「中国以上に情報統制国家なのが北朝鮮です」
「今の時代はかつてのように情報を統制できないですよね」
「『産経』(2021.4.18日付)に北朝鮮の政治犯収容所の記事が載っていました。相手国が完全に否定している内容を新聞社が記事にして載せることは余りないのですが、確証があるのでしょう」
「紙面の半分を使って、かなりスペースを割いています。そういうことが現実にあるのだなと読んでびっくりしました」
「ただ、今はインターネットで検索すれば、いくらでも出てきますよ。試しに「北朝鮮 政治犯収容所」で打ち込んで検索してみて下さい」
「じゃあ、ちょっと検索してみますね。(エイッと) 本当ですね、凄い数の情報ですね」
「当局がいくら否定しても、脱北者の証言と衛星写真の解析から、確実に存在していることが分かってしまうのです。「産経」が記事に書いた18号収容所は人民保安省が管理しているものです」
「18号ということは、18か所そういう施設があるということですか?」
「さすがにそんなにはないと思いますが、判明しているのは、保衛部が管理している14号、15号、16号と22号、25号の5収容所です。まだ、それ以外にあるかもしれません」
「今度は「北朝鮮保衛部14号」で検索してみましょうか。あらっ、本も出ているのですね。「北朝鮮14号管理所からの脱出」(白水社)、それから「収容所に生まれた僕は愛を知らない」(KKベストセラーズ)だそうです」
「これらの本を元にして映画が確か作られましたよね。こういうのも簡単に調べられます。ちょっと検索してみますね。「北朝鮮強制収容所に生まれて」だそうです。これは日本でも公開上映されていますね」
「強制収容所で生まれると、そのまま収容されてしまうのですか?」
「政治犯の悪い血が流れているので、親と同じ罪という解釈みたいですね」
「凄い理屈ですね。本人には何の責任もないじゃあないですか」
「彼はやがてその不合理さに気付き、脱北します。そして、2006年に中国にある韓国領事館に身柄を保護されたそうです。その時が24歳ですね」
「青春の時期が収容所生活だったのですね。そのように人生を狂わせられた人が出ないようにしたいですね。ここからが本論です」
北朝鮮の歴史はウソから始まっている
北朝鮮の初代の主席は金日成(キム・イルソン)ですが、正確に書くと抗日運動の英雄である金日成将軍の名を語った金成柱(キム・ソンジュ/1912-1994)です。金日成将軍は抗日の伝説の将軍です。その名前は当時はカリスマ性があったので、それを語ったのです。そのことをアメリカは戦後すぐの時期に韓国を信託統治していた段階で掴んでいました。
そのことが1948年8月1日に作成された「北朝鮮の韓国人たち」(KOREAN PERSONALITIES IN NORTH KOREA)と題する資料の中に書かれてあります。それが米メリーランド州の米国国立公文書記録管理院(NARA)で発見されたのが2009年の8月です。何故、長い間その存在が分からなかったのか。それは、その内容が書かれた当時は極秘資料だったからです。
その資料によりますと、金成柱は1924年に父親について中国に行ったが、この父親が、抗日闘士として名を上げた本物の金日成の兄弟だったと記してあります。金成柱が叔父(伯父)の名を語ったということになります。金成柱は1929~1930年、満州と朝鮮の国境で活動していた本物の金日成の遊撃部隊に合流し、金日成が死亡(当時55~60歳)すると、命令によるものか自発的なものかは不明ですが、「有名な戦士(金日成を指す)」として振舞い始めたと言います。
金成柱のデビューは「歓迎市民大会」
その彼がスターリンによって見出され、北朝鮮に送り込まれたと言われています。戦後になり日本の統治から解放されたということで、金成柱は金日成のふりをして「平壌歓迎市民大会」で凱旋演説を行います。朝鮮の人たちの間では、すでに金日成将軍の英雄伝説が広がっていました。その将軍を実際に見ることができるということで、大勢の人々が平壌の広場に集まります。50~60位の初老の軍服姿の人が登壇すると思いきや、一人のネクタイとスーツ姿の30代前半の青年が演説をし始めたので誰もが仰天したのです。どう考えても、年齢が合わないからです。そのうち、聴衆の間から「ニセモノ」という声が出始めます。金成柱の取り巻きの中からも、怪しむ人も出てきます。
金成柱はここからソ連のスターリンの力を借りて、金日成伝説を作り上げていきます。当然、自分に反対するものや追い落としを画策する者が出てきます。国民の中にも、そういう輩が出てくるでしょう。そのために、強制収容所を建設します。
金成柱は凱旋帰国の挨拶の中で「私はまたこの席をかりて、朝鮮人民の解放の大業を助けた英雄的なソ連赤軍に心から感謝をささげます」と言っています。明らかに自分がここで演説できるのは、ソ連の力によるものだと認めています。
そして「日本帝国主義者は、朝鮮人民を無知と蒙昧のなかに陥れ、牛馬のようにこきつかうために植民地的奴隷教育政策を実施し、我が国の言葉と文字、我が民族の貴重な文化遺産をことごとく踏みにじり、民族意識を抹殺しようと狂奔しました」と、反日のデマゴーグを並べ立て、反日感情をあおりながら自分が政権の座につくことを承認させようとしたのです。
彼の演説内容は、金日成著作集の第1巻に入っていますし、インターネットで簡単に見ることができます。
(「金日成神話の始まり」/www.blog.onekoreanews.net)
北朝鮮の配給制度が崩壊している――暴発が一番怖い
彼が悪罵の限りを尽くして言っていた日本の統治は、半島の人たちを真の独立国家としてサポートするものだったのです。西欧の植民地支配は収奪を目的としたものだったのですが、日本の併合政策は半島も本土と同じような民生レベルにするために多くの日本人が汗を流し、多くの予算をつぎ込みました。というか、半島には収奪するようなものは何もなかったのです。土地も痩せて、道路はでこぼこで見るべき産業もない。そのため、日本はまず民生の立て直しに着手します。
日本はインフラ整備はもちろんのこと、各地に学校を建て、帝国大学まで建てています。北朝鮮に建設した水力発電は、今でも使われていると思います。人口も増えていますし、識字率も高まりました。その辺りのことには目をつむり、自分たちの感情優先で物事を判断し、意見を言っています。客観的なデータで確認して欲しいと思います。
最近になって韓国から多くの学者による共著で『反日種族主義』(文藝春秋、2019年)が刊行され、ようやく客観的なデータにもとづいた日本の統治について冷静に語られるようになり始めました。しかし、北朝鮮の場合は、建国の時点において2つの「ウソ」から始まっていますので、この国とはまともな付き合いはできないのではないかと思っています。
北朝鮮の経済力(GDP)は、東京都の練馬区程度ではないかと専門家は言っています(公式データの発表がない)。鉱物資源には恵まれていますので、それを掘って外国に売ることくらいで、まともな産業は育っていないだろう思われます。能力や才能がある人は当然いると思うのですが、兵器の開発や軍事産業に回してしまっているのではないかと思われます。
配給制度が崩壊し、自由市場もきちんと稼働していないだろうと言われています。首都平壌の各国の大使館は、業務を継続するのが困難なので、次から次へと閉鎖をしているような状態です。ロシアの大使は飛行機が飛ばないため、陸路で線路伝いにトロッコでロシアに帰国したそうです。食糧がかなり逼迫しているのではないかと言われていますが、人権の状況もかなり危機的ではないかと思われます。
このような体制が永く続くとは考えられません。やがては崩壊すると思いますが、その時に固く閉ざされた国境の向こうに明らかになった真の北朝鮮の国民の生活の様子が白日の下にさらされることになるでしょう。それらが明らかになるにつれ、世界は大いに驚くことになると思います。
読んでいただき、ありがとうございました。
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