「まだお子さんは4年生なのに、もう中学入試のこと考えているのですか?」
「心づもり、金づもりが必要ですから、決して早くないと思います」
「お子さんは受験すると言っているのですか?」
「のんびり屋さんだから、相談しても、分からないと言いますよ。だから、こちらである程度決めてあげてと思っています」
「何か凄いですね。ママゴンぶりが」
「親が子供に遺して上げれるのは、教育と財産だけど、私のところにはそれ程財産がないので、せめて教育をと……。どんな時代になっても、生きていけると思いますので……」
「素直に、うんと言えない現実がありますね。今は学歴社会ではなくなってきていますからね」
「ただ、そうは言ってもしばらくは続くでしょ?」
「いや、私の感覚は、お子さんが社会に出る頃は、学歴は殆ど役に立たない社会になっていると思います」
「そうなんですか!」
「実力勝負の世界にますますなっていると思います」
「やっぱり、受験ですね」
「学校説明会に行ったのですか?」
「いえ、まだ……。どこかで時間を見つけてと思っています」
「漠然と見ないで、見るべきところを見る、問題意識をもって行くようにして下さい」
「ここからが本論です ↓」
トップがその学校の歴史を語り、理念を語っているか
トップというのは、通常校長がその役を担いますが、まれに理事長ということがあります。
これは武蔵高等学校中学校の杉山校長の自校の紹介です――「現代は先行き不透明な時代であり、ある出来事が即座に世界中に影響するグローバルな時代です。そうした世界を生き抜くには自らの頭で考え、判断し、仲間と協力して困難を乗り越えていく力が求められます。10代のうちに自ら調べ自ら考える力のエンジンを装着することが、その後の人生に大きな意味を持つと考えています。鉄道王・根津嘉一郎(初代)によって1922年に創立された本校は、……」(『日経』2020.10.28日付)。
今の時代をどう捉え、そのためにどのような教育を考えているかということを学校の伝統を踏まえて語っていることがよく分かります。あいさつに要する時間ですが、長ければ良いというものではありません。ただ、余りにも短いのは考えものです。15分から20分くらいのあいさつが適当ではないかと個人的には思います。
私立の場合は、必ず創立者がいるはずです。創立者が何のために、その学校を開設したのか、それがトップの口から語られれば、伝統を重んじ、理念を重んじている学校と判断して良いと思います。
組織というのは、トップの力量以上に成長することはありません。唯一例外は家庭ですが、それ以外の組織は、会社にしろ学校にしろ、不思議ですがトップの力量以上に大きく成長することはありません。そして、その校長が先頭に立って学校を引っ張っているかどうかが判断できるのが「朝礼」です。全校朝礼をどの位の頻度で行っているか、さりげなく質問して聞くと良いと思います。
トップのやる気はそういった「行動」で判断できます。「朝礼」を大切に考え、1週間に1回を守っている校長もいるのです。不思議なもので場の雰囲気というものがあります。多くの生徒が集まったところで、良い話ができれば子供たちにエネルギーを注入できます。1週間くらい子供たちに元気を与えることが出来ます。聞いている教員も感動するような話であれば、学校全体に共鳴効果があらわれ、1か月くらいもちます。仮に、同じような話を教室でしたとしても、効果はかなり違います。「場」の効果を知っている方がトップにいて、全体に必要な話が用意され、上手く子供たちの心に染み入るような話が出来るような学校であれば、大きな問題は起きないものなのです。それは、会社、家庭でも同じかもしれません。
施設見学会で何をチェックするか
学校説明会の際に、施設見学があると思います。立派な玄関ときれいなピロティ、体育館と講堂を見ただけで満足しないで、子供たちが多くの時間を過ごすのが教室なので、どういった設備が入っているかチェックをして下さい。教室のデジタル化がどの程度進んでいるかを見て下さい。トイレも清掃が行き届いているかを含めて必ずチェックして下さい。エアコンが入っているものの、中央ですべてを制御して、各教室でコントロールできないということもあります。ロッカーの大きさ、鍵の有無、1つの教室にいくつの机を入れているのか、照明の明るさ、部屋の掃除の具合など細かく見て下さい。細かいところに気配りがなされているということは、大元の考えがしっかりしているということだからです。
教室を見せないという学校があるかもしれません。そういう学校は、行かない方が良いでしょう。何かを隠しているということだからです。
細かい気配りができない学校は、人を育てることは出来ません。「不登校になってしまった時は、訪問していただけるのでしょうか? オンラインで授業なんかをフォローするような計画はありますか?」、「この学校には、そういう生徒はいないんでしょうね」など聞いてみましょう。
学校として組織的に対応しようとしているのか、あくまでも担任あるいは学年に任せているのか、そこだけを確認してみて下さい。
私立にもいじめ、あるいは不登校の問題が起きます。問題なのは、どのように考え、対処しているのか、そこが重要です。
説明会の場で聞きにくい場合は、施設見学の時に、さりげなく案内の教員に聞いてみます。「入学して、もしいじめを受けたということがあれば、どうすれば良いのですか?」「入学したものの、不登校になってしまったら、何かフォローをしていただけるのでしょうか?」。怪訝な顔をされるかもしれませんが、怒られることはありませんので遠慮なく聞いてみましょう。その時の返事や対応で学校の内部事情が垣間見られたりします。
カリキュラムと授業について
学校設定教科といって、学校の考えで学習指導要領で定められている教科以外に、教育上の必要から設定できる教科があります。 中学、高校ともに設定できます。『学校案内』のパンフレットに載せたりしますが、もしない場合は質問してみて下さい。学校設定教科にその学校の考え方が出ますので、あるかないか、あるならば科目の名称を聞きましょう。
教科書の扱い方、一応買わせるけれど、自主教材を作ってそれを中心に授業をする学校もあります。進度も先取りをとりいれているかどうか、クラス編成の方針など、学年の途中から選抜クラスを設ける学校もあります。
授業アンケートとか、授業評価をしているかどうかを聞いてみて下さい。行っている場合は、どの位の頻度で、それをどのように授業改善に使っているかなど、聞いてみて下さい。
特別活動と部活動
特別活動と部活動を、それぞれどのような活動として捉えているのか、確認しましょう。教育活動なのか、自主活動なのかということです。両方とも教育活動。特別活動(学校行事)は教育活動だが、部活動は自主活動。両方とも自主活動、など様々だと思います。そこに学校の考え方が表れますので、是非確認するようにして下さい。そして、学校として特に力を入れている学校行事、ユニークな部活動があるかどうか、聞いてみて下さい。
また、学校側が親をどのように考えているのか、そこもできれば聞きましょう。大いに関わって欲しいから、出来るだけ関わって欲しくないまで、学校によって様々な考え方をもっています。その辺りも確認した方が良いと思います。
以上、私立学校を選ぶ場合のチェックポイントについて書きました。偏差値だけで決める方もいますが、これからの時代は人間力勝負です。その子の能力をどのように見定め、どのように伸ばせば良いか、それは親と子、そこに学校が関わるという捉え方が良いと思います。いろいろ検討した結果、地元の公立学校が良かったということもあるでしょう。くれぐれも、偏差値の高い学校に入れて安心なので、後はお任せというふうに考えないで欲しいと思います。
読んでいただき、ありがとうございました。
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