
「日産の株価が思わしくないので、困ったなと思っています」

「今はどのくらいですか?」

「300円台ですね。かつては1000円くらいしていたんですけどね」

「どうして、そんなに下がってしまったのですか?」

「株価はその企業に対して投資家がどう見ているかが分かります。先行きが芳しくないと思っている人が多いということです」

「車の性能は良いのでしょ」

「性能と株価は基本的に関係がありません。株価はどちらかというと、その会社の経営戦略に関係があります」

「確か、日産の車に乗っておられましたよね」

「一応、フアンですからね。ウチの車は代々が日産です。エルグランドから始まって、今はセレナに乗っています。子供たちも日産車です」

「今日はどのような理由で日産を取り上げようとしたのですか?」

「3面記事的な話題ではなく、会社という組織のあり方を考える一つの材料として日産のこの間の動きを追ってみたいと思います」

「ここからが本論です ↓表紙写真は「MOTA(モータ)」提供です
赤字と株価低迷、工場閉鎖の現実
2025年上半期の世界新車販売ランキングで、日産自動車は161万台にとどまり、前年より6万台減少しました。その結果、初めて10位圏外(11位)に転落しました。2004年に統計が始まって以来、常にトップ10を維持してきただけに、大きな節目といえます。さらに、2025年4~6月期の連結決算は1157億円の赤字となり、これで4四半期連続の赤字です。
すでに国内外7工場の削減が発表され、国内では5工場が閉鎖される予定です。横浜本社ビルの売却検討というニュースも流れ、経費削減効果はあるにせよ、象徴的施設の放棄は企業イメージを損ない、「敗北感」を社内外に与えます。
こうした中で、メルセデス年金ファンドが日産株を1株330~340円程度で売却するという報道がありました。株価は当面、低迷を続けると見られ、企業価値に対する市場の評価は厳しさを増しています。
(「読売新聞オンライン」)
ゴーン改革の光と影
日産が危機に陥ったのは今回が初めてではありません。1990年代後半には過剰債務2兆円超、シェア低下、新車開発の遅れで倒産寸前に追い込まれました。1999年にルノーが資本参加し、ルイ・シュウェイツァー会長の判断でカルロス・ゴーンがCOOとして送り込まれます。
ゴーンは「日産リバイバルプラン」を掲げ、5年間で21工場閉鎖、2万人超の削減、部品調達先の集約など徹底したコストカットを実施しました。その成果は劇的で、2001年度には営業利益率9%以上を達成し、V字回復を実現しました。
しかしその代償として研究開発費や人材投資は削られ、技術者の士気が低下しました。さらにゴーンが日産・ルノー両社のトップを兼務することで意思決定が集中し、社内監督機能が麻痺しました。その結果、不正問題が表面化し、逮捕へと至ったことは周知のとおりです。
(「沖縄タイムス+プラス」)
組織の肥大化と統合の必要性
自動車業界は「100年に1度の変革期」とされ、電動化やデジタル化への対応が急務です。しかし日本メーカーは総じて遅れをとり、日産も巨額赤字を抱えながら対応に迫られています。エスピノーサ新社長が打ち出した方策は、工場や研究所を含む不採算部門の切り捨て・集約という点で、ゴーン流の発想に近いものです。問題は、これが社員にどう受け止められるかです。25年前に同じ策を経験しており、「またか」という疲弊感が広がる懸念があります。しかも、リストラの矛先が社員ばかりに向かうのでは説得力を欠きます。
現在、取締役は12人中8人が社外取締役で多すぎるとの指摘があります。さらに執行役員は約60人にのぼり、トヨタの30人前後と比べても明らかに肥大化しています。まずは上層部自ら身を削る姿勢を示さなければ、現場の納得は得られません。大組織が機能不全に陥るとき、その多くは幹部層のガバナンスに問題があります。赤字が続く以上、まず取締役会や経営体制を点検すべきです。
2023~24年に日産とホンダの統合協議が水面下で進みましたが、日産側のリーダーシップ不在と合議偏重の体質により、ホンダに不信感を抱かせました。統合は破談となり、日産の組織文化の弱点を露呈しました。ゴーン事件の反省から「社長への権限集中を避ける」仕組みが徹底された結果、取締役会は社外多数派となり、執行役員も肥大化しました。そのため社長の意思決定は多重承認に縛られ、スピード感を失っています。このままでは日産単独での生き残りは難しいでしょう。悠長に構えていれば、統合のタイミングを逃し、最後は「選ばれる」のではなく「救済される」、すなわち吸収される形で終わる危険性が高いのです。
【参考記事】 「日産、初の世界10位圏外」『日経』2025.8.26日付 「日産、縮小路線に転換」『日経』2025.5.14日付
「車、デジタル化 日本勢後れ」『日経』2025.1.23日付 「日産、横浜の本社売却検討」『産経』2025.5.24日付
(「You Tube」)
読んでいただきありがとうございました。
よろしければ「ブログ村」のクリックをお願いします。
↓