
「全支出のうちの食料品の割合をエンゲル係数と言いますが、急伸しているそうです」

「だって、お米の値段一つ取ってみても、高くなりましたからね。5キロ5千円のものも現れたのです」

「買い物に行って、レジに立つのが怖いとウチの女房が言っていました」

「肌感覚で数年前の2倍くらいかなと思っています」

「日本の2024年のエンゲル係数は28.3%です。ちなみに、2022年が26%です」

「イワシやサンマでさえ値段が高くなっています。卵や鶏肉など、よく食べるものが軒並み上がっていると思います。今後の見通しは、どうですか?」

「見通しは、良くないと思っています」

「少なくとも、お米が前の価格に戻らないかしらと思っていますけど……。備蓄米を放出すれば、下がるようなことを農水省は言っていませんでしたか?」

「言っていましたけど、元の値段には戻らないと思っていました」

「先日、スーパーでアメリカ米を売っていたので、迷わず買ってきてしまいました」

「関税がかけられても、そちらの方が安くなってしまったのですね」

「日本のお百姓さんには、申し訳ないなと思いつつ、背に腹は代えられないなという感じです」

「ここからが本論です ↓ 表紙写真は「NHK」提供です」
食料自給率の低下の背景にある構造的課題
日本の食料自給率は、1960年度には79%と高水準でしたが、年々低下を続け、2022年度には38%にまで落ち込みました。主要国の中でも、ここまで自給率が低い国はほとんど見当たりません。たとえば、アメリカ、カナダ、フランス、オーストラリアは100%以上の自給率を誇り、イギリスですら1960年代の約40%から、近年では70%程度にまで回復させています。
日本でも、食生活の洋風化や輸入食品の増加などが自給率低下の要因として挙げられますが、最も深刻なのは農業人口の減少です。1960年代には全就業者の約11%が農業に従事していましたが、2004年には3%を切り、現在もその傾向は続いています。農業従事者の高齢化も進み、後継者不足の問題と相まって、日本の農業は持続可能性を問われる局面にあります。食料自給率を向上させるためには、単なる農産物の生産奨励ではなく、農業人口を増加させる抜本的な対策が不可欠です。
(「資源・リサイクル促進センター」)
農業従事者の高齢化と新規就農の壁
日本の農業を担う「基幹的農業従事者」は、2000年には約240万人いましたが、2023年には116万人まで減少しました。何もしなければ、20数年で農業従事者がゼロになる計算です。さらに高齢化が顕著で、2000年時点で65歳以上の比率が約51%だったのに対し、2023年には70%を超え、平均年齢は68.7歳と非常に高くなっています。
一方、新たに農業を志す「新規就農者」は2015年には約6万5,000人いましたが、年々減少し、2022年には約4万5,800人にとどまっています。このように、離農者が急速に増えているにもかかわらず、就農者が追いつかない状況が続き、慢性的な人手不足を招いています。農業には専門的な知識と長期的な経験が必要であり、作物の育成から販売に至るまで、多くの工程を覚える必要があります。
そのため、他の産業のように単純な求人で人材を確保するのは難しく、国や地方自治体の積極的な支援が不可欠です。新規就農者への研修制度や経済的支援、農地確保のサポートなど、総合的な政策が求められています。
(「Rakuten Today」)
農業の未来を担う仕組みづくり
農業就業人口の回復は、日本の食文化を守ると同時に、地方創生の鍵ともなります。その実現には、教育と制度の両面からのアプローチが必要です。まず、小中学校において農業体験の機会を増やし、幼少期から土に触れる機会を持たせることが大切です。たとえ本格的な農地がなくても、プランターなどを用いた簡単な栽培から始めれば、農業への理解と関心を育むことができます。
また、農業経営の法人化や大規模化も避けて通れない課題です。経験や勘に頼る農業から、科学的根拠に基づいた農業へと移行するためには、最新の技術やデータを導入する必要があります。イギリスが自給率を向上させた背景には、政府による「最低買取価格制度」と「農業科学の推進」があります。価格の下支えと技術的支援の両輪で、生産意欲を喚起し、農業の安定化に成功したのです。
日本においても、気候変動や市場の不安定性に対応できるよう、官民一体での支援体制を整備し、持続可能な農業基盤を築いていくことが急務です。
(「JAいるま野」)
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