍備増強が進んでいます。昨日(10/28)のネットワークニュースの情報によると、習近平主席が軍の会議で最先端兵器の開発を指示したということです。習近平主席は、つい先日開かれた中国軍の会議で、これまでの5年間を「武器装備の飛躍的な発展を実現し、軍事力の向上をもたらした」と総括した上で、これからの5年間について「武器装備の近代的管理システムの構築を急ぎ、新局面を切り開く」と、最先端兵器の開発を指示したとのことです。
なお、それに絡んで、米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は27日の米テレビで、中国が今夏に核搭載可能な極超音速(ハイパーソニック)兵器の実験を行ったとの事実関係を米当局者として初めて認めました。イギリスが約1週間前に発表した情報を追認したかたちです。極超音速兵器の開発については、軍事機密なので中国はその実験結果について公表していませんでした。
極超音速ということですが、音速の5倍以上のスピードだそうです。そのミサイルが宇宙空間から降ってくるので、殆ど迎撃が不可能というものです。アメリカの防衛当局者は1957年に旧ソ連が人工衛星を人類史上初めて打ち上げた「スプートニク・ショック」を例に出し、「極めてそれに近いと思う」と語りました。
中国の強気な態度には、そういった軍事力の裏打ちがあるのです。
(「産経ニュース」)
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