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 教科書に書かれている嘘シリーズ(7)――天皇機関説

「蟻(あり)の目」と「鷹の目」、2つの視点から立体的に物事を観ないと、正確に認識できず判断を誤る。

特に日本民族の弱点は、鷹の目をもっている人が少ないので、大局観をもって判断することが苦手な方が多い。

これは農耕民族のDNAからきているものであろう。

農耕民族は生きていくために作物の生育に神経を注いできたところがある。

無題

土が生きているか、乾燥していないか、肥料は足りているか、作物の生育が遅れていないか、天気はどうかなどである。

それら細かいことがクリアーされれば、生活は安泰である。

弥生の時代から何千年もそういった生活をしていれば、自ずと民族のDNAに「蟻の目」が刻み込まれる。

日本人はモノ作りが上手いと言われる。箸の文化なので手先が器用、そういう面も確かにある。

ただ、箸は中国や半島でも使っている。

手先が器用でも、視点が細かくなければ、精巧なものは作り出せない。

ほんの少しの工夫、精密なシステム作り、細かく差別化した製品開発、小さなアイディア。これらは日本人が得意とするところであろう。

「蟻の目」のDNAがなせる業である。

ただ、その反面、「鷹の目」がほとんど欠落している。

その辺りは狩猟民族と逆である。広い大地に獲物がどこにいるか。

無題

「鷹の目」を持たなければ生き抜くことはできないからだ。

彼らは生きていくために「蟻の目」はいらなかったので、そのようなDNAを兼ね備えた人は少ない。

世界を見ると農耕民族は少ない。

「蟻の目」は少数派で「鷹の目」は多数派である。

少数派はともすると、多数派が考えていることが常に主流で正しいと思いがちになる。

一種の思い込みが働くからである。

一つ目小僧と二つ目小僧の話がある。

二つ目小僧が一つ目小僧の世界に行って、二つ目は異常だと思い始め、片一方の目を自分でつぶしてしまったという話である。

無題

何に例えているかお分かりだと思うが、一つ目小僧が「鷹の目」をもった狩猟民族、二つ目小僧が「蟻の目」の農耕民族、つまり日本人のことである。

話を本題に移すが、日本の憲法学会はどうして日本のすばらしい歴史が育んだ統治のあり方を研究せずに、一つ目小僧が書いた西洋法学を手本として、それを日本の学生に語るのだろうか。

二つ目小僧の学生が、大学に行って一つ目小僧になってしまう。

ボタンの掛け違いという言葉があるが、その根源を探ると天皇機関説に行き当たった

この説を唱えたのは美濃部達吉である。

革新都政として知られる美濃部亮吉元都知事のお父さんである達吉は、東京帝国大学で長年憲法学を教え、当時の日本の憲法学を牽引する存在でもあった。

彼はドイツの公法学会で唱えられていた「国家法人説」をベースにして、天皇機関説という学説を自分の憲法に関する著作の中で唱えていた。

要するに、明治憲法下における天皇をどういう存在として理解するかということであるが、彼は「国家法人説」という一つ目小僧の世界の概念・用語を使って説明しようと試みたのである

天皇という存在が、あちらの世界にあるならば概念・用語を借りても良いが、そのような歴史的経験もないので無理であろう。

それを無理矢理もってきたので、そこに違和感を感じた貴族院議員から批判されたのである。

「国家法人説」というのは、国家を法人になぞらえた上で、天皇をその組織の中、つまり機関として位置付けようという考え方である

会社を例にとってみた場合、天皇を社長もしくは会長であると見立てるのであろう。

ただ、日本の天皇は権力者ではないので社長ではない。

かと言って会長かと言われると、会長は会社の組織の一員であろう。

ところが、天皇は組織の一員ではなく、特殊な位置付けなのである。

これが分からないと、トンチンカンな批判をすることになる。

例えば、朝日新聞の「天声人語」――「天皇制という、民主主義とはやや異質な仕組みを介して…世襲に由来する権威を何となくありがたがり、ときに、よりどころにする。

そんな姿勢を少しずつ変えていく時期が、来ているのではないか」(2019.4.25日付)。

「朝日」は天皇を会社に君臨する会長のようなものと捉えているのであろう。

会長が世襲ではおかしいという理屈なのだろうが、誤った認識に基づく批判である。

どういうことか。

その辺りを検証するために「王政復古の大号令」を見ることにする。

その冒頭に「徳川内府、従前御委任ノ大政返上、将軍職辞退……」とあり、委任していた政権が朝廷に返上されたことが分かる。

そしてその返上された政権を天皇自ら行使しようとしたのか、それとも別の誰かに委任したのか。

その見極めのために明治憲法を紐解くこととする。

鍵を握るのが、前文と55条である。

前文に「朕カ在廷(ざいてい)ノ大臣ハ朕カ為ニ此ノ憲法ヲ施行スルノ責(せめ)ニ任スへク…」という言葉と55条の「国務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス」を併せ読むと、徳川が返上した政権を今度は国務大臣に委任していることが分かる。

実際に「臣」というのは、古代からそういう役割を果たしてきた職制の名称である。

これを「治(し)らす・領(うしは)く」と言っているが、この考え方は『古事記』にある。

竹田恒泰著『現代語古事記』(学研/2016)が分かりやすいので紹介する――「『しらす』は高天原における統治の方法で、これは天皇の統治の方法とも同じです。

天皇の統治の『しらす』とは、天皇が広く国の事情をお聞きになり、ご存在あそばすことによって、自然と国民が統合され、国が統合されることを意味します。……『うしはく』とは、政治の権力を指します。

……古代においては摂政・関白、武家政治の時代は将軍、近現代では総理大臣が『うしはく』の地位にあるといえます」(134ページ)。

『古事記』に最高神の天照大神が登場するが、何の権力ももっていない存在として描かれている。

天皇もそのような存在としての捉え方なのである。

その辺りのことについて、憲法起草者の一人でもあった金子堅太郎(1853-1942)が「日本の歴史を講究し、我が国体に基きて憲法を解釈すれば天皇機関説の如き誤りに陥ることは決してない。然るに此の二箇条(1条と4条)を熟考せずに只外国の憲法論の理論に依って我が憲法を解釈しようとするから、そこに大きな誤りを生ずるのである」(「憲法制定の精神」)と述べている。

司馬遼太郎は改めて明治憲法を読み直して「日本の天皇は、皇帝ではなかった」(『「明治」という国家』日本放送出版協会./301ページ)ということを知り、その天皇という存在について「天皇の場所は哲学的な空になって」(前掲書)という文学者らしい粋(いき)な表現をしている。

先日、皇位継承の大嘗祭の儀式が行われた。

天皇には神事を司る役割がある、つまり神と人間社会を繋ぐ役割を負っている方ということになる。誰もが出来るようなことではない。

生前私の父が言っていた。

「天皇陛下の生活を普通の人は1か月、いや1週間できないと思う」と。

カルロス・ゴーンのような気ままな会長生活とは違うのである。

そのため、世襲によってその役割を受け継ぐ必要があるということである。

「しらす・うしはく」の考え方を敢えて分かりやすい言葉にするならば、「権威と権力の分離原則」ということになろうか。

福沢諭吉は『文明論之概略』の中で、権威を「至尊」、権力を「至強」という言葉を使いながら「至尊と至強と相合一して人民の身心を同時に犯したることあらば、とても今の日本はあるべからず」と、分離したことにより、日本という国が長く続いたと言っている。

ところで、一つ目小僧の世界の概念・用語を使って説明した方の流れはどうなったのだろうか。

実は、ボタンの掛け違いは戦後になっても続くことになる。

美濃部亮吉門下生であり、戦後の日本の憲法学を牽引したと評価されているのが宮澤俊義氏(1899~1976/元東京大学名誉教授)である。

手元に彼の著した『憲法』(有斐閣全書)がある。

この中に明治憲法について述べた箇所がある――「明治憲法は、絶対天皇制を多かれ少かれ制約することをねらう自由主義ないし民主主義の理念と、それに対抗して絶対天皇制をできるだけ保持することを狙う神権的絶対主義の理念とのあいだの実際的妥協として生まれた……」。「宮澤門下」、「東大憲法学」という言葉がある。彼の考えが憲法学会の中で受け継がれ、専門書や教科書を通じて広がることになる。「明治憲法は、主権は天皇にあるという原理に立脚していた」(前掲書)という言葉が今も一人歩きをして、専門書や教科書の中をはい回っている。

教科書を見れば相も変わらずウソが書かれている――「天皇機関説はそれまで明治憲法体制を支えてきたいわば正統学説であったが、現状打破をのぞむ陸軍・立憲政友会の一部・右翼・在郷軍人会などが全国的に激しい……」(『詳説日本史』山川出版)

正統学説であれば、金子堅太郎が批判などしないだろう

今の憲法学者の多くは、古来からの日本の統治のあり方を理解しようとしていないので、天皇機関説がどのような理由で、当時批判されたのかが分からないのではないかと思っている

このブログを読んだ人の中で法学部の学生さんがいたら、試しに憲法の先生に上記のことを質問されると良いと思う。

というのは、いろいろな基本書・専門書にあたったが、天皇機関説のこと、つまりどうしてこの説が批判されたのかということについて、まともに解説している本がないからである。「ホーン」と思ったでしょ。お後がよろしいようで。

読んでいただいてありがとうございました。

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