「1月9日(日)からNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が始まりましたね。見ましたか?」
「いえ、題名が堅苦しい感じがして、しかも1000年以上も昔のことでしょ。感覚が合わないかなって……」
「原作は三谷幸喜ですが、それを4人の演出家が現代風にアレンジしてくれているので、若い人や歴史にそれ程詳しくなくても、充分楽しめると思います。初回は頼朝、北条政子、北条義時といったカギを握る人物が出てきたのですが、表情豊かに役者さんたちが演じていたという印象をもちました」
「時代は鎌倉時代の前なので1100年代ですよね。頼朝が幕府を開いたのが、1192年ですものね」
「いい国作ろうと覚えたのでしょ。源平合戦で有名な平治の乱で源氏方が敗れ、嫡男の頼朝が伊豆に流されます。頼朝はまだ数え年14歳でした。父母と死に別れ、孤独な境遇に置かれます」
「平氏にあらずんば人にあらずと言われた頃ですよね」
「よくご存じで。平清盛が実権を握った時代です。ただ、平氏の権勢を快く思わない人たちが各地にいて、頼朝の弟の義経や木曾義仲、奥州藤原氏が繰り寄せられるように一つの糸としてまとまっていきます」
「ここから源氏の巻き返しが始まるのですよね」
「そうなんですが、昨日はテレビを見ながら、そこからふと今の世界の国際情勢を連想してしまったのです」
「えっ、どういうことですか?」
「平清盛が中国ね、まず。頼朝が日本、その頼朝を支えるのが北条家ですが、これがアメリカになります。一方、清盛は朝廷を味方につけようと画策しますが、それに応えたのが後白河法皇でロシア。そう考えると、何となく当てはまると思ってしまって」
「頼朝は挙兵するのですが、余り強くなかったのでしょ」
「とにかく一番の武功を上げたのは義経です。頼朝は最初の頃は、兵を挙げないと言っていたのです。やがて挙兵しますが、石橋山の闘いでは敗北しています」
「何か格好悪いですね」
「だから、今の日本と二重映しになるのです」
「そういう見方、楽しみ方もあるということですね。ここからが本論です ↓」
冷戦構造の延長で世界を見ていると、判断を誤る
平安時代の末期に源氏と平氏の勢力争い(保元、平治の乱)があり、平氏が覇権を握ります。2大勢力の片一方が敗れ、均衡が崩れれば今まで抑えられていた勢力が勃興してくるというのは、世の常です。それは舞台が日本であろうと、世界であろうと理屈は同じです。
米ソの冷戦構造が終わってから30年経ちます。冷戦が終結してパックスアメリカーナのもとでの一瞬の平和と安定を楽しみましたが、もうそれは泡沫(うたかた)の夢として消えかけようとしています。世界征服というとてつもない目標を掲げて中国さらにはロシアが新たな対立の極を形成しようとしているからです。米中対立時代と言う人がいますが、現実の事態はもっと流動的で複雑です。
(「中学歴史/マルタ会談と冷戦の終結/映像授業のTry IT」)
「台湾―尖閣ライン」が台湾・日本の生命線
中国の習近平主席は辛亥革命110周年記念大会(2021.10.9)で演説をして、台湾統一を公然と世界に向けて宣言をしました。これは単なる呼びかけではないことは、台湾の防空識別圏に記録的な数の中国軍機を送り込み、「国家の主権と領土保全を守るという中国国民の固い決意と確固たる意志、高い能力を誰1人として過小評価すべきではない」という強迫めいた言葉をその際に言ったことで分かります。
冬季オリンピックが終われば、秋には5年に1度の中国共産党大会があります。この大会を経て習政権は異例の3期目に入りますが、独裁の度合いはますます強くなっていくでしょう。だから、台湾の問題を対岸の火事と考えないで、日本防衛と一体のものであるという認識が必要です。地図で確認してもらえれば分かりますが、尖閣諸島と台湾は目と鼻の先だからです。中国の海警局の船が連日尖閣海域に出没しています。時には、領海侵犯もしています。「台湾―尖閣ライン」を防衛するために、実際的な防備を考える時なのです。
そういった現実的な危機にも関わらず、日本の政府は対岸の火事扱いにしたいみたいです。2021年4月に日米首脳会談がありましたが、その際の共同声明は「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と記されました。アメリカは「台湾海峡」ではなく「台湾」としたかったのですが、日本の押し込みによって海峡が加わったのです。どこの国の政府なのかと思うのですが、問題を一生懸命矮小化しようとしています。事態が大変な時ほど、オーバーに表現をするというのがセオリーです。
「台湾―尖閣ライン」という言葉を日米の共同宣言に入れることができたらということを考えなかったのでしょうか。石垣島の漁民は、尖閣への漁が出来なくて困っているのです。
(「Yahoo!ニュース-Yahoo!JAPAN」)
ロシアがキバを剥き始めた
ソ連が崩壊したのが1991年12月なので、あれから30年の月日が経ちますが、ロシアがプーチン政権のもと再び強権大国としての道を歩き始めようとしています。
ところで、最近とみに思うことは、民族のDNAというのは時代が変わってもそのまま受け継がれていくものだということです。今の中国が推し進める「一帯一路」は、古代の中華思想を現代にあわせて現実化するような世界征服計画です。彼らは、自分たちの価値観を優先して、総てを判断しようとします。人権とか権力分立といった価値観を一切認めません。日本はそういった言葉に弱いのとは対照的ですが、ある意味では見事なので、その1/10位を日本もたまには見習ったらどうかと思うことがあります。
一方のロシアですが、ソ連が崩壊して新生ロシアが誕生したものの、その約10年後にプーチンがその大統領に就任して以降、独裁色を強めてきました。このプーチンという男はかなりの曲者(くせもの)です。彼はソ連崩壊の頃は白タクの運転手をしていたそうですが、そういった経歴や、ロシア人にしては体格が貧弱といったコンプレックスもあるでしょう。こういう方との交渉は、用心に用心を重ねる必要があるのです。かつて安倍首相がプーチン大統領と人間的な信頼関係を築いたと言っていましたが、一筋縄でかかるような相手ではありません。手の内、心の内を簡単に見せるような人ではないことを見抜かなければダメでしょう。
(「北日本新聞」)
話が少し横道に逸れましたが、そのロシアの動向が2022年の国際情勢のカギを握ることになります。現在、ウクライナ国境付近にロシア軍が大集結して緊張状態となっています。この問題で昨年の12月7日、そしてつい先日の1月10日にバイデン大統領との電話会談をしていますが、両方とも内容的に物別れとなっています。その根底には、お互いの不信感があるからです。不信感があるうちは、何回話し合っても上手くいくはずがありません。
ロシアはこのままではウクライナがNATOに加盟して、完全にロシアに対して敵対する勢力になるだろうと思っていますし、アメリカはロシアがクリミア半島併合のようにウクライナ全土を併合してしまうだろうと考えています。
プーチン大統領としては、退く訳にはいかないし、かと言って前に進めば世界最強のアメリカ軍が立ちはだかり、経済制裁を喰らうことになるのは目に見えています。そんなことから、中国との関係強化は予想されたシナリオだったのかもしれません。ここにきて、急速にロシア、中国が接近しているのはお互いの領土がらみの利権で一致しているからです。今年は中ロ両国は2人3脚で行動し、それをインドが微妙な位置から見守るという状況になるでしょう。そして、日本は未だに立ち位置を決めていないという状況です。まさに、頼朝の状況と似ているのです。
(「毎日新聞」)
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