「前回は、危機感が国の発展に重要な役割を果たしたという内容でした。面白い視点だと思いました」
「イスラエルは危機感を意識的に使っているところがありますが、日本の場合はそういう意識は全くありません。偶然のなせる技みたいなところがあります。ついでに言うと、移民の危機感を上手く使って社会の発展に結びつけたところがあります。どこの国だと思いますか?」
「えっ、いきなりステーキですか? どこですか?」
「当たりです。ステーキの本場、アメリカです。アメリカは人種のるつぼと言われるように、世界のいろんな地方からの移民が集まって作った国です」
「建国が遅いですものね。確か、18世紀頃ですよね」
「独立宣言が採択されるのが1776年です。日本は江戸時代の中期です」
「それから100年後には日本に黒船に乗ってペリーが来航するんですものね。前から不思議に思っていたのですが、アメリカはどうしてそんなに早く発展することが出来たのですか? 危機感とどのように結びつくのですか?」
「考えてみて欲しいのですが、移民はある意味、母国を捨てています。その決意は並々ならぬものがあると思います。この新天地で絶対に成功してみせるという気持ちが全体的に強いと思います」
「強ければ、成功する訳ではありませんけどね」
「まず大事なのは、気持ちです。意志がないところに道は開けません。一人ひとりが背水の陣でアメリカの生活に臨んだのです。当然、競争も激しくなりますが、それが社会と国民を刺激し、活力を生み、経済発展の原動力になったと思われます」
「成る程。確かに、そういったものが映像を通しても感じられることがありますものね。トランプ前大統領が最近またよく出ていますが、あの演説の迫力はきっと近くで聞くと凄いものがあると思います」
「バイタリティーを感じますよね。日本の政治家もあのエネルギッシュなところを多少は見習った方が良いと思っています」
「いつも原稿を読んでいるような答弁ばかりですものね。そうですか、危機感ですよね……。家に帰ったら子供たちに危機感をもって勉強するように早速言いたいと思います」
「そっちですか……。切り札のようには使えないと思いますけど……。ここからが本論です ↓ 表紙の写真は「d’s JOURNAL編集部」提供です」
「入管法」は前時代的な発想に基づくもの
少子化が進行して、このままでは日本は2050年には1億人を切ると言われています。人口減少社会が一番の有事と言う人もいます。抜本的な対策を立てることが出来ないのならば、世界から移民を呼び寄せる政策を考える時期です。慈善的、人権的な観点からではなく、国の発展に寄与してもらう人材を外国から呼び寄せるというポジティブな立場からの移民政策がこれからの時代に求められています。
日本の場合は、基本的に移民を受け入れないというスタンスを取っています。そのため、アメリカのような移民法はなく、入国管理法(以下「入管法」)で対応していますが、「管理」という名称が使われていることから分かるように、性悪説をベースに作られています。彼らが悪いことをしないように、入国管理局を設け、入国審査を行い、ここで審査をするという一元管理システムを採用しています。
このやり方が21世紀の時代に合っていないということで、機会あるごとに様々な方面から批判を受けてきましたが、国は改めるどころか、むしろ管理を厳しくする方向で動いているように見えます。
2019年4月に「入管法」を改正して、特定技能を有する外国人人材確保のために「特定技能」という新たな在留資格制度を創設しました。一歩前進と言えるかどうか微妙なところです。人手不足の解消を狙いつつ、外国人人材を積極的に受け入れるというアピールにもなり、どちらかというと日本側の自己都合で創設した制度だと思っています。
(「日本経済新聞」)
難民と移民の扱いを区別するのは難しい――実務的には意味がない
日本は難民の受け入れが非常に少ない国として知られています。これは、国際的な基準と日本の基準が違うからです。例えば、2019年のデータですが、10,375人が難民認定の申請が行われています。そのうち日本が認定したのはわずか44人、率にして0.4%でした。他のいくつかの国の数字を紹介すると、アメリカ29.6%、カナダ55.7%、ドイツ25.9%です。日本が極端に低いことが分かると思います。要するに、本音は一人も受け入れたくないのです。
実はシリア難民が大量に発生した時に積極的に動いたのがドイツです。約5年前のことです。1年間で100万人を超える難民が流入しましたが、その政策に対して反対する勢力が台頭する等政治的混乱が起きました。日本は在日朝鮮人の問題もあり、これ以上外から人を呼び込みたくないというのが本音ベースにあり、21世紀の今の時代においてもひたすら「純血主義」を貫こうとしているのです。
ただ、難民と移民を区別するのは、実際上難しいのです。原因に於いて、他律的なのか自立的なのかの違いだけですが、微妙なものもあります。例えば、ある政治勢力からの迫害の可能性が高まったため、それを恐れての出国は難民なのか移民なのか。難民として認定されれば、国際的に保護義務が発生しますので生活全般にわたって面倒を見なければなりません。移民は本人の自由意志なので、当該国に義務は発生しません。
(国際NGOプラン・インターナショナル)
総合的な施策として移民問題に取り組み、日本の国力を増強させる
太平の時代が終わり、周辺諸国から大量の難民・移民が日本列島に来るという可能性も高まってきました。今のうちに移民政策をアメリカのようにきめ細かく段階的に受け入れる制度を設けることを考える時期です。
アメリカは受け入れ可能な外国人の資格要件をビザの種類で細かく区分けしています。短気就労者だけでも3種類あります。その他、企業内転勤者ビザ、学生ビザ、移民ビザも永住権があるものとないものとに分かれています。そして、基準を通ればすべて受け入れるのではなく、国内の受け入れ態勢の状況によっては労働省が人数制限をするという考えです。
日本の場合は、単純に受け入れるだけではなく、日本の言語は勿論のこと、歴史や文化を学び日本という国の理解を深めることと、自身の生活を日本で確立することの2つを同時に追求できるように日本の行政はそのシステムを構築すべく準備に入る段階です。デジタル庁が創設されるので、移民たちを細かく追跡調査できる態勢を構築できると思います。
総合的な施策として移民問題に取り組むことができれば、日本の国力の増強に寄与することになるでしょう。
(アメリカの世論調査――「ギャラップ」)
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