「最低賃金が1000円を超えましたね」
「あなたは正規なので、関係ないと思いますけど……」
「ウチの母がパートで働いているので、それで関心があるのです」
「今の岸田内閣は最低賃金を1000円台に引き上げることを目指していたので、とりあえずの目標は達成したことになります」
「地方によって最低賃金の金額が違うのは何故ですか?」
「中央で目安の金額を提示して、それに基づいて各都道府県の審議会で実際の金額を決めますので、ばらつきは当然でます」
「仮に決まってもすぐには適用されないのですね」
「働く側としてはすぐに反映して欲しいと思うかもしれませんが、経営者側からすれば支払いの準備をしなければなりません」
「だから、少しタイムラグがあるのですね。10月から新しい賃金が適用されると言っていました」
「1000円が今回の攻防ラインになりましたが、先進各国と比較すると低い部類ですし、最低賃金の伸び率も低いです」
「それは何故ですか?」
「最低賃金に関わる非正規の雇用を専ら担っているのが中小企業ですが、その時々の経済情勢に左右されがちで、賃金に転嫁する余裕がまだないところが多いと見られています」
「ここからが本論です ↓」
労働生産性が上がらないから賃金が上がらない
OECDという組織があります。所謂、「先進国クラブ」と言われている組織です。OECDが最低賃金制度をもつ30カ国のデータを集計しています。この3年間の最低賃金の実質伸び率を出しています。それによると、日本は0.7%増に対して、それ以外の29か国の伸び率の平均は2.3%です。名目も実質も「先進国クラブ」の中では、最低ラインであることが分かりました。
例えば、イギリスやフランスの最低賃金は円換算すると約1600円です。ちなみに、隣りの韓国はおよそ1000円です。
最低賃金も含めて、平均賃金は労働生産性の「反映」です。労働生産性が上がらなければ、競争力が上がらない、その結果賃金が上がらないという構図です。
(「読売新聞オンライン」)
日本の競争力は世界35位
スイスの国際経営開発研究所(IMD)は毎年「世界競争力ランキング」を発表しています。このランキングは1989年から始まっており、発表当初から4年間は日本は世界1位でした。それから30年、年々順位を落とし、ついに現在世界35位に陥落してしまいました。下のグラフは17位に陥落した時のものです。陥落した原因が当然あるのに、それを分析して対策も立てなかったため、それが現在の低ランキングを招いています。
ちなみにアジアで上位に入った国としては、6位の台湾、7位の香港です。中国は21位、韓国は28位で日本よりも上です。さらに、マレーシア(27位)、タイ(30位)、インドネシア(34位)よりも下です。
世界1位は2年連続でデンマーク、2位アイルランド、3位スイスです。上位の国は、いずれも教育に力を入れている国です。例えば、アイルランドは小学校から大学まで無料です。大学に入るためには統一試験を受けなければいけません。日本と違うのは、その試験の結果を生涯使うことができるということです。仮に、A大学を卒業して社会人として働き、35歳位になって新しい技術を身に付けるため、若い時の統一試験の結果を使ってB大学に入学できるということです。
日本もリスキング(学び直し)と言うならば、そういったシステムを考えるべきなのです。
(「経済産業研究所」)
競争力を高めるためには教育に金をかける
生産性を高めるためには成長戦略、経営戦略が欠かせない、ということが言われます。その成長戦略を土台から支えるのが教育です。教育戦略なくして成長戦略はありません。日本の順位低下の最大の原因は義務教育を含む教育全体の教育戦略が全くないからです。
例えば、デンマークもアイルランドと同様に小学校から大学まで無料な上に、大学院の博士課程に入ると、研究職とみなされ月10万円の支援金が支給されます。日本は奨学金という名の借金をして大学で勉強をしている学生が多いのと対照的です。日本では、博士課程の学生は国立、私立に余り関係なく約70万円の学費を払っています。これでは、研究者は育ちません。
義務教育では、少人数教育を基本にしています。デンマークは、法律で「1クラス28人以下」と決められ、一人ひとりの子供が大切にされるようなシステムになっています。日本は教育費を節約するために、時代遅れの学校統廃合を未だに続けています。
そんなこともあり、アイルランドはヨーロッパで一番出生率が高く、人口の40%が25歳以下と言う若者の国です。「異次元の少子化対策」と言ってカネをバラ撒いても少子化は解消しません。きちんとした教育戦略、つまり日本人を丁寧に育てるシステムを作れば自ずとと少子化は解消に向かっていくし、それが労働生産性を高めることに繋がります。
国の政策もスポーツと同じで長期のビジョンが必要です。絶えざるトレーニングと練習を重ねて初めて目標地点に行くことが出来ます。今の政府の政策を見ていると、単発で物事を考えている節があります。目標が難しければ難しい程、長期的戦略的な計画が必要です。社会は人間によって構成されますので、人間育成、つまり公教育を含めた育成プランが必要なのです。
(「日本貿易会」)
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