「昨日のヤオハン・ホールディングスのことですが、しきりに、どうしてホールディングスにしちゃったのかなあ、と呟いていていましたよね。その意味を教えてもらえませんか?」
「ホールディングスというのは、持株会社のことです。株式所有を通して、関連会社を子会社として統治するシステムです。株式会社は株主総会が最高議決機関だということは知っていますよね」
「ええ、その位は。一株一票なので、過半数の株式を買い占めれば、その会社の経営権を握ることができるわけですよね。それだけ巨額の資金を集める自信があったので、ホールディングスにしたということですよね。そこに何か問題があるのですか?」
「ヤオハン・ホールディングスについては、2つ問題があると思います。1つは、ホールディングスにするということは、例え話をするとJリーグの1部に参戦してくるようなものなんです。弱肉強食の経済競争の中に身を置くという意味なんです」
「ある程度の資本力が必要ということですね。それが不安であり問題だということをどのように判断したのですか?」
「1982年に名古屋証券取引所の第二部上場ですよね。これはサッカーで言うと地方リーグの2部リーグの参戦が認められたというレベルです」
「ただ、1988年にはヤオハン香港、これは子会社だと思いますが、香港証券取引所に上場しています」
「翌年には、ヤオハン・インターナショナル・ホールディングスを設立していますからね」
「さっきの例え話だと、世界リーグに参戦したことになりますよね」
「経済界は弱肉強食ですから、態勢が整っていない、つまり実力不充分なのに変に参入すれば標的になるだけですし、実際にそういう感じだと思います」
「倒産とありましたが、ヤオハンが築いた資産はどのように処理されたのですか?」
「債務超過となり債権者の多くが債権回収を主張したのでしょう。後は管財が入って財産整理がなされたと思います。ただ、インターナショナル・ホールディングスを設立するような会社に対して、債務超過だからといって債権者が申し立てをすることはないと思います」
「だけど、申し立てをして倒産が決まり、資産が分割されたということですね」
「そうですね、本体のヤオハンは倒産となり、他の債権者はヤオハンが長年かかって築いた資産を手に入れたということです」
「生兵法ケガの元を地でいくような話ですね」
「一つの教訓とするためにも、関係者は事情を話して欲しいと思っています」
「ここからが本論です」
『朝日』が日本企業に向けて「甘言シンポジウム」
ヤオハンが倒産となり、その資産が切り刻まれている頃、朝日新聞主催の「日本経済再生の戦略を考える~中国パワーを視野に」というシンポジウムが東京・有楽町で開かれていました。今から約20年前のことです。まず、表題から「?」がつくような書き方となっています。
日本経済再生の戦略は、人材育成、教育政策、科学技術開発の3方面から総括し、戦略を立て方針を策定すれば済む話です。他国は日本の経済の発展など関心もありません。自分の国のことで精一杯だからです。自分の国の経済再生は他力本願ではなく、自分の力で考えることです。「中国パワーに対抗して」ならまだ分かるのですが、「中国パワーを視野に」は意味不明です。
朝日新聞社総合研究センター所長の野村彰男氏のあいさつで始まります。「果たして、中国は脅威なのでしょうか。先ごろ2002年版の通商白書が発表され、その中で、そんなゼロサムの発想では、東アジアの経済発展は望めないという指摘がなされていました。中国は脅威であるとして警戒するのではなく、この東アジアの目ざましい経済発展地域と地理的に近いという利点を生かして、一体となって経済発展を目指すべきだという発想に切りかえるべきだと、そのような指摘がなされていました」「隣国の躍進にたじろぐのではなくて、お互いに強みを生かして、「ウィン・ウィン」関係をいかに築いていくか、そういう発想が大事だろうと思います」。
この時点で日本はGDPが世界第二位、中国が第三位でした。しかも、日本はODAで中国を援助していたのです。さらにその上で、如何に日本から資本を呼び込むか、それに腐心をしていたのです。日本企業の中には、無警戒で進出していった企業も多くあると思います。何のことはない。そのことが中国を経済大国にのし上げ、今度はその軍事力によって日本が脅威にさらされています。
(「日本経済新聞」)
人権意識がある国と付き合う――この間の歴史で学んだ教訓
このシンポジウムは、基本的には中国との経済提携を進める雰囲気づくりといった役割があったと思われます。8人のパネリストは全員諸手を挙げて、媚中的発言を繰り返しています。内容については、各自インターネットで確認して欲しいと思いますが、パネリストの1人の中国の大手ソフト企業集団NEUSOFT総裁の劉積仁氏の発言を紹介します――「日本の多くの議論の中で、中国から大きなプレッシャーが来ていると言っていますけれども、これは中国からではなくて、グローバル化という中から来ていると思います。アメリカもヨーロッパも中国に行って、低いコストの労働力を目指して来ているのですが、もし日本人が行かなければ、そのような資源は欧米に使われてしまいます。……オオカミが羊の群れに入って来るほうがいいのか、それとも羊がオオカミの群れに入っていったほうがいいのかと、いろいろな説がありますけれども、日本の企業が中国に行くということは、積極的に行くべきだと思います。中国は非常にチャンスのある大きな市場、マーケットであります」
とにかく、このシンポジウムは甘い誘い話満載です。これを聞いた企業人の中には、中国に現地法人でもつくって、ウィン・ウィンでやってみようかと思う人がきっといたことでしょう。半官半民の日中投資促進機構という経済団体も存在します。中国に呼び寄せてしまえば、こっちのものという考えがあるのでしょう。彼らはウィン・ウィンと言葉では言うかもしれませんが、腹の中で舌を出しています。そこをよく見極めることです。
(「kumiya.0.007.jp」)
そして、あくまでも推測ですが、ヤオハンはこういった中国進出の誘い話に乗ってしまったのではないかと思っています。もともとは野菜、果物といった小売業からスタートして、百貨店を開業するまで成長させ、その暖簾(のれん)を守って地道に自分のテリトリー内で商売を続けていれば、それだけで安泰だったはずです。間違った道に誘った仕掛け人が必ずいるはずです。
中国関連情報には、くれぐれも注意をして下さい。次のブログで紹介しますが、中国は謀略、裏切り、虐殺の「伝統国」です。進出したものの、外から巨大資本による株式の買占め、その上で役員が送り込まれ、そのうち多数派工作をされ、会社が乗っ取られるだけです。確かに、法的には問題がありません。だから、堂々と露骨にやってきます。
そして、今はもう進出ではなく、撤退の時期です。人権意識がある国と付き合わないと「ウィンウィン」の関係は築けないということだと思います。