「金融のことについて、大分見方が変わったのではないかと思っています」
「人間はどうしても思い込みがありますからね。そういうものを払拭する意味でも、人の話は聞くものですよね」
「今日は株式投資の話をしましょうか。誤ったイメージを持っている方が結構いますからね。そもそも「株をやる」という表現自体が問題だと思っています。バクチではありませんからね」
「ただ、私の父は兄に、株なんかやったらダメだぞと忠告していたことがありますよ」
「お父さんは株式投資をされていたのですか?」
「父は堅実な人だったので、そういうものには手を出さなかったのです」
「今、あなたが無意識で口から出てきた言葉、それが多分日本人の平均的な株式に対する捉え方ではないかと思っています」
「株を買うには証券会社で口座を開いて、さらにお金が必要です。仮にお金が用意されたとしても、どの会社の株を買って良いか分かりません。2重3重の関門が私の前にあるような状態です」
「成る程、そして苦労して買った株が下がって損をしたとなれば、目も当てられないということですね」
「会社が倒産して、株がただの紙切れになることもあるのでしょ」
「理屈の上ではそうですが、上場会社がそんなに簡単に倒産することはありません。仮に、そうなった場合は、その前に必ず何らかの予兆があります」
「予兆って何ですか?」
「債務超過、つまり赤字経営が続いて借金を返すメドが無くなると、倒産ということですが、上場会社のような大企業はその前にニュースとして必ず流れます」
「それが予兆ということですね」
「アンテナを張っていれば大丈夫だと思います。変な先入観と怖れを払拭して、新たな分野にチャレンジして下さい」
「ここからが本論です ↓」
株式購入の模擬体験を授業で行う
私が中3公民の「株式会社」の単元を教えた時に、ワークシートを作って生徒に株式の購入を模擬体験してもらったことがあります。資金は1億円、それを上限として、9000万から1億円を使って、5銘柄以上、業種は3業種以上、単位株を100株か1000株として買うのですが、生徒たちにはグループを作ってその中で話し合いをした上で買うことにします。そして、その日の新聞の株式欄のページを印刷して渡します。
端末でどういう会社なのかを調べることもできます。スマホでも大丈夫です。ただ、学校によっては、スマホが駄目なところがあるようですが、今はそんな時代ではないと思います。チャートを見させて、投資家はこういうのを見て判断するという話もします。ただ、あくまでも目安に過ぎません。そんなやりとりをしながら、買って計算するだけなのですが、これだけでも1時間の授業すべて使うことになります。
生徒の中には、こういう世界があったのかということで、夢中になって取り組む子もいます。
買い終わり、記入されたワークシートをその時間に回収し、2週間くらい経ってから、今度は買った銘柄がどうなったかを確認して計算をさせます。収益を上げられたり上げられなかったり、いろいろありますが、時間的余裕があれば、一番利益があった生徒たちのグループにその「勝因」についてプレゼンテーションさせます。これも一つの勉強になります。必ず質問コーナーを設けて、各グループから1つは質問するようにさせます。珍問答があったりして、授業が和みます。
これと並行して、授業では株式会社の仕組みから始まって、株式投資や投資信託、商品の先物取引などの話をします。ただ、この辺りは教科書に殆ど書かれていないので、公民科の教員ですら、触れたがらない分野です。簡単に言えば、苦手な人が多いのです。何故かといえば、自身も教えてもらったことがないからです。ただ、それでは、いつまで経っても進歩がないと思っています。
会社訪問だけでは、その会社のことは殆ど何も分からない
そういった「実践」をして株式会社に興味をもってもらった後、日本にある株式会社の数は約400万弱あり、その中でいわゆる大企業と言われる会社は多くの資金を集めるために株式市場に上場しているという話をします。一部上場、二部上場、マザーズというのは、相撲で言うと幕内、十両、幕下の違いのようなもの。業績が悪ければ陥落することもありますし、逆に格上げということもあります。東芝のように、一部から二部に陥落して、また一部に戻るという企業もあります。そして、その会社の業績をどうやって調べるのかということの話をします。
就活を行うために、大学生は会社訪問を行いますが、その会社の「真実の姿」を知るには実はデータで確認するのが一番なのです。就活をして、本社見学をして、先に入社した先輩の話を聞く、それでその会社のことをすべて分かったつもりで喜び勇んで帰ってきて、良い会社なので就職希望票を出す人もいるのですが、それでは殆ど「子供のお使い」のようなものです。
重要なのは、会社の戦略・戦術、つまり何を目指して活動するのかということであり、会社のアイデンティティをトップがどのように捉えているのかということです。今の時代は、会社のホームページを見れば分かります。社長がきちんとした服装で、会社の歴史を踏まえて将来に向けて、具体的な戦略そして入社する社員に対してメッセージを発信している会社であれば、第一関門は合格です。
このように書くと、そのようなことはどの会社も行っていると思うかもしれません。実際に確認してもらうと分かりますが、社長が顔を出していない、普段着もしくは作業着姿、工場内でのスナップ写真、という姿をホームページに載せている会社もあるのです。
(「いらすとや」)
会社のホームページでは、どこをチェックするか
「社長あいさつ」というのは、その会社を知る上で一番大事なチェックポイントだと思っています。長からず短からず、そして書かれるべきことは全部で3つです。会社の歴史、社会の情勢、それらを踏まえて会社の戦略を述べて、社長としての決意で締めてあるかどうかです。組織は殆どトップで決まります。トップ以上に組織が大きくなることはありません。同じ自動車産業でも、トヨタが伸び、日産が停滞しているのは、トップの力量とビジョンの違いです。中には、戦略について何も語らず、「100年先の未来において輝ける会社であり続けたいと思っている」というようなことを書いているのですが、会社としてどのような事業を行うのかが何も書かれていないというのもあります。笑い話のようですが、れっきとした一部上場企業の話です。
就活に行っても社長のあいさつを聞くことはできません。つまり、会社訪問したからといって、重要なことは殆ど分からないのです。だから、行っても無駄とは言いませんが、会社の規模が大きければ大きいほど分からないと思います。大学選びの際に高校生がキャンパス見学をしますが、それと同じようなものとして会社見学を捉えない方が良いということです。
今はインターネットで上場企業であれば、売上、経常利益、PER(株価収益率)、 PBR(株価純資産倍率)などすべて分かります。そして、後は直近の4~5年の経常利益の推移が分かれば、その会社のおよそのことが分かるのです。それらを把握した上で、問題意識をもって就活をすれば、実りあるものとなるでしょう。
(「IT」)
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