「今日はローカル線の問題を考えてみたいと思います」
「赤字ローカル線の廃止の動きが出ていますよね。一応基準が示されましたよね」
「国土交通省の有識者会議は原則として1日1000人に満たない路線については、今後の在り方を協議する組織を作って検討することになりました」
「検討と言っていますが、廃線のための口実を作っているように私には思えます」
「鋭いですね。そういう思惑が多分にあると思います」
「春に千葉の房総半島を走るいすみ鉄道に乗って、何か久しぶりに清々しい気分になったのです。単純に、「赤字」ということで廃線にする考えはどうかなと思います」
「いすみ鉄道は、前にNHKの朝のニュースで紹介していましたよね。あれを見て、いつか乗ってみたいなと思っています」
「鉄道に対する人々の愛着心みたいなものがありますよね。そういうものを自覚する鉄道の旅でもありました」
「そう言われれば不思議ですよね。「撮り鉄」という言葉はありますが、「撮りバス」とは言わないですからね」
「それは古いものへの敬愛から来ているのでしょうか?」
「その辺りは分かりませんが、今年は日本に鉄道が開通してから150年目の節目の年でもあります」
「そうなんですね。区切りの年に、廃線の協議団体が発足するのは皮肉ですよね」
「線を協議する訳ではありませんよ。気を付けて下さい」
「ゴメンナサイ。先入観でモノを言ってしまいました。鉄道フアンとしては、何とか叡智を出し合って、全国のローカル鉄道を遺して欲しいと思っています」
「ここからが本論です ↓ なお、表紙の写真は「東洋経済オンライン」提供のものです」
ローカル鉄道は地方文化という位置付けをすべし
輸送密度だけで廃線を決めるのは、愚の骨頂です。すべて収益主義で考えるのであるならば、ローカル鉄道は遅かれ早かれ廃線の運命が待っているということになります。
ローカル鉄道の中には、100年以上の歴史を刻んできた路線もあります。こうなってくると、その鉄道そのものが地域の「顔」であり、住民にとってはかけがえのない「足」であり、故郷を離れた人にとってみれば「想い出」です。
線路を敷いて列車を走らせているだけと言えばそれまでかもしれませんが、人々はそれ以上のものを鉄道から感じ取っているのです。100年以上存続した鉄道は、完全に文化的な遺産として国も含めて、それをいかにして遺すかを考える時代だと思います。
(「阪急交通社」)
根室本線の一部廃線の事情
根室本線を舞台に高倉健さん主演の映画「鉄道員(ぽっぽや)」が撮られました。終着駅の駅長を務める男、これが高倉健さんですが、彼を一人の少女が訪ねて来るところから映画はスタートします。
この根室線が2016年8月の台風10号による被害を受け、新得と富良野の区間、約80kmの区間が現在まで不通となっており、今年になってその復旧をあきらめたということです。従って、根室線は滝川―富良野間と新得―根室間に分かれ、新得と富良野の区間はバスによる輸送ということになるそうです。ただ、実は新得・富良野間の開通は1907(明治40)年です。開通から今年で115年の路線です。
今でこそ乗客は少ないのですが、「昭和の時代は富良野・新得間は特急列車や貨物列車などが多く行き交う“大動脈”だったのです」(「ほっとニュース北海道」2022年3月14日放送)。富良野市に住む元国鉄の機関士、近田靖久さん(79)の声を放送で紹介しています――「貨物列車や旅客列車が昼も夜も走り、夜は1時間に上下合わせて4本くらいは走っていた。富良野駅前には屋台も出て、夜でも活気があった」。
一度廃線にしたら元には戻りません。そして、廃線周辺の住民の中には、転居を考え始める人がいるでしょう。人口減がますます進行することになります。学校もそうですが、鉄道は文化財なので、それを存続させること自体に意義があるのです。採算重視の考え方ですべてを決めてしまう行政のやり方、それは結果として地域切り捨てになり、地域はますます疲弊していくことになります。
そうならないように様々な工夫と民間や行政の力を結集する必要があるのですが、そういった努力が足りないのではないかと思っています。
(「You Tube」)
台湾「阿里山鉄道」全線開通――日本の植民地時代の遺物
台湾から「阿里山鉄道」全線開通に向けて動いているというニュースが入ってきました。阿里山というのは、台湾中部の景勝地ですが、観光客に人気の山岳鉄道「阿里山森林鉄道」の全線開通事業が2023年末の完成を目指して進められているとのことです。
この「阿里山鉄道」は日本が統治をしていた時代の1906(明治39)年に切り出した木材を運搬するために敷設されたものです。阿里山はヒノキなど良質の木材資源が豊富で、ここから伐採された大木が明治神宮など、日本の神社や寺院の建築物として使われたのです。1914(大正3)年に標高約30mの嘉義駅から標高約2216mの阿里山駅までの約71 kmが開通します。
戦後になって台湾の農水省が主導して2020年に「阿里山全面復興計画」ほ立ち上げ、2015年の台風で崩落したトンネルの再建を進めると同時に、新車両を導入します。自然生態と林業、鉄道の歴史と文化を後世に遺すための国ぐるみの事業として位置付けているのです。フランスの世界遺産の関係団体が約4年前に視察に来た際には、「世界遺産の基準を満たしている」と絶賛したそうです。
北海道で今回廃線となる路線間には「かなやま湖」もあれば、狩勝峠があり、自然が豊かなところです。採算ということであれば、今はクラウドファンディングという方法もありますし、そもそも国と地元が協力して頑張って鉄道事業を継続することが出来なかったのか、残念です。文化庁、そして北海道選出の国会議員、道知事の中で、どなたも100年以上の歴史を刻んだ鉄道を文化遺産として遺すことを考えようとしなかったということでしょう。政治とは、「例外」をいかに万人に認めさせるかというのが重要な仕事としてあります。
「公式」をそのまま当てはめるのは、政治ではなく単なる官僚主義です。赤字だけど、廃線にしない方法を編み出すのが、政治力なのです。
(「You Tube」)
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