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少子化問題の解決の筋道を明らかにする / 国は競争原理を導入して「麒麟」の自治体を育てよ

女性

「また、少子化問題を扱うのですか? 3日連続ですよ」

「私が勘違いしていたことを報告しつつ、新しく示された「大綱」に基づいて話をし直そうと思ったのです」

女性

「新しく示された「大綱」というのは?」

「つい先月の29日に『第4次少子化社会対策大綱』を閣議決定していたことを知らなかったのです。だから、かつて出された「大綱」をもとに、昨日のブログを書いてしまったのです」

女性

「まあ、それはそれで、その時に出された「大綱」についての意見ということでいいじゃあないですか。ところで、今回の「大綱」のことを何で知ったのですか?」

「『八重山日報』の「社説」(2020.6.5日付)ですね。そこで取り上げられていたので、分かったのです」

女性

「それから、改めて読んでみたということですね。いかがでしたか。評価できる点、足りない点など、もしあればお願いします」

「まず、私は知らなかったのですが、今回は案を提示してから1か月間、パブリックコメントを募集していたみたいですね」

女性

「へえ、ある意味、画期的ですね」

「あと、内容ですが、従来よりも2つ進歩しています。1つは、結婚と教育を視野に入れて考えていこうとしている点、2つ目は、地域と企業にも協力を呼びかけている点です」

女性

「子育て環境さえ整えれば子供が増える訳ではない、といつもおっしゃっていましたからね」

「今までが極めて単眼的だったのですが、複眼的になった点は評価できます」

女性

「少子化は難しい方程式を解くが如くに解決しなければ駄目とおっしゃっていましたが、その点はどうですか?」

「難しい方程式だという認識はできたみたいですね。ただ、そこで止まっています」

女性

「ということは、……」

「お先真っ暗とは言いませんが、明るくないという表現があてはまると思います。書いている人も、多分確信をもてないまま総花的に書いてしまっている感じがします」

女性

「パブリックコメントで多くの方の意見を募ったのですよね」

「パブリックコメントで集まった意見を集約すれば、良い意見になる訳ではありません。主体側が、ある程度の素案なり方向性をもっていて、その上で意見を集約しないと、キングキドラになります」

女性

「キングキドラというのは、頭が多くある伝説の怪獣ですか?」

「そうです。このままでは、収拾がつかなくなると思っています」

女性

「ここからが本論です ↓」




 3つの要素を有機的に繋がなければ、一つのかたちにならない

先日のブログ(6/9日)で、少子化対策に必要な3つの視点ということを言いました一つは、結婚するまでの環境づくり。2つ目が地域再生。3つ目が子育て環境の充実。今までのものは、3つ目しか言っていなかったのですが、今回の「大綱」は一応すべて何らかのかたちで触れられています。その点では評価できます。論文の試験であれば、これで合格ですが、政策というのはこれを有機的に繋げる必要があります

例えて言えば、材料は出揃ったのです。ところが、どういう家にするのか、ビルにするのかマンションにするのか、それとも一戸建てなのか、内装も含めて、設計図を書く人を決めて、現場監督を決める必要があります。総責任者は総理大臣ということは分かりました。ただ、まさか安倍総理を現場監督にする訳にはいかないでしょう。責任をもって、全体のプロジェクトを動かす人が必要です。それを決める必要があるのではないかと思います。

 ヨーロッパの福祉国家をモデルにしながら、少子化対策を考えている

ヨーロッパの福祉国家と日本を比較して、どこが足りないかを見るという手法を使うというのが、明治以来の日本人の一つの「癖」のようなものです。そろそろ、もうそういう「癖」を直しませんか―――「あわせて大事なのは、家事・育児を夫婦ともに担うことだ。女性に負担が偏ったままでは、両立は難しい。日本は先進国のなかで飛び抜けて、男女の分担格差が大きい国だ。新しい働き方とともに新しい暮らし方を定着させたい」(『日経』2020.6.10)。

ヨーロッパと日本は、文化も歴史も違います。単純に比較して、批判することに意味はありません。長年の歴史の中でそうなったものは、一朝一夕で変わるものではありません。それをヨーロッパに合わせて変えるのではなく、違っていることを前提にして具体的提案を早急に出す必要があるのです

ただ、ヨーロッパの国々も軒並み2.0を割っています。OECD主要加盟国で2.0を超える国は、イスラエル、メキシコ、トルコくらいのものです。仮に、日本がヨーロッパ型の男女同権社会になったからといって、出生率が上がる保障は全くありませんし、両者の間には何の因果関係もないと思います。現に、日本の戦前は男尊女卑の時代でしたが、明治以降の人口は右肩上がりです。

アフリカの多産の国を紹介します。ニジュール、アンゴラ、エチオピア、ソマリアはいずれも合計出生率が7.0以上(1998年統計)です。これらの国は、アフリカで最高の出生率です。どうしてこんなに高いのか、家族労働力確保のため多産を美徳とする伝統や文化、早婚と一夫多妻制のためと考えられています。ニジュールは初婚年齢の平均が15歳、理想の子供数が8人とのことです。男女平等と子供の数は関係ないことが分かると思います。このように、世界には、それぞれの国の考え方、伝統、文化があるのです。他の国の猿真似をしたり、比較をして論じても余り意味がないのです

解決するためには、自分の国の歴史と文化をじっと見つめる努力をするしかないのです。答えは、他国の中にはありません。自分の国の中にあるのです

実は、OECD加盟国の中でトップの出生率を誇る国はイスラエルの「3.13」です。そのイスラエルのシロニー教授は「日本人は歴史と伝統へもう少し敬意をはらったらどうですか」と言っているのです(大隅洋『日本人のためのイスラエル入門』ちくま新書.2020年/212ページ)。


 「地域創生」を中心的柱にして、特色ある街づくりをする

「大綱」には、「地域」と「地方」の用語についての混乱があります。「地方」というのは「中央」の対抗概念で、田舎という意味がそこにあり、多少差別的な意識もそこに含まれています「地域」というのは、空間を表すイデオロギー的にも無色透明な概念です

東京、大阪を「地方」とは言いません。ただ、東京の出生率は1.15とかなり低く、立て直しをしなければいけないレベルです。政府は「地方創生」と言っていますが、「地域創生」が良いと思います。東京も地域創生を考える必要があるからです。

明治維新から現在まで約150年経過しています。しかし、封建の時代はそれよりはるかに長い歴史があります。仮に鎌倉時代から考えると、700年位の歴史があります。日本人は国で考えるより、邦(くに)で過ごした年月の方がはるかに長いのです。邦人とか、今でも「あなたの邦(くに)はどこですか」とか、「お里が知れる」という言葉を使います。郷土出身力士を応援したり、地元のプロ野球球団をわが事として応援するのは、そういった意識が日本人の心の中にあるからです

本気で少子化対策をするつもりならば、地方分権を推し進めることです教育の地方分権も進め、競争原理を導入することです。ほんの少し前まで「9月入学」が話題になっていましたが、全国という発想ではなく、例えばある県のある市だけ、「9月入学」を採用するのでも良いのです。アメリカは州ごとに教科書も教育課程も違います。州によっては850ページの教科書(「世界史」/貸与)を使ったりすることもあります。ある県では英語を重点、ある県ではプログラミング、ある市では演劇でもいいのです。それぞれ特色ある地域づくりを企業と国の支援のもとに行うようにするのです。

伝統と文化の多くは地域に根付いています。伝統と文化の掘り起しと定着、独自の教育創造を地域を中心に展開させるのです。地域が活性化すれば、人間も活気付きます。人の結びつきが増え、縁も自然に増えていきます。そうなれば、後は自然の摂理として子供が増えるものなのです。沖縄県が出生率が高いのは、昨日のブログで紹介した通りです。地域文化が根付いて、地域の中心に学校が位置付いているため、人間の結びつきも他地域に比べれば強いと思います。




「スーパーシティ法」がつい先日成立しました。「スーパーシティ」というのは、簡単に言えば高度情報都市です。すでに56の自治体からアイディアが寄せられているとのことです(「東京新聞」2020.6.9日付)が、単にハイテク面や利便性だけを盛り込んだ街をつくったとしても技術は必ずいつかは陳腐化します。伝統と文化という視点を入れて、今の少子化対策という観点からの総合的な街づくりを考えて欲しいと思っています。

そして、心配なのは「大綱」を読むと、旗振り役が国になっていることです。国が地方に対して今まで行ってきたことは、財政効率のモノサシで行政指導してきただけですが、それでは多分失敗するでしょう

三重県に朝日町という自治体があります。ここは、2010-15年の間に9.73%の人口増がありました。実はここもかつて、ご多分に漏れず近くの四日市市との合併話が持ち上がった自治体です。

合併に伴う国の財政支援の申し込み期限が2005年3月だったので、2003年に各町内での説明会を行い、住民投票を経て、結局合併をしない独自の道を選びました。町長が合併に反対の立場から、町民に今後のビジョンを示し、それに共感を寄せた人が多かったのだと思います。そんなこともあり、人口も増え、子供の数も増えています。「長い物には巻かれよ」と付和雷同的に合併するところは、ダメでしょう。その辺りの理屈は、企業の合併と同じです。つい最近、レナウンという有名ブランドの会社が破綻しました。安易に中国企業との連携に動いたからです。「コバンザメ」のような感覚ではダメなのです。

今年のNHK大河ドラマのタイトルにもなった「麒麟(きりん)」。古代中国から、聖人が現れると姿をあらわす霊獣とされてきた。日本でも古くから神社仏閣や美術品を彩り、いまは「麒麟のまち」を掲げる地域もある。その正体とは。
麒麟は瑞獣(めでたいけだもの)で、麕(くじか)の身体に牛の尾、馬の蹄(ひづめ)……音声は鐘呂(しょうりょ)(楽の音律)と一致し、行動は規矩(きはん)に合致……王者の政治が仁にかなえば必ず姿をあらわす。

 

このような「麒麟」の自治体が各地に出現することを期待したいと思いますし、国はそういった自治体が活躍できるように条件整備をする側にまわって欲しいと思います前面に出ようとすると、失敗するでしょう

そんな器量は今の政府にはありません。くれぐれもポジショニングを間違えないで欲しいと思っています

読んで頂きありがとうございました。

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