
「タンス預金という言葉を知っていますよね?」

「文字通り、タンスにお金をしまっておくことでしょ。だけど、タンスを使っていない家が多くなったと思います」

「今風に言えば、クローゼット預金でしょうか。一世代前の貯金のあり方であることは確かですが、日本におけるタンス預金の総額は巨額です」

「ちなみに、どの位の金額ですか?」

「日本銀行の分析によると、2025年7月の時点で47兆円あるとのことです。ただ、その数字を言われてもピンとこないと思います。仮に1億人で割ると47万円です」

「成る程、少しピンと来ました(笑)。素朴な疑問ですが、なぜ家の中に多額の現金を置いておくのですか?盗難や火災などでなくなっちゃう恐れがあると思いますけど……」

「タンス預金というのはモノの例えで、貴金属も含めて、殆んどの場合が耐火金庫の中に保管されていると思います」

「そうなんですね。ただ、どうして銀行に預けないのですか?」

「「タンス」という言葉で分かるように、戦前からの一つの慣習みたいになっています。戦前は銀行が倒産することがありました。セーフティーネットがない時代だったので、預けたお金が戻らない時代だったのです」

「銀行に預けると危ないという意識が国民の中にあったのですね」

「そして、現在は税務署に捕捉されたくない、相続税対策を考えている人もいると思います」

「いずれにしても、あまり健全な状態ではないということですね」

「タンス預金は経済的には「死に金」なので、それを「生きたお金」にするような施策が求められています」

「ここからが本論です ↓表紙は「kimini英会話」提供です」
新札切り替えは「タンス預金」あぶり出しのため
タンス預金を特定する明確な統計はありません。紙幣の発行残高とGDPの関係から推計した数字です。2人の会話では47兆円と言っていましたが、これでも2022年から比較して急速に減って来ていることが分かっています。新札発行が大きな影響を与えたのではないかと言われています。というか、新札切り替えはタンス預金の「あぶり出し」を狙った要素が多分にあるのです。
旧札で持っていると、いつかは使えなくなるという心配から、これを機に銀行預金に切り替えるといった動きがあったようです。300万円を普通預金にしたところ、税務署から突然電話が掛かってきたという話を聞きます。彼らは預貯金のデータを自由に閲覧できる権限を持っています。生前贈与をひそかにする人もいますので、それらを捕捉するのも彼らの仕事なのです。気を付けて下さい。
話を元に戻します。低金利時代が長く続き、この間、金利が上昇しています。そんなこともタンス預金減少に影響していると思いますし、NISA枠(非課税枠)が拡大されたこともあり、株式や投資信託にも資金が流れていると思われますが、まだまだ不十分な状況です。下のアメリカ人と日本人の金融資産比率の比較を見比べてみて下さい。
「貯蓄から投資へ」――金融教育は社会科で教えるべきもの
日本の家計金融資産は、総額2,200兆円ありますが、そのうちの51%が預金です。アメリカは11%、EUの31%と比較して、割合的にかなり高いことが分かります。「安全志向」と言えばそうかもしれませんが、余剰資金があれば貯蓄としか思いつかないような方が多いということです。そんなことから「貯蓄から投資へ」と国は呼びかけているのですが、あまり大きな変化はないようです。
経済の三主体ということを習ったと思います。家計も主体の一つです。本来なら、国の経済動向を踏まえて、一人ひとりが投資行動を考えることが望まれていますが、実はそのような教育を多くの日本人は受けていません。「子ども貯金」を学校で行っていた時代があります。貯蓄の大切さを教えるために行ったのでしょうが、貯蓄と消費だけを教えて、現代経済にとって一番重要な投資を教えることを忘れたのです。
最近になって、ようやく金融教育と言い出しています(下のグラフ参照)。小学校の高学年から行うべきだと思っていますが、実施しているのは高校の家庭科です。家庭科と聞いて、一瞬「えっ」と思いましたが、高校社会科の科目に現代社会や政治経済がありますので、そこで金融のことを教える中で、投資を教えるのが本来の筋だと思います。中学の公民の中で教えても良いのです。家庭科の中で、家計簿の項目があり、貯蓄とあわせて投資を教えるということですが、その程度の扱いで本当に良いのかと大いに疑問を持っています。それではタンス預金はなかなか減らないでしょう。
(「PR TIMES」)
投資は学ぶより慣れろ
少し前に、老後生活のためには自助努力で2,000万円用意しておかなければならないという話が話題になりました。預貯金だけを考えて、毎月コツコツ貯めていくという考えではなく、収入の何割かを投資に回すという考え方が必要です。株式投資と言われても、銘柄が分からないという方は投資信託という方法があります。
世界の政治が極めて不安定な時機です。それを反映して現物の金価格が上昇しています。白金(プラチナ)の価格はしばらく値動きがなかったのですが、こちらも動き始めています。世界の株価が全体的に上昇気味ですし、金利も上昇傾向にあります。こういう時は、普通は金価格は下がるものです。ところが、「1トロイオンス5,000ドルまで上昇する」と米ゴールドマン・サックスが金相場の今後のシナリオを示しました。ちなみに現在の価格は3,600ドルなので、ちょっとした話題になっていますが、その位世界の政情が不安定なのです。
1トロイオンス5,000ドルを1キロに換算すると、約2,360万円です。現在は約1,850万円なので、まだまだ上値の余地があるということです。現物を買うのが怖ければ、金の投資信託もありますので、検討されれば良いかと思います。投資は教科書があってないようなものです。少額でも良いので、実際に行動しそこから実地で学ぶということだと思います。実業家も現場に入って、経済の流れを肌で感じビジネスに活かします。それと同じです。 【参考記事】 「金融制度の国際標準化」 『日経』2025.9.12日付
(「ニューズウィーク」)
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