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女性活躍社会を展望して (その1) / 男女役割分担論 ―― 農耕民族の日本が生み出した

「「国際女性の日」というのがあるのですね。知っていましたか?」

女性

「確か、3月だったと思います」

「3月8日ですね。その日の政府の会合に合わせて岸田首相はビデオメッセージを寄せたそうです」

女性

「女性を大事な働き手として位置付けていこうということですね」

「政府は女性の活躍社会ということで、成長戦略の中心に据えようとしています」

女性

「そんなこともあって、男性の育休制度が導入されたのですよね」

「今は、積極的に取るように勧めています。そういった動きに対して、率直にどう思いますか?」

女性

「私は良いとか悪いとかではなく、それが時代の流れなのかなと思っています」

「あなたはフルタイムで働いていますので、どちらかというと肯定的に捉えているようですね。実は、私はどちらかと言うと批判的なのです」

女性

「ただ、男女の役割について旧来のステレオタイプ的な考えから批判されている訳ではないですよね」

「かつての時代の男尊女卑的な考え方は問題外ですが、ただそれはそれとしての歴史的背景がありますので、それらを踏まえた上で新しい考え方を導入しないと、社会の中に混乱が生じます」

女性

「日本のような社会だと、徹底するまでかなり時間が掛かりますよね」

「人々の中に根付いた意識に裏打ちされた慣習的な行動というのは、政府が何か号令したからと言って、そちらに向かって電車が走り出すというようにはいかないのです」

女性

「ロシアや中国だと、その辺りは楽そうですね」

「独裁国家ですからね。命令一下、従わなければ罰則がありますからね。全員右へ倣えをしてくれます。今の日本はそういう国ではありません。それも踏まえた政策提言が必要なのです」

女性

「ここからが本論です ↓」

 男女役割分担論――農耕民族の日本が生み出した

男女平等という考え方は、西欧から入ってきたものです。大陸の民族は狩猟民族や遊牧民族なので、男女が同じように働くという観念が持ちやすかったと思います。というのは、女性の中には身体能力が高く、獲物を捕らえる能力に優れた人もいたからです。そういう人を子育てだけに従事させるのは、家族や部族にとって損失というような考え方が生まれても不思議ではありません。

日本は典型的な農耕民族の国です。定住をして、その土地を先祖代々守っていく、そうすれば子々孫々の代まで生活が保障される訳です。そして、土地をどうやって守るかという術(すべ)の中から、男女役割分担論が出てきたのだと思います。男は力が強いので外で働き、女性は「家内」ということで子育てと料理をする。男が主人となり、家族を外敵から守る役割、女性はそれを内側から支える役割が自然に編み出され、それが日本の家族の在り方として定着をしていくことになります。

こういった家族制度の原型みたいなものは、稲作文化とともに定着していったと思われますので、約2000年弱の歴史的な重みがあるものです

(「Twitter」)

 国家にもアイデンティティがある――政治家はそれを念頭に置く必要あり

その家族制度が20世紀の半ば頃から崩れていきます。それを由と考えるのか、嘆かわしいことと考えるのかということです。時代の流れなので、仕方がないというのが戦後の日本政府の立場ですが、そこには日本の歴史に対する無知と無理解があります。その無知と無理解が、今の人口減社会、少子化社会に繋がっていると考えます

組織というのは、必ず基本原理というのがあります。いわゆるアイデンティティです。それを外すと組織は衰退し始めます。具体的に話をした方が理解がしやすいと思いますので、実例を紹介します。高級家具が売り物の会社がありました。世間も、当の会社も高級家具というコンセプトで仕入れをし、営業をしていたのです。その間は上手くいっていました。ところが、時代に合わせて安売り家具も販売しようという意見が台頭します。結果的に上手くいきませんでした。何故か。簡単に言うと、コーポレート・アイデンティティから外れたことをしたからです。

前置きが長くなりましたが、社会の組織というのは、こういうものなのです。そして、国家も同じです。

(「月刊事業構想」)

 日本の女性は、裏方で活躍するのが本来のあり方

近視眼になってはいけないと思います。西欧のデータと比べて日本は遅れている、何とかしなくてはと思ってもいいのですが、そこで一歩下がって、単純に比較することが正しいのかを考える必要があります。

【ジェンダーギャツプ指数】

ドイツ 11位 アメリカ 30位
フランス 16位 イタリア 63位
イギリス 23位 日本 120位
カナダ 24位 (2021年統計)

 

今まで書いてきましたように、元々の出発点が違いますので日本の指数が低いのは当たり前です。ただ、この現状を踏まえて、政府はこの順位を上げたいと考えているようですが、それは違うと思います。その方向は、歴史的に日本が歩んできた方向と違うからです。

今の政府が女性に推奨している生き方は「表方」になって働けと言っているのです。そうなると、保育、教育、介護は誰が面倒を見るのかということになります。従来は、これを家庭の中で女性が面倒を見てきた分野ですが、この分野が当然手薄になります。

保育の問題は、数年前に待機児童の問題が起きました。今は、介護の問題が表面化しています。老親の介護、障害を抱えた子供の介護です。教育については、平等社会を作っていくという観点からすれば、国が大きく関わらないといけない分野ですが、これはデータを見れば明らかなように、家庭に任せてしまっています。外堀を作って用意万端整えてから進めば良いのですが、付け焼刃で仕事をしているようなものです。長いスパンで構造的に考えなければ、働く女性の問題は上手く解決出来ません。今は、数字だけ求めて動いているような感じです。

(「学研ココファン」)

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