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日本において子供の貧困率が高まっている / 高等教育の無償化よりも初等、中等教育の充実に教育費を使うべし

「恵まれない子供たちという言葉を聞いた時、その子供たちの服装、表情、顔立ちを今、頭の中に思い浮かべてみて下さい」

女性

「(しばらく、目をつむって) 思い浮かべました」

「何歳くらいの子供たちが何人位いますか?」

女性

「4、5才から8、9才ですね。キャンプ場みたいな所で4、5人が大人に混じっています。遊んでいる子もいれば、家のお手伝いをしている子もいます」

「そこは日本ですか?」

女性

「日本ではなく、アフリカ、あるいは中東地域というイメージです」

「あなた以外の人に、今の質問をしても、多分同じような答えが返ってくるのではないかと思います。日本の子供たちを思い浮かべる人がいるでしょうか?」

女性

「それは無いと思います」

「子供の貧困率という言葉を聞いたことがありますか?」

女性

「いえ、初めて聞きました」

「子供の貧困に社会が注目し始めたのはここ10年くらいなので、ある意味で無理もないかもしれません。厚生労働省が統計を取り始めたのが、2009年です」

女性

「多くの人が、日本は今や貧困という言葉は関係ないと思っているのではないでしょうか?」

「そうかもしれませんね。ただ、日本の子供の貧困率は、先進国クラブと言われているOECD加盟国の中で比較すると高い部類に属していて、結構深刻な状況にあります。日本の子供の貧困率は14%、7人に1人が該当しています」

女性

「そうなんですか! 余りそういったことを、マスコミは話題にしませんよね」

「マスコミは、国民が飛びつきそうなテーマを追い求める傾向が強く、こういう地味なテーマを追いかけたがらないのです」

女性

「それは、どのようにして算出したのですか?」

「国民を可処分所得の順に並べて、その真ん中の人の半分以下しか所得がない状態を相対的貧困と呼び、その階層に入っている子供たちの率を出したのです」

女性

「およその目安として、大体いくら位の所得ですか?」

「親子2人世帯の場合は月額およそ14万円以下(公的給付含む)の所得が規準となります」

女性

「着て、食べて、ぎりぎりという感じですね」

「NPO法人を立ち上げて支援している団体、そういった活動にボランティア的に参加している個人もいるのですが、本来は政治で解決する問題です」

女性

「そうですよね。ここからが本論です ↓」

   表面に表れにくい相対的貧困 

相対的貧困というのは、あくまでも比較をした上での「貧困」という定義なので、全く収入がなく衣食住に困っているという絶対的貧困とは違います。ただ、表面的には、学校に通い他の級友たちと普通に過ごすという生活をしていますので、貧困とは無縁のような感じを受けます。

ただ、そういった子供たちの中には、虐待によって親元から通えていない子供たちもいます。虐待を受けている子供たちが280万人もいます。そこに、経済生活が厳しい状況に置かれた子供たちのことを考えると、社会として何らかの施策をする必要があるということです。

グラフを見ると、貧困率と子供の貧困率が年を追うごとに高くなっているのが分かります。これは社会の中で「格差」が広がっているからです。なお、子供とは、17才以下の者を指します。

貧困率の高い世帯は次のように分析されています(阿部彩『子どもの貧困Ⅱ』(岩波新書、2014年))。まず、「ひとり親世帯に属する子どもの貧困率が高く、母子世帯の貧困率が50%以上、父子世帯の貧困率が30%以上です。また、母子世帯の母親は8割以上が就労しており、他の先進国 に比べて就労率が高いのですが、半数が非正規就労であり、ワーキングプアが多い特徴があります。さらに、子どもが三人以上の世帯で貧困リスクが高く、親の学歴が中卒の場合には貧困率が半数近くになっています」


 

  貧困状態と学力との関係

日本財団が、子どもの貧困に関する調査研究や地域の子どもたちのもう一つの家である「第三の居場所」を全国に100カ所設置するなど、子どもたちの自立する力を育むための活動に献身的に取り組んでいます。

その日本財団が「家庭の経済格差と子どもの認知・非認知能力格差の関係分析」(2017年11月/以下「関係分析」とする)を発表しています。その中で、貧困と学力の関係について、ある程度の相関関係があることが分かりました。従来から体験的に感じていたことですが、それがデータとして実証された形となっています。

「貧困状態にあると、学力は低くなる傾向があり、特に小学校4年生(10歳)以降で学力が大きく低下する」(日本財団「関係分析」)ことが分かりました。そして「生活保護世帯の場合、小学校低学年の時点から、家の人への相談の可否、がんばっていることの有無、朝食を摂る習慣といった基礎的な項目が、非受給世帯に比べ低水準にある」ことも分かりました。

かつては苦学という言葉があり、家庭環境が例え悪くても、本人の才能と努力さえあれば勉強や学問は身に着くものといったことが言われていましたが、それはあくまでもかなり特殊な例であることが分かります。そして、そのような精神論だけで済ませてはいけないし、そういうことが無理な時代になったことは確かです。

 

 高等教育の無償化よりも、初等教育、中等教育を充実させるのが先

文明の進展とともに学習内容は当然難化します。入試問題も難化し、偏差値の高い学校は、学校の勉強だけではとても太刀打ちできないような問題を出してきます。その対策として進学塾に通ったり、家庭教師を雇ったりということができる家庭の子供はどうしても有利となります。さらに、家族ぐるみで子供の教育の面倒を見る態勢があり、応援してくれる。片や、お金もなく、殆ど誰も応援してくれず、孤独な戦いとなります。当然、差がつくのは当たり前です。そして、その差は年齢が上に行けば行くほど広がる傾向となります。格差社会が固定的に推移することになります

教育の無償化ということで、政府は高等教育の無償化を進めようとしています。データを見る限り、手当てするところはそこではなく、初等教育から中等教育です初等教育から中等教育の辺りで家庭環境による学力差が付き始めるので、そこを喰い止める必要があります。初等教育に教員を割り当てる数を増やす、1学級あたりの児童数を減らす、教員養成を考えて、優秀な教員が初等教育に配属できるようにする。そんなことにまず、教育費を使うべきでしょう。

読んでいただき、ありがとうございました。

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