「木曜日は連休のため、このブログは休ませて頂きました。ところで、連休はどうでしたか」
「NHKの朝ドラ『らんまん』の撮りためていたビデオを見ました。朝ドラ、見てますか?」
「いえ、見てません。朝の8時は通勤途中ですね」
「久しぶりに面白い朝ドラだと思って4月から観ています。今週で1区切りついて、主人公が東京暮らしをするところから始まるので、来週の東京編から見始めても面白いと思います」
「主人公はどういう人ですか?」
「舞台は明治初期の土佐です。造り酒屋の跡取り息子が主人公ですが、植物学こそ自分の生きる道と分かり、そちらの方に自分の情熱を傾けていくという話です」
「植物ですか。何か、地味なドラマのような気がしますけど」
「それが触れ込みだったので、私も最初は地味系ドラマかなと思ったのですが、主人公のキャラクターが面白いので、ずっと見るようになりました」
「主人公のモデルはいるのですか?」
「植物学者の牧野富太郎博士がモデルです。私もこのドラマが始まるまで知らなかったのですが、日本で植物分類学を打ち立てた人で、高知県には彼の名を冠した高知県立牧野植物園があるそうです」
「もう随分話が進んでいるのでしょ」
「ここからが本論かもしれません。彼は小学校中退ですからね。その彼が博士になるのですから、どういう人生だったのか、知りたいと思いませんか?」
「中退なんですか? 小学校の……?」
「テレビでその辺りは子役が演じていたのですが、先生の授業そっちのけで壁の植物の掛け図を夢中で写し、教師がお前のような者は学校に来んで良いと言われると、ハイ分かりましたと言って行かなくなってしまうのです」
「何かその辺りはエジソンに似ていますね。エジソンは発達障害だったので、学校に適応できなかったようですが……。彼も……ですか?」
「行動はそれっぽく描かれていますが、植物へのもの凄いこだわりが学問への道を切り拓いたのだと思います」
「何か面白そうかなと思い始めました。ここからが本論です ↓ 表紙は「練馬区立牧野記念庭園」の企画展案内ポスターです。現在開催中です」
「らんまん」のモデルは牧野富太郎氏
「らんまん」の主人公の名前は、槙野万太郎です。牧野富太郎氏がモデルにも関わらず、名前が違うのは、関係者がご存命なので、伝記ドラマではないという意味での配慮だと思っています。
司馬遼太郎氏がその人の伝記を書くためには、死後100年位経っていないと書けないというようなことを言っています。つまり、伝記を書いた後、関係者という人が名乗り出て、ここは違う、こういうことは言っていないということを言われたのでは困るし、対応できないからというようなことを講演で言っています。
牧野富太郎氏は1862年に生まれ、1957年に逝去されています。1948(昭和23)年には皇居で昭和天皇に植物学をご進講しています。
(「興陽館」)
幼くして天命を知る
ドラマはここから佳境に入っていくと思いますが、槙野万太郎の強さは自分は植物分類学をやるために生まれてきたということを幼くして知ったことです。もともと、植物に興味があり、その興味を学問の世界に誘導してくれたのが藩校の校長です。
時代は明治の時代になり、政府の方針により全国各地に小学校が作られます。万太郎も小学校に通いますが、彼の知的レベルと興味が全く合っていません。ここに通うことは自分にとって何の得にもならないと思い、積極的に不登校の道を選びます。現代もこういう状況の子どもがいるのではないかと思います。
実家が造り酒屋の蔵元であったことがラッキーだったと思います。両親は早くに亡くなってしまい、彼の祖母が彼の養育の面倒を見ていました。祖母はどうしても孫に甘くなります。言われるがままに、高価な本や顕微鏡を買い与えます。これも彼にプラスに働きます。学校に行かずに、好きな植物の研究を自分のペースで本を見て自由に出来たのです。
(「サライ.jp」)
自分のアイデンティティを確立し、人生を歩む
年頃になり、蔵元の当主として期待されていることが分かるようになると、自分のやりたい学問との狭間の中で悩みます。そんな時、出会った人から発せられた言葉が、彼の生き方を後押しします。自由民権運動の活動家からは自由な時代であることを教えてもらい、ジョン万次郎からは後悔することのない人生を送れとのメッセージをもらいます。
人は出会うべき人に出会うと言います。ただ、言葉は消えていくものなので、その時に上手く言葉を拾えるかどうかは、その人の感性と真剣さが絡んでくると思っています。
そして祖母の言葉――「一つを選択するということは、一つを捨てるということ」。祖母は別のことでそう言ったのですが、万太郎はそれを自分の生き方を後押しする言葉として捉えます。
今の時代は多くの誘惑物があります。2つどころではなく、自分がしたいことが3つも、4つも出てきてしまうという人もいるかもしれません。2兎追う者1兎も得ずという言葉がありますが、そもそも2つにさえ絞れない人もいるのではないかと思います。現代は青少年にとって余りに情報が多過ぎて、本当に必要な情報が分からなくなるような状況があります。「感性と真剣さ」があっても難しい時代だと思います。伯楽を組織的に育成することが求められています。
(「Creema」)
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