「IOCがロシアとベラルーシの選手の出場を認めましたよね。その2国が出場するなら、ウクライナはボイコットと言っているのですが、どう思われますか?」
「IOCの判断が問題だと思っています。オリンピックは国単位で参加するものなので、個人の能力と資格で参加する各競技の世界大会とは性格を異にするものです」
「それがよく分かっていないということですか?」
「分かっているはずです。その上での決定だと思います。いろいろな政治的な工作がなされているのだと思っていますけど……」
「ウクライナ侵攻がスポーツの世界に影を落としているということですね」
「実は、それはスポーツだけでなく、文学の世界にも及んでいます」
「ロシア文学というのは、それなりにネームバリューがありますけどね……」
「言論統制が厳しくなったため、ノーベル文学賞候補と目されてきた女性作家やホラー小説の第一人者と言われる人はロシアを離れましたね」
「ただ、ロシアは伝統的に圧政の国ですよね。今さらという感じがするのですが……」
「おっしゃる通りですが、今までも厳しい検閲をかいくぐって、少しずつでも作品として出されてきたのです」
「それがいよいよ締め付けが極度になってきたということですね。ウクライナの方はいかがですか?」
「こちらは、そういった障害はありません。問題なのは、例えば東部地方のようにロシア語を多く使っていた地域があり、そういった人たちに向けてロシア語で執筆活動をしていたウクライナ人もいるのです」
「活動がしづらくなったということですね」
「影響は例えば、日本の大学の語学選択において、ロシア語やロシア文学が敬遠されるという動きも出て来るでしょうね」
「いろんな方面に影響を与えているということですね。ここからが本論です ↓ なお表紙は「日本政府観光局」提供です」
ロシアの軍事的圧力に200年前から悩まされる
18世紀の終わり頃、ロシアが千島列島を占領しようとしているという情報が幕府にもたらされます。当時の老中の田沼意次は驚いて蝦夷地調査隊を派遣して、その結果「大日本恵登呂府(エトロフ)」の標柱が建てられます。
その後、ロシアのラクスマンやレザノフが日本に通商を求めますが、幕府側は「異国船打ち払い令」を出していたので拒否します。そんなこともあり、レザノフの部下が蝦夷で放火略奪事件を起こします。そのため、国後島でディアナ号の艦長のゴローニンを拿捕します(ゴローニン事件)。
幕府はその頃、間宮林蔵に樺太を調査させます。間宮海峡と後に名付けられますが、彼の調査によって樺太が島だということが分かります。ただ、その調査は、ロシアとの緊張関係の高まりによって行われたものだったのです。
以上のことは、高校日本史教科書(「山川日本史」)に少しオブラートに包むような書き方で紹介されています。
(「刀剣ワールド」)
幕末に対馬でロシアの蛮行事件が起きている
幕末にロシアの軍艦ポサドニック号が対馬に現れ、約6か月間居座り続けたという事件が起きます。「艦長のニコライ・ビリリョフは、船の修理を理由に資材を要求」さらに「上陸して勝手に兵舎や工場などを次々と建て」ただけではなく、「ロシア水兵は、家畜や食料を略奪したほか、対馬藩士や住民を拉致し、藩士一人を殺害するなど蛮行をはたらいた」(井上和彦「ロシア軍艦対馬占領事件の教訓」『産経』2023.2.20日付)のです。
この事件が解決できたのは、イギリス海軍のお陰です。イギリス艦2隻を対馬に向かわせ、威圧をしたためロシアは退去したのです。このことは教科書に書かれていません。ロシア側への配慮のためだと思われます。検定教科書による情報統制が行われてしまっています。本来なら、イギリスの恩義を忘れないためにも、書き遺しておくべきことです。ちなみに、地元には標識(下の写真)が建てられ事件が語り継がれています。
ところで、重要なのは、何故そのような事件を起こしたのかということです。井上氏はその5年前のクリミア戦争(1853-56年)での敗北が原因と言います。
(「対馬観光物産協会」)
ウクライナへの軍事ベクトルが極東地域に向かう可能性がある
クリミア戦争で敗北したため、黒海の覇権を握ることが出来なくなり、そこで目を付けたのが極東方面の進出だったのです。クリミア戦争と朝鮮半島、ロシアから見れば、大海に出るためには、どうしても必要な重要拠点なのです。
ロシアがクリミア半島に拘(こだわ)るのは、海洋進出ということを考えてのことです。2014年にクリミアを併合した上で更に、今回ウクライナに侵攻したのは何のためなのか。クリミア半島統治を安定的にすると同時に、人口減という問題を解決しようと思ったからです。
ウクライナ侵攻も1年以上が経ち、時折ロシアの劣勢が伝えられるようになりました。ロシアの当初の侵攻計画が失敗した場合、彼らの行動心理からすると極東方面に軍事の力を向けて来るかもしれません。極東は中国、北朝鮮という協力してくれそうな国があります。北朝鮮はミサイル開発、核開発を露骨にしていますが、ロシアからすると頼もしく見えるのかもしれません。
日本はウクライナ侵攻の行方を見つつ、防衛力を高めること、更には太平洋の国々と集団安全保障が出来る体制を作る必要があるのです。
(「山川&二宮ICTライブラリ」)
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