「人を疑ってはいけない、ウソを言ってはいけないといったことは道徳的な教えとして子供たちに教えますよね」
「どうしたのですか? 当たり前だと思いますけど……」
「普通の市民生活のレベルではそういった人間としてのルールを守る必要があるのですが、それがそのまま政治の世界でも通用すると考える人が結構いるのです」
「政治の世界は、駆け引きの世界ですからね」
「本音を隠しながら、いかに相手を動かすか、そこが勝負だと思っているので、政治家の発言はある程度、斟酌して報道する必要があると思うのですが……」
「そこのところは、大変難しいと思います。というのは、事実をそのまま伝えるのが報道機関の役割だと思うからです」
「だけど、それだと場合によっては「ウソ」を拡散することになります。読者は活字になっていることは真実であると思い込むフシがあります」
「おっしゃろうとしていることが段々分かってきました。要するに、新聞などマスコミが真実だろうと思って報道したが、実は発言者は周りを騙そうとして意図的に思ってもみないことを喋って、それを報道したということですね」
「まあ、大体そんなところですね」
「私は活字報道の限界みたいなものがあるのではないか、と最近思っているのです」
「どうしてそういうことを思ったのですか?」
「昨日「テレ東ニュース」というユーチューブ動画を見たんですけど、内容は中国問題ですが、言っている人の表情、目つき態度で、これ本気でそう思っていないでしょとか、真っ赤なウソだ、と何となく分かるんですよね」
「活字の場合は、表情が分からないですからね。なる程ね」
「新聞にQRコードをつけて、大事な記事については画像と音声配信されるということを考えたらどうでしょうか?」
「そうすると、よりリアルに分かるということですね。採算の問題と、そこまでこだわって見る人がいるかですよね。提案してみて下さい」
「ここからが本論です ↓」
習主席の腹の内を探る
「日経」(2021.4.21日付)が「習主席『新冷戦には反対』」と大きな見出しをつけて博鰲(はくごう)アジアフォーラム」での習主席の演説を報道しています。ただ、共産主義者は言葉を自分たちの体制を守ったり、勢力を拡大したりするための武器と考えているので、必ずしも本音で言っている訳ではないのです。簡単に言えば、ウソの羅列ということも当然あるということです。
何を発言したのかを「日経」がまとめています。その横に、実際にはどう考えているかを書いてみました。
【習氏の主な発言】
実際の報道 | 肚の中で考えていること |
【国際協調のアピール】 | 今はまだアメリカと正面から対決するのは得策ではないので、新冷戦に反対である。チャンスを待とう。 |
いかなる形の新冷戦にも反対 | |
デカップリング(切り離し)は経済秩序に反し、誰の得にもならない | そんなことをされたら中国経済が発展できないので、反対。世界で多くの国が困るはず。みんなのために発言をしているポーズを見せておこう。 |
パリ協定を遂行すべき | 環境のことを考えている中国を世界にアピールできる。 |
【対中警戒論への対応】 | 相手を油断させることが大事。防備のスキを狙って少しでも領土を拡大する。大きな一歩も小さな一歩の積み重ね。 |
中国は永遠に覇を唱えず、拡張主義を採らない | |
【内政干渉への批判】 | 国内の人権問題はウイークポイントなので、ここを攻められないように少し強めの言葉で恫喝しておこう。 |
偉そうな態度で他国に指図し内政に干渉しては、人心を得られない | |
規則を他国に無理強いできない | 自分たちのやりたいようにやるために、自分たちのルールでやることを呑んでもらわないと困る。 |
毛沢東――「傲慢な大国主義の態度をとってはならない」(中国共産党全国大会/1956)
習氏の言葉は、あくまでも中国の現状を踏まえた上でのものなので、力関係が変われば当然言い方も変わります。例えば、アメリカを完全に凌駕するような状況になれば、偉大なる我が中国の指導に各国は従うべきだ、というようなことも言い出すと思います。
今から65年前の1956年9月に中国共産党第8回全国大会が開かれています。当時は米ソ冷戦の時代です。社会主義陣営の覇としてソ連が君臨し、周辺国や衛星国に対して干渉的な態度をとっていた頃です。
毛沢東はそのことを念頭に置きながら開会の辞で「われわれは、ごう慢な大国主義の態度をとってはならない。革命に勝利し、建設にあたっていくらかの成果をあげたからといって、思いあがるようなことは絶対にあってはならない。国の大小を問わず、いずれの国にも長所もあれば短所もある。たとえわれわれの活動が、きわめて大きな成果を上げたとしても、たかぶったり思いあがったりする理由は何一つない。謙虚は人を進歩させ、傲慢は人を落伍させる。この真理を、われわれは永久に心にとめておかなければならない」と言っています。
中国共産党は毛沢東を建国の父として考え、習氏が尊敬している人物ですが、毛沢東はその時代状況の中で上の言葉を発しただけです。だからもし現在生きていて主席であるならば、習氏と同じようなことを言ったと思います。
中国共産党を例に出しましたが、日本共産党も勢力が拡大すれば言うことが違ってくると思います。今でこそ憲法を守れと言っていますが、政権を取れば自分たちが考えていた人民憲法を持ち出してくると思います。
台湾、尖閣は世界制覇への足掛かりという位置付け
中国と国境を接している国は、全部で14か国あります。そのうち12か国と領土問題で争っています。最近で言えば、インドとはお互い軍隊を出動させ何人かの死傷者も出るといった衝突事件が起きています。さらに、日本の尖閣と同じように、ブータンに対して今まで領有権を主張したこともない地域に対して、突然領土問題を持ち出しました。
(「blog.goo.ne.jp」)
あれだけ広大な土地があるのに、どうして更に領土や領海を欲しがるのだろうと不思議に思うかもしれません。簡単に言えば、世界征服を狙っているからです。自分の足許の小さな領地を一つひとつ取り上げていくことが、やがては広大な世界という大地を手に入れることができると真剣に考えているのです。
南に目を向ければ、目の前の台湾、尖閣がターゲットになります。これは単なる領土問題ではなく、自分の野望達成のための足掛かりなので正当な理屈も理由もありません。そこで中国を説得しようとしても無駄です。彼らは、そのことは充分分かっているからです。分かった上で、取りに来ているのです。
ただ、世界に向けてそれなりの理屈が必要なので、台湾に対しては「一つの中国」、尖閣に対しては「中国固有の領土」という理屈をつけます。言葉は消えてしまいますので、大事なのは普段の行動、つまりその両者は自分の領土だと思って行動することが大事だと考えます。
領海侵入、領空侵犯というのは、あくまでも中国の領土ではないという前提の上での言葉なので、武力で奪えばその言葉自体も消え失せていくと思っています。毎日のように何回も来るのは、相手側からの攻撃を待っているのです。攻撃があり、被害が出ればそれを口実に攻めることができます。先制攻撃をした方が最後は大体負けるというのが、戦争の歴史を調べて分かることです。第二次世界大戦、日本もドイツも先制攻撃をしたのに、最後は負けました。
だから逆に言うと、領海侵入、領空侵犯をした場合は相手の指導者の血圧が上がる位の言葉で罵倒するくらいが丁度良いと思います。「遺憾」表明ではイカンと思います。相手は痛くも痒くもないどころか、肚の中でせせら笑っていると思います。
相手の心理を読んで、言葉を武器のように使う。共産主義者の兵法ですが、たまにはそれに学ぶことも必要だと思います。次回は台湾について話題にしたいと思います。
(「note.com」)
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