「「学校設定教科科目」というのがあることをご存じでしたか?」
「いえ、初めて聞きました。それは何ですか?」
「簡単に言うと、学習指導要領で定められている教科以外に、学校独自の判断で教科や科目を設定できるということです」
「そうなんですか! 知りませんでした。何でも良いんですか?」
「一応、教育上必要なものという条件付きですけどね。中学校では、「その他特に必要な教科」とあり、高校では「学校設定教科」あるいは「学校設定科目」ということで学校独自の判断で設定できます」
「それを使えば、学校の特色を出せますね」
「私立学校の中には、その規定を使って、フランス語とか中国語といった第二外国語の授業、教科の特別演習ということを行ったりしています」
「当然、制限はありますよね」
「規定上は20単位までです」
「20単位なら、かなりいろいろな教科や科目を設定できますね」
「そうですね、小学校はできないのですが、中学、高校は出来るのです」
「私の子供は私立に入れたいと思っているのですが、説明会で何が「学校設定教科科目」ですかと聞いてみたいと思います」
「そこに私学の考え方があらわれると思います。質問してみて下さい」
「ありません、と言われたらどうすれば良いですか?」
「そういう学校もあると思いますが、その時はその理由と、今後の予定を聞いてみたらいかがですか?」
「わかりました。ここからが本論です ↓」
独自科目の設定によって特色ある学校づくりを追求できる
兵庫県は2007年度から県立高校の独自科目として「日本の文化」を創設しています。当時は「日本史」が必修から外されるという状況を憂いて、日本の伝統芸能や文化史などの歴史教育を充実させるという目的から新設に踏み切ったのです。
学習指導要領の選択科目の中に「学校設定教科科目」というのがあり、それを使っています。県が導入を決めたのは2006年の2月です。そこから教材開発のために、学識経験者や高校校長や教員を委員として構想委員会を立ち上げ、1年間かけて内容を吟味、検討したのです。
県立明石北高校のホームページに、その授業風景が掲載されています。「茶道の体験」「昔のおもちゃ体験」「十二単体験」「華道の体験」の様子や生徒の感想も載せられています。
東京都は2007年度から奉仕体験活動(ボランティア活動)を必修科目にしています。2000年に政府の教育改革国民会議で提言されたものの、ボランティアを義務付けるのはおかしいという現場からの批判もあり、文科省は全国的導入をためらっていたのですが、東京都は2005年度に20校を研究校に指定し、それぞれの学校での成果と反省をもとに2007年度からすべての都立高校に導入しています。ただ、あくまでも学校の授業として行うということから、「ボランティア」とは言わずに、「奉仕」という科目名にしたのです。
具体的に何をしたのかということですが、インターネットで検索していると、その当時の都立多摩高校のホームページに「奉仕」の授業のことが掲載されていましたので紹介します。
学校の方で生徒の受け入れ先を探すところから始まったと思います。内訳は、高齢者施設、障害者施設、保育園、林業体験、クリーンアップ(美化活動)、地元産業、イベントなど9コース20カ所です。生徒が活動先を選択して、希望が多いところは調整してスタートという段取りです。夏休みを利用しての体験授業です。総合計時間は24時間です。1日フルの場合は3日間、半日4時間の場合は6日間となります。
9月になって学校で事後学習(3時間)を行います、1時間は感想を含めてのお礼状を書きます。その後グループに分かれて体験をお互い共有して、最後に代表者の発表という流れです。
そういった先行事例の成果を踏まえて、2016年度より「奉仕」に変えて「人間と社会」を正式科目としています。週当たり1単位時間の実施・年間 35 単位時間(1単位)以上ですが、その内訳は下の通りです。
○ 授業の構成:
・「演 習」による学習 16 単位時間
・「体験活動」による学習 19 単位時間
ボランティアについては、学校側が情報提供してくれたものに参加する、あるいは生徒自身が活動先を探してボランティアするのでも大丈夫とのことです。インターネットで検索すれば、様々なものがあることが分かります。一つのボランティアがだいたい4~5時間で、それを概ね4回こなせば単位時間はクリアできます
「学校設定教科科目」の内容づくりを学校で議論するのも面白い
どのような「学校設定教科科目」があるのかということですが、『ウィキペディア』によりますと、外国映画と文化、戯曲創作、プチ哲学、富士山学、茶文化、人形浄瑠璃などです。(文科省「教育課程部会(第14回)及び教育課程企画特別部会(第4回)配付資料」より)。今、話題の将棋、それから囲碁や創作ダンスも大丈夫だと思います。
そういった専門知識をもっている人にすべてをお願いする、あるいは外部から講師を招くなどいろいろな方法があると思います。
学校の状況によっては、どこかの大学と提携をして、最先端の科学の話や講義をしてもらうということができれば、それもまた面白いと思います。
理系の生徒には、体験や実験が大事です。首都圏には、そのような施設が多くあります。例えば、思いついたところで言いますと、相模原市立博物館、環境科学国際センター、高崎量子応用研究所 、鳥の博物館、さいたま水族館 などの施設があります。そういった施設見学を授業の時間の中に組み入れることもできると思います。
それとは逆に「マルチベーシック」ということで、高校に入ったものの基礎的なことが分かっていない生徒がいる場合は、「設定教科」を設けて誰か教員をあてた上で単位化すればお互い助かると思います。そういう設定もありだと思います。とにかく工夫次第だと思います。
学校の特色と一言で言いますが、それを見つけ、授業として組織して継続していく。子供たちにその意義を伝えて、その気にさせる、いろいろ大変だとは思います。
現場の教員のポランティア精神がないと、なかなか実現までいかないのです。
ただ、そういう科目が多くある学校というのは、裏方として多くの先生方が努力して動いているということだと思います。学校を選ぶ時、表面的なところだけ見て決める人も結構いるのですが、カリキュラムには、学校の考え方が反映します。無頓着な学校も実はあります。そんなところにも関心をもっていただければと思います。
読んでいただいて、ありがとうございました。
よろしければ、「ブログ村」のクリックをお願いします。 ↓