「今日は、産経新聞を持ってきました。この1面を見て下さい。」
「えっ、何これ。「香港は死んだ」……ですか。白抜きの文章ですね」
「インパクトが強いですよね」
「他紙でこういう工夫をしたところはあるのですか?」
「ざっと見たところ、こういうことをしているのは産経新聞だけですね」
「この問題について、深刻かつ真剣に考えているということがよく分かりますよね」
「この黒白のコントラストを見ただけで、何を言いたいのかが伝わりますよね」
「グッド アイディアだと思います」
「ところで、1国2制度のスタートは偶然ですが、23年前の7月1日だったのですね」
「あら、そうですか。当時は、香港市民は中国返還を喜んだのでしょ?」
「20世紀最後の歴史的イベントと言われましたね。返還前日の香港大学社会科学センターの調査では、中国復帰を「歓迎、期待、楽観」などプラス評価するものは35%、「憂慮、恐怖、悲観」などマイナス評価するものが9%、両方混じったものが6%、「特に何も感じない」と答えたものが48%でした(丸屋豊二郎/アジア経済研究所「現地で見て感じた香港返還」)」
「データを見る限り、好意的な評価が多かったのですね」
「ただ、共産党政府にやがては統治されることを見越して、返還を機に移住した人も結構いたのです」
「迷った人もいたでしょうが、その際に考えた基準は、やはり50年でしょう」
「これは誰もが言っていますが、国際公約ですから絶対に守る必要があるのです」
「中国政府の説明ですと、香港市民が暴れすぎ、だから止むを得ずという言い方ですよね」
「主客が転倒しています。締めるから、暴れるのです。普通であれば、誰も暴れません」
「今になって分かる親(イギリス)の恩、というやつですね」
「そうですね、台湾の人達は、戦後の国民党政府の統治を経験してから日本の統治を評価し始めましたからね」
「朝鮮半島の国は、そうならないように必死で反日政策、反日教育をするのですね」
「まあ、そういうことです。そう考えると、香港は、ここから本格的な反英教育、愛国教育が始まると思います」
「朝鮮半島で反日教育がなされたのと同じことが起きるのですね (ここからが本論です)」
「香港は死んだ」――まさにぴったりのフレーズ
「香港安全法」について、新聞各社1面トップで扱っていますが、責任の所在とその根本原因を見つめた上で記事が書かれているか、そこが問題です。まず、「中国」という表記は不正確な場合があります。「中国」は民主的な選挙が行われていません。そのため、中国政府と中国人民が一体とはみなすことができないので、「中国」、「中国政府」、「中国共産党政府」を、それぞれ使い分ける必要があります。
例えば、これは「朝日」の社説です。「中国は台湾との平和的統一の道を自ら閉ざしたに等しい」とありますが、ここは「中国政府」もしくは「中国共産党政府」にする必要があります。
国際的な公約であった「1国2制度」を勝手に破り棄てるという暴挙を全会一致で決めてしまいました。みんなで酒を飲もうというような事柄であれば好いと思いますが、このような重大な内容を含んだ法案が全会一致で決まってしまうという。そこには、ステレオタイプの人間を大量に生み出してしまう、共産主義の恐ろしさがあります。
共産主義によってステレオタイプの人間が大量生産された
ステレオタイプについては、 昨日のブログを見て下さい
共産主義が、どうしてステレオタイプの人間を生み出しやすいのでしょうか。一言で言えば、結論が先に示されているからです。人間というのは、目標が明確に定まっている場合は、それに向けて努力しようとする動物です。真面目な性格の者ほど、その傾向は強いと思います。
共産主義(社会主義)という目標が定まり、そこに向けて運動していく主体の組織も出来上がり、その上で指導者がゴーサインを出せば、党員は遮二無二そこに向かって進むことになります。それはちょうど運動部が全国大会、国際大会を目指してひたすら突き進む心理的なメカニズムと同じです
共産主義を宗教だと言う人がいますが、この構造を見て、そのように言うのでしょう
科学的社会主義という言葉があるようですが、目標があらかじめ定まっているものを科学とは言いません。科学とは、法則という意味なので、それは多くの事例を集めて、そこから法則性を見出すことを科学と言います。そして、その見出した法則を使って目指すものを探し出すのが科学です。人類がこれから歩む歴史も定かではありませんし、どのような社会となるかは、それはまさに現代の人々がどういった価値観の元、どういった生活を営むかにかかっているのです。
科学と無縁の共産社会を目標と定め、現代国家を階級社会と捉え、そこに分断と闘争を持ち込み、それを国際社会にも当てはめようとしています。香港や台湾、さらには尖閣の問題の根底に流れているのは、中国の共産主義者の勝手な妄想です。問題なのは、どうすれば目を覚まさせることができるかです。彼らが勝ち続けていると思っている間は、夢から覚めることはないでしょう。
共産主義者はシナリオが狂うと、取り繕うように暴力的な手段に出る
目標を先に定めてしまった後に、当初予想しなかったことが次々と起こったため、それを取り繕うような論理を編み出したり、強制力で現状を変えようと思い始めます。
かつてオウム真理教の教祖は、信者にハルマゲドンが来ると言っていました。ところが来なかったのです。このまま来ないと、ニセ宗教かということで、信用問題に関わります。そのため、首都圏を走る地下鉄の電車内で猛毒のサリンを信者を使ってバラ撒いてしまいます。ハルマゲドンを演出しようとしたのです。多くの犠牲者が出たのですが、簡単に言えば辻褄合わせの犯行だったのです。共産主義者の発想は、これと同じようなものです。
今回の香港安全法の措置は、習近平指導部が描いた「一帯一路」の計画が予定より進んでいない中で、一種の焦りが招いた事件だったと思います。布石は「コロナ禍」です。思わぬアクシデントがあり、焦りもあったのでしょう。
香港を抑えることが出来なければ、台湾など絶対に無理です。ここで足踏みをしている訳にはいかないという、何か強い気持ちを感じます。共産主義者は、このように予め書かれたシナリオに合わせて行動をしようとします。頭が演繹的思考になっているからです。
マルクスの『共産党宣言』は、そういった発想から打ち出された文書です。そして、そのシナリオは非常に単純なものでした。資本主義→社会主義→共産主義です。そしてそれは、歴史の必然だと言ったのです。必然であるならば、何もしなくても自然にそうなることを言うのですが、何故か、共産党の存在が必要と説かれるようになります。
矛盾のエネルギーが激化することにより革命が起きると考えたので、マルクスは資本主義が発達している国から革命が起こると考えたようです。ところが、実際には遅れた農業国のロシアで社会主義革命(1917)が起こりました。当初の公式から、いきなり外れた事態がおこったのです。これをどう評価するかです。しかも、レーニンの死後にスターリンという独裁者が現れ、同志や国民を次々と粛清していきます。そして、結局1991年にソ連邦は経済的に行き詰まって崩壊します。これも当初のシナリオになかったことです。これをどう評価するかです
日本共産党は今になって、ソ連は社会主義国とは縁もゆかりもない国であったと言っていますが、それは理屈になっていません。
さらに、戦後成立した社会主義国は、具体的には中国、北朝鮮、キューバ、ベトナム、カンボジアなどですが、どの国も経済的に遅れた国から社会主義国になります。そして、いずれの国も共産党一党独裁国家です。
カンボジア共産党を率いたポル・ポト政権は約200万人(政府発表)の国民を虐殺したと言われています。ポル・ポトが手本にしたのは毛沢東の下放政策です。首都プノンペンの住民200万人を強制的に農村に移住させ、貨幣を廃止し、全員に農業をさせるという、信じられないようなことをしました。無理矢理共産主義国家をつくろうとしたのです。マンガの世界のようなことを現実に行おうとしたのです。ただ、今の中国共産党が行おうとしているのは、この類(たぐい)です。
日本共産党は、中国は「社会主義を目ざす国」と説明しています。一帯一路は社会主義への道ということでしょうか。そして、そう考える日本共産党も社会主義を目標に活動しているのでしょう。どうして、そうやって自分で勝手に書いたシナリオを突き進もうとするのでしょうか。
この2つの共産党がその活動をやめること、それがアジアや世界の人たちの平和実現にとって最も有効なことだと思っています。
読んで頂きありがとうございました。
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