「昨日、有楽町の映画館でウクライナ映画「ドンバス」を観ました」
「NHKのニュースで紹介していましたよね。いかがでしたか?」
「東大の小泉教授がやはりそのニュースの中で話をしていたように、2018年に制作されたフィクションなんですが、まるでノンフィクションのシーンの数々を見ている気持ちになりました。」
「映画を撮るきっかけとなったのは2014年親ロシア派のウクライナ東部ドンバス地方の占領だそうですね」
「映画の特徴は1場面がやたらに長いのです。約2時間の作品ですが、10場面もなかったと思います」
「それは、どういう効果を狙ったのですか?」
「多分、観客にノンフィクションのような錯覚を持たせたいのかなということだと思います。最後の結婚式の場面は、誓いの言葉、指輪の交換、来賓あいさつは勿論のこと、出席者たちが喜んで写真を撮り合うところまで、つまり最初から最後まで延々と流すんですよ。流石に、ちょっとしつこいなと思いましたけどね」
「後、気付いた点は、何かありますか?」
「親ロシア派の人間と思われしき人たちが多く出てくるのですが、みんな下品で乱暴な人たちとして登場させていました。最後の結婚式の花嫁も、花嫁姿が全く似合わないような人を登場させていました」
「カンヌ国際映画祭ある視点部門監督賞を受賞した作品だそうですよね」
「確かに、今まで見たことも無いような視点からの映画だったことは確かです。国内なのに別の論理で統治をする勢力がいる。日本人には、ちょっと想像できないような世界なので、そのことだけでも見る価値はあるかなと思います」
「私も機会があれば鑑賞したいと思います。ここからが本論です ↓」
プロパガンダが多く流される時代
映画「ドンバス」の中で、親ロシアの将校や指揮官がしきりにナチズムを唱えて、自分たちの統治の正当化を言っていました。「分断の時代」は、こういった自己都合の論理とさらにターゲットとして考えている国や地域に狙いを定めた分断のプロパガンダが意識的に多く流されることになります。
何故なのか。一つは、自分たちの支配や統治を正当化するためです。二つ目は、相手が内部分裂するような動きが出れば、攻撃する側に有利に働くからです。そして、逆に独裁国家は自己の支配を正当化するためのプロパガンダを国内に向けて絶えず発信します。
今後は、このような動きがさらに活発化してくると思われます。既存の政党や団体を通じて流される可能性もあります。和の国に住む日本人が最も苦手な分野だと思われますが、有権者の一人ひとりに政治的リテラシーが求められる時代となりました。
(「ダイヤモンド・オンライン」)
独裁国家、独裁政党につきもののプロパガンダ
民主主義国家には言論表現の自由がありますので、プロパガンダを流しても余り効果はないのです。国民は多くある情報の一つに過ぎないと考えるからです。そして、アンチープロパガンダの情報も流れていますので、最終的に国民が自分の頭を使って判断するということになるからです。
ウクライナ侵攻もあって、ここ最近はロシアの国営放送をニュースでよく紹介しています。まさに、プロパガンダの見本のような放送です。ウクライナからの情報も流されますので、日本では客観的な立ち位置から判断できますが、ロシア国営放送だけしか聞いていなければ、誤った判断や考え方が形成されていくこともあるでしょう。
プロパガンダは自国の統治にとって都合が良いものが流されます。時には、歴史の書き換えも平気で行われます。
これは英国フィナンシャル・タイムズの情報を「日経」が紹介した記事ですが、例えば、香港の中学と高校に今年の4月に新しく配られた教科書には、「香港が英国の植民地ではなく占領地だったと記している」そうです。香港は1841年のアヘン戦争によって、清国からイギリスに割譲されたものです。その返還が1997年に行われますが、そういった史実ではなく、香港の主権は常に中国にあり、たまたまアヘン戦争の結果、イギリスによって占領されていただけなのだということが書かれているとのことです。
これは「香港当局は中国の国家主義的な路線を尊重するよう学校に対する圧力を強めている」(「日経」2022.6.21日付)結果だそうです。ただ、この程度は彼らにとって、何でもないことなのです。
(「strainer.jp」)
時代の流れを的確に読み込んで行動することが求められる
帝国データバンクが6月22日に配信した情報によると、日本企業のロシアからの撤退の動きが止まっているそうです。――「2022年2月時点でロシアへの進出が判明した国内上場企業168社のうち、6月19日までにロシア事業の停止や制限・撤退を発表・公開した企業は前月から3社増え、全体の4割に当たる74社が判明した。4月時点でゼロだったロシアからの完全撤退を表明した企業は、新たに1社判明した」。
そして、このデータを世界企業の動きと重ね合わせると、日本が極端に低いことが分かります(下の表を参照のこと)。ポーランド、フィンランド、イギリスの企業の撤退は約半分が撤退したのですが、日本はわずかに2.4%と極端に低く、G7の中では最低です。
この動きの鈍さの原因としては3つのことが考えられます。1つは、ロシアの侵攻が短期のものであり、比較的早くかつての通商関係に戻ることが出来るのではないかと読み間違えをしている企業があるのではないかと思っています。2つ目は、ロシアとの通商関係はエネルギーや原材料関係が多く、代替できにくいという事情があるのではないかと思います。政府関係のプロジェクトのサハリン2もそのうちの一つです。そして、最後の3つ目は、日本人のDNAにまで落とし込まれた「和」の精神です。相手の手を振り払って、ドライに撤退することを決断することが出来ない国民性があると思います。
政治的リテラシーを身に付け、時代の流れを的確に読み込んで行動することが国民一人ひとりに求められています。
(「日本経済新聞」)
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