「前回はルソーのことを勉強しました。早速、図書館にいってみたのですが、『エミール』というのは長編なんですね」
「文庫本で3巻の分量です。含蓄のある言葉が多く、結構なるほどと思うことが多いですよ。あなたにルソーのこの言葉を差し上げましょう――『あなたはまず腕白小僧を作らなければ、賢者を作ることには決して成功しないだろう』。どうですか?」
「今は、腕白小僧という言葉さえ使われなくなっていますよ」
「そういう意味では、昔の良き時代は無くなりつつあるということでしょうか。ところで今回は、昨日のニュースの話題をとりあげましょうか」
「広域強盗と児童手当て拡充の問題が、昨日の2大ニュースでしょうか」
「広域強盗は現代ならではの凶悪犯罪ということでそれなりに気になりますが、少子化と絡めて児童手当て拡充をしようとしていますよね」
「私は賛成ですけど」
「必ず、自分中心で考える人がいるから困るんです」
「食料品の値上げが結構家計に響く気がしています。電気代も上がるでしょ……。そういった国民の声を受けて、与野党で一致しそうだと言っていました」
「日本では、与野党一致が結構危険なシグナルだと思っています」
「どういう意味ですか?」
「近視眼的になって、前だけ向いて突っ走る姿に見えるからです」
「横目で見るべきは、何ですか?」
「財政事情ですね。日銀が苦戦しています。その位、日本の財政状況が悪いということだと思います」
「本来は、そういうことを勘案して政策を考えなければいけないということですね」
「そうですね。打ち出の小槌がある訳ではないからです」
「ここからが本論です ↓なお、表紙は「自動車情報・ニュースWeb」提供です」
インフレが起きても日本は利上げができない
エネルギー価格や原材料費の価格上昇分の商品への価格転嫁が始まったため、食料品の値上げということが各店舗で行われています。ただ、「価格転嫁は36%どまり」(『日経』2023.2.1日付)とのこと。ということは、これからも値上げラッシュは続くということです。
世界的に見ると、ウクライナ戦争の影響でエネルギーや食糧供給が減り、中国経済が回復してくるという予測の中、インフレも進行するというのが大方の見方です。そのため、アメリカFRBは2月1日に0.25%利上げをし、イギリスも0.5%の利上げを今日発表しました。
インフレが進行する場合は、利上げをするというのが金融政策の基本ですか、仮に日本ではインフレが進行したとしても、利上げをすることは出来ません。その位、財政事情が悪化しているのです。ただ、国会はそういうことが頭にないのか、少子化対策ということで所得制限を撤廃して児童手当を拡充しようとしています。
前にも書きましたが、手当ての拡充は少子化対策にはなりません。所得制限を撤廃することは、高所得高負担の実質的な平等の原則に反することになります。2重の意味で間違っています。
今の政府はバラマキ的な発想をします。コロナ関連の給付金、子育て支援の給付金、旅行代金の援助金などです。まさに「打ち出の小槌」があると言わんばかりに、繰り出しています。今や、財政再建という言葉も聞こえなくなりつつあります。財政ファイナンスが常態化してしまっています。このツケは必ず払わなければいけなくなりますので、経済的には非常に危険な行為だと認識すべきなのです。
(「ARUHIマガジン-ARUHI住宅ローン」)
節度なきバラマキ行政をやめる時
先進国の中で日本の財政状況は、群を抜いて悪い状況です。公的債務の額はGDPの270%にものぼります。日本についで多いのがイタリアの約150%、アメリカは約120%です。日本の借金がいかに巨額になっているか分かると思います。
巨額な赤字でも、返す気持ちがあればまだ救われますが、国会論議を見ていると、どこ吹く風という議論で終始しています。与野党で手当てをドンドン出せ、所得制限を撤廃しろという大合唱が鳴り響いているように感じます。バラマキ行政を始める人は人気取り気分で良いかもしれませんが、終わらせ方が難しいのです。その時に、「どうしてここで終わらせるのか、不公平だろ」という声が必ず出るからです。
国会の議論を日銀は冷や冷やしながら聴いているというのが実際なのではないでしょうか。
(「ねくとスワップ投資」)
日銀が懸命に国債を買い支えている
歳出が歳入をオーバーすれば借金をします。これは、家計も国も同じです。国の場合は、国債を発行してこれを買ってもらいます。この国債を誰に買ってもらうのか。市中消化の原則というのがあり、国内外の企業、国内外の投資家に買ってもらいます。
借金をすることは感心したことではありませんが、全額市中消化できれば取り敢えず胸を撫でおろすところです。ところが、現在は市中消化が出来ていません。買い手がいないのです。かと言って、国債の利回りを上げる訳にはいきません。借金の返済が増えるからです。そのため、利率はそのままにします。そうすると、売れ残りが出るのですが、その国債を日銀が買っているのです。自転車操業のようなものです。
実は、戦時中も同じことをしたのです。膨大な戦費を捻出するために、当時の政府は戦時国債を大量に発行して、それを日銀に引き受けさせたという前例があります。戦時中は物価統制をしていたため、インフレは起こりませんでしたが、敗戦を境に戦後インフレが起きたのです。そのため、厘や銭といった単位が使えなくなり、円にしたという経緯があります。
ノー天気にカネをばら撒いていると、大変なことになるということです。
(「グラフ化:千葉の空2」)
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