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「社会情動的スキル」を子供の時代にいかに伸ばすか ーー 現代の教育に欠けている視点

  • 2021年2月1日
  • 2021年2月1日
  • 教育論
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「分かっているようで、分からないのが人間だよね」

女性

「どうしたのですか? 急に?」

「つくづく考えると不思議だなと思ったのは、複雑な電化製品を購入すれば、普通は説明書を一生懸命読みますよね」

女性

「一生懸命かどうか分かりませんが、読むと思います」

「その複雑な電化製品よりも、はるかに複雑怪奇な「人間」について、世間的に学ぼうという風潮がないのは何故かなといつも思っているのです」

女性

「まあ、確かに経験則で対応する人が多いと思います」

「どうして、経験則で対応してしまうのですか?」

女性

「今日は、いつもと違って粘り強いですね。それは、………何でしょうねぇ?」

「結局、分からないんじゃあないですか」

女性

「多分、体系だったものが示されていないからではないかと思います」

「そうですか、単に、無責任体制が拡大しているだけではないかと思っています」

女性

「無責任体制ですか……。そんな大げさなものなのですか? 日本人特有の根拠レスの楽観論、事態を余り深刻にうけとめていない、こんなところだと思いますけど」

「この間、教育心理学の分野で様々な人間についての解明が進んでいますが、それを社会が受け留めるという兆し、雰囲気がないのです」

女性

「逆に、そういった学問成果を社会に流そうという努力はなされているのでしょうか?」

「どきっ、思わぬ反撃を喰らってしまったのですが、成果を還元するにおいての努力不足があるかもしれません」

女性

「お互い、コミュニケーションをとる必要があるということですね。ここからが本論です ↓」

 「社会情動的スキル」と「認知的スキル」

心理学用語は難しそうな顔をしていますが、意味的にはそれほどでもないというのが多くあります。この社会情動的スキルという言葉もその類だと思います。社会情動的スキルというのは、目標の達成、感情のコントロール、他者との協働、といった力を指しますOECD.2015)。

ただ、その3つを個別バラバラに捉えるのではなく、有機的に捉えるようにします。つまり、具体的な目標を定め、それに向かって節制努力することを考えさせるのです

OECDの研究では、社会情動的スキルについて2つの特徴が明らかになりました。1つは、社会情動的スキルは生涯を通じて発達させることができるということです。ただ、幼少期に強固な土台を築くことが重要なので、とにかく幼児期は褒めて育てるようにします虐待は問題外です。ただ、乳幼児期が大事なのですが、そこを過ぎてから取り組み始めても遅くはありません。そこが、人間のたくましいところだと思っています。

2つ目は、社会情動的スキルは認知的スキルを支えると同時に、認知的スキルに支えられてもいるということが分かってきています。認知的スキルというのは、要するに知的能力です。

 

 子どもの時期は、「社会情動的スキル」を伸ばすことを考える

かつて「少年よ大志を抱け」とクラーク博士が喝破しましたが、それは心理学的に全く正しいということです目標を出来る限り高く設定します。そして次に大事なことは、それを常に意識に上らせることです。一番いけないのは、目標を定めたのに、深く心の奥底にしまってしまい、やがて忘れてしまうことです。

忘れないように、それを文章に書いて残します。例えば、大リーグで活躍したイチロー選手ですが、彼は小学校の卒業論文で自分の夢ということで、大リーグで活躍したいという自身の希望を書いています。サッカーの岡田選手も同じです。スポーツ界で活躍している人の多くは、目標を具体的に定め、それを目に見えるかたちで残していますが、実はそれが重要なカギを握るのです。

    (イチロー選手の作文)

具体的に何かに書くことにより、目標を自分の意識に上らせるのです、そうすると、今度はそれを達成するために周りの協力を得ようとして、自分の感情を抑えようと努力をし始めます。何かのきっかけで、プラスのスパイラルが回り始めます。

かつて勤務校で女子テニス部を指導していたことがありますが、必ず毎年選手に「全国大会出場」という目標を紙に書いてもらい、それを部室に貼り出しました。創部まもない頃なので、入部する選手は中学から始めるような素人集団です。それでも構わず、目標は高い方がいいからと言って、半ば強制的に書かせたものです。19年間指導して、9回全国大会(団体戦)に出場できました。いろいろな要因が絡み合っていますが、人間は心の持ち方が大事であり、それを上手く自分の目標や向上心に繋げてあげることが大事なのです

 

 「社会情動的スキル」を学校教育の中でいかに伸ばすか

OECDは社会情動的スキルを「目標の達成」、「情動の抑制」、「他者との協働」の3つの要素で定義していることは、先に指摘した通りです。

「目標の達成」には、がんばる力、自己抑制、目標への情熱が含まれます。「情動の抑制」には、自尊心、楽観性、自信が含まれます。「他者との協働」には、社交性、敬意、思いやりが含まれます。

考えなければいけないことは、個人がもっているそういった素養をどのような場面で育てれば良いのかということです

「社会情動的」とあるように、家族といった小さな単位の中では育ちにくいスキルなのです。ただ、全く無理ではありませんが、少なくとも家族全員の参加と協力が必要です。例えば、子供がある目標を立て、それを家族全員が共有し、それに対して全員が協力態勢を組むことが出来れば可能です。

一番自然にそのようなスキルを身に付けさせることができるのは、学校教育の場面ではないかと思っています

学校行事、部活動、特別活動、地域での活動などの時間に、そういったスキルが向上するようなカリキュラムを組むということだと思います。その際に重要な視点は、児童・生徒が主体的に動く場面を考えてつくることです。そして、様々なことを体験させることだと思います。ボランティア活動も効果的だと思います。

これは少し古い情報かもしれませんが、沖縄県の県立北谷高校では総合の時間を使って、地元の保育園児との交流会をしたそうです読売新聞の記事(2006年3月7日付)を要約すると、高校1年生40人が10月から講義を受けたりゲームでの遊ばせ方を学んだ後、交流会に臨んだそうです。0歳児と4.5歳児の2クラスに分かれて、一人ひとりペアを組んで、一緒に遊んだり、食事や入浴の世話をしたりしたそうです。全部で5回の交流会を実施したとのことです

「社会情動的スキル」を高める上で、良い実践活動だと思います。保育園児たちは、優しいお兄さん、お姉さんだと分かれば頼ってきます。子供たちのその姿を見て、高校生たちは自己肯定感を得ることが出来ますし、自尊心、そして自信を持つこともできます。頼りにされたという、その小さな体験が彼らの心を大きくするのです

今の学校教育は、この「社会情動的スキル」の方に余り目を向けていません知的能力さえあればよい的な風潮もあります。それが不登校やいじめを増加させている遠因ともなっていると思っています。「社会情動的スキル」は、ある意味では、教育の原点なのかもしれません

読んでいただき、ありがとうございました。

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