「「米中開戦前夜」「トランプ政権『最後通告』」の1面の見出しにつられて、『夕刊フジ』を買ってきました」
「夕刊紙は表現がストレートなので分かりやすいから好きです。何と書いてありますか」
「自由主義vs共産主義『和解はもうない』とあります」
「「フジ」は事態の本質がよく分かっていると思います」
「『和解はもうない』と書かれているのでドキッとしているのですが、戦争という最悪事態はないでしょうね」
「お互いに引かない者同士なので、そういった心配は当然あります。ただ、そういうことが起きないように、情勢を見極めての行動が求められていると思います」
「日本には、どのような行動が求められているでしょうか」
「というか、今回のアメリカのポンペオ国務長官の演説について、日本政府としてどのように受け止めているかについて、記者会見を開いて発表すべきでしょうね」
「アメリカが何か言って、それで終わってしまったという感じですよね。今日は何もそれに関したニュースが流れていませんしね」
「今回のポンペオ国務長官の演説で重要なのは、中国を支配しているのが中国共産党で、そのトップの習近平が大元で指図しているということを公然と言ったことです」
「今までは、そういうことを言っていなかったのですね」
「今までは、常に「中国」と言っていました。まあ、多少は遠慮もあったと思います。ここに来て堪忍袋の緒が切れたということでしょう。はっきりと「中国共産党」と表現しています。日本にも、明確な意思表明を求めてくると思います」
「日本は仲介役が得意なんですけどね」
「仲介役は必要ない、というのが今回の決裂宣言の意義だと思います」
「ポンペオ氏の演説の意味が分かっていない人が多いのではないでしょうか?」
「多いと思います。新聞社でも分かっていないところがある位ですから……。これからは、今までのように曖昧な態度は許されない場面が増えると思います」
「ここからが本論です ↓」
ポンペオ国務長官の演説、その歴史的意義について
7月23日のポンペオ国務長官の演説は極めて重大な内容を含むものでした。
単なる中国批判ではなく、中国を習近平率いる中国共産党が乗っ取ったという認識のもと、アメリカはその勢力との全面対決に方針転換することを世界に向けて宣言し、世界の国々に協力を呼びかけた内容となっています。
なぜ、トランプ大統領ではなく、ポンペオ国務長官なのかという疑問をもつかもしれませんが、アメリカという国はかつてはマーシャルプランを実行したマーシャル国務長官、キッシンジャー大統領補佐官というように、ブレインの立場の者が前面に出て政策を発表、遂行したことがありましたので、その前例に倣ったと思われます。
後は、大統領の選挙戦が始まっているという事情を考慮したのかもしれません。選挙公約だと思われると困ると思ったのでしょう。一番困るのは、民主党の大統領候補者が正反対のことを言い始めた時です。アメリカ国内が混乱をし始めます。
つまり、選挙とは関係なく、アメリカの大きな方針転換であることを世界に伝える必要があったのです。
ポンペオ国務長官の演説は時間にして25分という長いものでした。
全国紙の中で最も詳しく伝えたのは『読売』です。演説の最後を紹介します――「今こそ有志国で、新しい民主主義国の同盟を結成する時だ。自由世界が変わらなければ、中国共産党が確実に我々を変える。……中国共産党から我々の自由を守ることが時代の使命であり、米国はリードする立場にある。1967年にリチャード・ニクソンが『中国が変わるまで、世界は安全にならない』と記したことは正しかった。今、私たちはこの言葉に留意する必要がある。危機は明白だ。自由世界は対応しなければならない」(『読売』2020.7.25日付)。
ポンペオ氏は、西部カリフォルニア州のニクソン大統領記念図書館前で演説を行いました。ニクソン大統領と言えば、アメリカ大統領として初めて電撃的に中国を訪問した人です。そして毛沢東と握手をして米中共同宣言(1972年)を発表、アメリカは対中国政策を大きく変更したのです。ただ、握手をする笑顔の裏には、様々な葛藤があったことが今になって分かります。
ソ連との冷戦の最中の時期です。中ソ戦争の可能性もあったのです。そんなことになれば、ソ連が完勝して、ますます巨大な帝国としてアメリカと対峙するでしょう。さらに、ベトナム戦争を良いかたちで終結させたいという思いもあったのです。それらを総合的に考えての北京訪問だったのです。真の友好を求めての握手ではなく、「手詰まり」を打開するための定石外れの一手だったことは確かです。
定石外れを一番分かっていたのは、ニクソン大統領だったのかもしれません。中国に門戸を開いたことで「フランケンシュタインをつくってしまったのではないかと心配している」との発言をポンペオ氏が紹介しています。
そのニクソン大統領の心配が的中してしまったのです。そして、今度はその逆を行おうという決意を込めるため、演説の場所をニクソン大統領ゆかりの地に選んだのでしょう。今回の演説は、後になって歴史の結節点となった、と語り継がれるかもしれないほど重大な内容を含んだ演説だったのです。
ポンペオ氏の演説を新聞各紙は、どう報道したのか
各紙、今回のポンペオ氏の演説を報道していますが、大きく報道したところ、小さく報道したところ、様々ですが、その新聞社の社会の流れを視る目、中国をどのように見ているかを判断するには丁度よい材料です。
そんなことから、『産経』『日経』『読売』『朝日』『毎日』 (扱いの重い順番に並べてみました)の7月25日の朝刊を見比べてみることにしました。
今回の問題を各紙とも、1面で報じています。そして、1面のトップ扱いではなかったのが『毎日』と『読売』です。『毎日』のトップ記事は、「武漢なお厳戒」。『読売』のそれは「入試謝礼1億申告漏れ」です。不正入試事件の方が日本の社会にとって重要という判断なのでしょう。というか、『読売』は中国との関係を考えたのかもしれません。中国と資本的に結びつきが強いと言われているのが『読売』なのです。
その他の全国紙は1面トップ扱いです。簡単に紹介します。
【産経】
「VS.共産中国米の決意」(1面) 「尖閣調査義務化へ議連」(1面)
「ファーウェイ排除日本に勝機」(2面) 「米国務長官の演説要旨」(5面)
【日経】
「米、中国共産党を標的」(1面) 「米国務長官の演説要旨」(4面)
【朝日】
「中国が報復 米公館閉鎖要求」(1面) 「対中関与政策決別を宣言」(1面)
【読売】
「米、対中包囲網を提唱」(1面) 「米、共産党体制に矛先」(3面全面)
中国と中国共産党(政府)を使い分ける必要があります。中国と言った場合は、中国政府と中国に住んでいる人々を指します。ただ、一党独裁国家で、しかも選挙権が与えられていない状況下では、中国という曖昧模糊とした表現は避けるべきだと思います。
ポンペオ国務長官の演説は、その使い分けがなされていました。新聞社によっては、使い分けをしているところ、相も変わらず中国と表記しているところ、今回は見事に分かれています。
中国に関する記事は、これからいろいろ出てくると思います。そのような観点から時には見て下さい。
読んで頂きありがとうございました。
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