「WBCが始まったので、少し寝不足気味です」
「昨日は、過去4勝4敗の韓国なので難敵かなと思いましたが、終わってみれば圧勝でしたね」
「負けたので、韓国では批判の嵐みたいですよ」
「勝つと凄い持ち上げるけど、負けるとボロくそに言われますからね。選手は大変でしょう」
「一人日系人が入っていますよね。ヌートバーですか。バッティングだけでなく、守備も走塁も凄いですね」
「実は、彼をチームメンバーにすることに対しては批判もあったのです。全員、日本人選手にすべきだという……」
「当然、あったでしょうね。それを栗山監督が押し切ったということですか」
「必ず、戦力になると言ったんですよね。選手たちは彼をどうやってチームの一員にするかということで話し合ったのでしょうね。日本語が喋れないので、普通にしていたら、必ず浮いてしまいます。そうすると、プレーにも影響が出てくる」
「それでニックネームをミドルネームの「たつじ」から取って、例のたっちゃんTシャツを作って、皆で着たのですね」
「そして、彼のペッパーミル・パフォーマンスをチーム全体で共有して、選手全員で戦う態勢づくりをしています。この辺りの発想は日本人的ですね」
「和の精神ですか?」
「日本人は宝は海の方からやって来ると思い込んでいる民族なので、外からの人には和の精神を発揮します」
「それが日本人の原型なんですね。ここからが本論です ↓ 表紙の写真は、TBS NEWS DIG です」
原型にすべてのことが凝縮されている
物事の本質を正しく見抜くためには、その原型を見ることです。全てそこに凝縮しています。枝葉抹消という言葉があります。どうでも良いことの意味ですが、根幹から分かれた先の部分をいくら見ても本質的なものは何も分からないということです。ただ、人は不思議なことにゆらゆら揺れる先の方に目移りをしがちなのです。
たまたま2人の話題が野球の話になっていますが、「枝葉抹消」は当日の試合展開です。根幹に関わる仕事をするのが監督です。誰をチームに入れるかから始まって、その後1つの戦うチームの態勢作りをしなければいけません。集めたメンバーは各球団で主軸を打っている人ばかりです。普通に打順を組んで発表すれば、何でこの打順なのかとか、何で控えなのかと思っている選手が当然出ます。
口には出しませんが、そういった気持ちがチーム内で渦のように巻き始めると最悪の結果となります。そうならないようにするのが監督の手腕ですが、取った方法は極めて日本的な和の方式でした。片や韓国チームには、韓国人メジャーリーガーの選手が2人入っています。大物はトミー・エドマンです。2021年のゴールドグラブ賞に輝き、今シーズン153試合に出場しています。彼ら2人をどのように韓国チームは迎え入れたのか、知りたいと思っています。
それはともかくとして、チーム作りが上手くいけば、後は当日選手がその能力を発揮するはずです。だから、試合開始の時には勝負はほぼついているということです。
(「読売新聞」)
韓国の原型は儒教―—国防の観点から採用される
日本の歴史の教科書には、本質的なことが何も書かれていません。ただ単に何年に何が起きたのかという歴史事象のみが延々と書き貫かれているだけです。これでは、いくら勉強しても、殆ど生きた知識として使えないと思っています。日本の外交下手の原因になっていると思っています。
韓国は日本の一番近い隣国です。不幸にして、現在2つの国に分かれてしまいましたが、もともと朝鮮民族は満州地方の騎馬民族ツングースが南下して、半島で農耕生活をするうちに定住したのです。言語の構造を見ると、最後に動詞が来るので、その点では日本語やモンゴル語と同じです。発音は別にして、日本語とは親類関係にあります。
朝鮮半島を最初に統一したのは新羅です。この新羅が最初に考えたのは、当時の大帝国である唐の存在です。弱い国は攻め滅ぼされてしまう時代です。何とか生き延びるためにはどうしたら良いのか。これを真っ先に考えたと思います。
新羅は中国的な儒教体制を採り入れて、中国の庇護の下、生き延びることを考えたのです。中国という国は、自分の周辺国に兵を出すというのが一つの「クセ」としてあります。これは古代からのものです。何なのかというと、威嚇の意味としてそういうことをします。威嚇をしておけば、恐れて攻めてくることはないだろうという読みのもとに行うのです。
その「クセ」は周辺国に動きがあった時に行います。最初が肝心と思うからです。新羅はそれを恐れたのです。そして、動きがある前に儒教体制を一早く採り入れ、中国と朝貢関係を結び、中国を宗主国とします。中国からすれば「愛(う)い奴だ」と思ったでしょう。中華思想のもと、家族関係を重視する統治の方式を徹底的に取り入れていきます。素早く情勢を読み取って機敏に動くのは、朝鮮の人たちの特徴です。日本は、大体これに振り回されます。今回の日韓外交も韓国が先導しています。
新羅末期の時代からは、名前までも李とか金という中国名を採り入れていきます。その後、李王朝が500年続きますが、中国化はさらに加速します。こういった事情を余り知らずに、戦前、国防ということだけを考えて、日本は朝鮮半島を併合します(1910年)。多面的にも、長期的なスパンでも考えていません。台湾と同じようなやり方での統治をします。知らないということは、恐いことだと思います。結局、それが今でも両国の間の負の要因として作用しているのです。
(「経済産業研究所」)
統治の原理が何もない日本
片や日本ですが、統治の原理というものが何もありません。「和」というのは「なごみ」とも読み、人の心情を表す言葉なので、統治の原理にはなりません。まさにファジーなのです。用語で説明すれば、家族主義的国家観です。家族というのは、勝手にまとまります。何もしなくても、家族一緒に長い期間衣食住を共にします。その延長線上に国家があるという考え方です。そして、家族を仕切っているのが時の政府であり、それら全体を見守っている存在が天皇という捉え方です。
この「何となく統治」の日本が、長い間一つの国として纏(まと)まることが出来たのは、四方が海という地理的条件によります。そして、日本はもともと中央集権国家ではなく、地方分権国家です。徳川260年の天下泰平の時代は、各藩の統治の上に幕府が乗っかって築き上げた成果です。その名残が、おらが邦(くに)という言葉や方言です。地方文化も今でも多く残っています。
多分、こういったことすら今の政治家は分かっていないと思います。教科書に何も書いていないからです。
日本の歴史を振り返ると、一つに纏めようとすると、大体ロクなことが起きていません。戦前の軍国主義は、その最たるものです。WBCの日本チームが行ったように、人の心情に訴えてまとまる国民性なのでしょう。問題なのは、そのファジーなやり方が21世紀でも通用するのかということです。これからの時代、周りの海は国民を纏めるために殆んど役に立ちません。
参考文献: 『司馬遼太郎が語る日本Ⅳ』(週刊朝日編集部、1998年)
(「#タウンワークマガジン」)
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