
「主要企業で春の労使交渉が始まりましたが、昨年から「雰囲気」が変わりました」

「「雰囲気」というのは、何ですか?」

「経営者側に賃上げをしようという「雰囲気」が出てきたということです」

「昨年は岸田首相が経済団体に賃上げを要請していましたよね。あのニュースを見て、時代が変わったなあと思いました」

「労働組合はいらないのではないかと思いませんでした?」

「私の会社にはそういう活動をしている人たちがいないので分かりませんが、特に組合がなくても不便は感じていません」

「それは社長さんが優秀だからだと思います」

「ウチの社長はよく現場を回る気さくな方です」

「本田宗一郎のような方ですね。ただ、そういったことを日本で一番最初に言った人は誰だか分かりますか?」

「えっ、誰ですか?」

「聖徳太子です。十七条憲法で言っています。確か十条だったと思いますが、すごいことを言っていますよ。トップが仮に確信を持ったことでも、そのまま進むのではなく、皆と話し合えと言っています」

「そのくらい慎重に事を運べと言いたかったのでしようか?」

「トップよりも組織を下から見ている人の方が、正しい判断を下せる可能性が高いからです。Understandと言うでしょ」

「なるほど。だから、私は会社のことが手に取るように分かるのですね。ここからが本論です ↓ 表紙写真は「毎日新聞」提供です」
対立型労働組合運動の起こり
労働組合運動の歴史は、18世紀後半から19世紀の産業革命期にまで遡ります。機械化によって生産性が飛躍的に向上した一方で、当時は労働者を保護する法律などない時代です。労働者たちは長時間労働や低賃金、劣悪な労働環境に苦しめられました。労働者たちは資本家から搾取されているのだから、団結して労働条件の改善を求める運動をする必要があるといった主張が出てきます。労働組合が結成され、賃上げや労働時間の短縮、安全な職場環境の確保といった要求が主な活動目的でした。
初期の労働運動に大きな影響を与えたのが、マルクス(1818-83)の社会主義思想です。マルクスは資本主義社会においては、労働者は資本家から搾取されると言い、労働者が団結して運動すること、さらには労働者階級による革命を提唱しました。この考え方は、多くの労働組合運動に理論的な基盤を提供し、労働者と資本家との対立構造を一層鮮明にしました。
日本においても、戦後の労働組合運動はこの対立構造を色濃く反映しました。具体的には、労働者の権利を主張し経営側と激しく対立する「総評(日本労働組合総評議会)」と、企業との協調を重視する「同盟(日本労働組合総同盟)」が存在しました。これにより、労働運動は二極化し、特に総評によるストライキや団体交渉は社会に大きな影響を与えました。しかし、この対立型労働組合運動はやがて限界を迎えることとなります。
(「POST」)
対立型労働組合運動終焉の時代
対立型労働組合運動が次第に衰退した背景には、日本特有の国家観が大きく関係しています。日本の企業文化は「家族主義的国家観」に根ざしており、企業と労働者が一体となって成長を目指す姿勢が重視されます。この価値観のもとでは、経営陣との対立よりも協調によって労働環境を改善する方が自然であり、従来の対立型労働組合運動は次第に支持を失っていきます。
さらに、労働組合の組織率が低下したことも終焉の一因です。1970年代には約35%だった組織率は、2020年代には16%程度まで減少しました。この背景には、終身雇用制度の崩壊や非正規雇用の増加があり、労働者の多様化に伴って従来の組合活動が共感を得にくくなったことが挙げられます。特に、賃上げ闘争に終始する活動は一部から「企業経営にとって害悪」と見なされ、労使関係の健全な発展を妨げる要因とされました。
また、グローバル化の進展によって企業間競争が激化し、単に労働条件の改善を求めるだけでは企業の競争力を維持できない状況が生まれました。下手をすると共倒れという事態も発生します。このような環境の変化に伴い、労働組合も新たな役割を模索する必要が生じ、対立ではなく協調することによって企業と共に成長を目指す方向へと舵を切るようになります。
(「トランストラクチャ」)
未来創造型組合活動の時代
現代における労働組合活動の目指す姿は従来の対立型ではなく、「未来創造型」だと思います。企業が持続的に発展するためには、経営陣だけでなく労働者も経営戦略に積極的に関与し、共に会社を支えるパートナーとしての役割を果たす必要があります。それにより、企業は競争力を高め、労働者自身もより良い労働環境を享受できると思われます。
具体的には、労働組合が経営陣と協力し、企業の戦略や方針が正しいかを相談し合う場が増えています。例えば、新商品の開発やシステムの改善に関する議論に労働者の声を反映させることで、現場の知見を活かした実用的なアイデアが生まれます。これにより、企業は市場ニーズに即した製品やサービスを提供でき、競争優位性を確立できます。
さらに、人材育成の面でも労働組合は重要な役割を果たします。どのようなスキルが求められるのか、どの分野で人材を強化すべきかといった情報を経営陣と共有し、労働者のキャリア形成を支援することで、企業と個人双方の成長を促進します。これにより、労働者は自身の能力を最大限に発揮できる環境を得ると同時に、企業はより高度な人材を確保できるのです。
このように、未来創造型の労働組合活動は、単に労働条件を改善するだけではなく、企業全体の発展に貢献する新しいパートナーシップの形を提示しています。労働者と企業が共に成長し続けるためには、この協力関係をさらに深化させ、激しく変化する社会に適応していくことが求められています。「連合」はそういった方向を組織として、打ち出す時期に来ていると思います。
(「ameblo.jp」)
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