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マルクスの『資本論』は賞味期限切れ / 人間の知的活動が価値を産み出す

「マルクスに対する忖度は一向に衰える気配がありません。アダム・スミス、ケインズ、リカード、最近ではフリードマンがいますが、彼らの著作が形を変えて出版されたという話は聞かないでしょ」

女性

「マルクスの場合は、いろいろなものが出ているということですね」

「私の手元にも3冊あります」

女性

「『資本論』を集めているのですか?」

「分析するために買ったり借りたりしたのですが、ちょっと紹介します。『高校生からわかる資本論』(2009)、『超訳資本論』(2014)、『ビギナース資本論』(2014)です」

女性

「前に、このブログで日本共産党が『資本論』の新版を出していることを言っていましたよね」

「正確に言うと、日本共産党お抱えの新日本出版社です。12分冊を2年がかりで出版する計画のようですね」

女性

「ただ、もう亡くなって何年経つのですか?」

「マルクスは1883年に亡くなっていますので、計算すると、138年ですか」

女性

「ということは、2年後にまた没後140年ということで、何かまたイベント、あるいは出版を考える人がいるかもしれませんね」

「そういう考えの人は、もう動いていると思いますが、ただ経済学の理論というのは、基本的には「対症療法」的に発展してきたのです」

女性

「対症療法というと、何か疾患があって、それに対しての対処の仕方という感じでしょうか?」

「そうですね、不況になったのでどうしようとか、自由貿易を行って問題が発生し、それに対応した形で経済理論が生み出されてきたのです」

女性

「前もって、考えないのですか?」

「『生き物』を扱う学問なので、対象となる経済が、前もってどのように動くか予測ができないというのが正確な言い方になると思います」

女性

「要するに、考えても無駄ということですね」

「そうですね、生き物はどう動くか予測がつきにくいので、常に後追いの学問となります。それが、政治学や教育学とは違う点なのですが、そのことを分かっていない学者もいます」

女性

「ここからが本論です ↓」

 「対症療法」の積み重ねが、経済学の歴史を作ってきた

経済学は「対症療法」的な学問にも関わらず、マルクスの経済学だけが今なお命脈を保っているのは何故なのかと言えば、中国共産党日本共産党の政治的な後押しがあるからでしょう。そして敢えて言えば、『資本論』は資本主義のシステムを問題視していましたので、従来の経済学とはアプローチの仕方が違っています。こんなところが現在もなお、命脈を保っている理由だと思います。

中国は今や世界第二位の経済大国です。その国を指導する共産党が2018年5月5日付人民日報の紙面で「人類の最も偉大な思想家に敬意を表する」と題した社説を掲載しています。前日の4日には、北京の人民大会堂で「マルクス生誕200周年記念大会」を開催し、習近平国家主席が演説をしています。ただ、中国の場合は、マルクスの学問的功績というよりも、彼の権威と習近平を繋ぎ合わせたいということだと思います。

そして、日本においては戦後しばらくの間、大学にマルクス経済学の学者が多かったという事情があります。冷戦終結の頃までは、経済学を勉強したいという大学生に対して、「マル経(マルクス経済学)か、近経(近代経済学)か」を聞いていたと言います。

日本共産党は特に不破氏が『資本論』にご執心なので、そういうこともあって新版『資本論』の出版を刊行したのだと思います

権威付けのために仮に出版したとしても、賞味期限が切れていることには変わりがありません経済学理論の宿命なのです。マルクスといえども、時代の波を乗り越えた経済理論を編み出すことは出来ません。

 富の源泉は商品ではなく、データや情報である

ところで、『資本論』と日本では翻訳されていますが、原題は「Das Kapital」です。「Das」は定冠詞で「Kapital」は英語の「Capital」と同じ、つまり「資本」ということです。資本というのは、お金に換算できる価値のことです。何が資本を産み出しているのか、そういった素朴な疑問から、この書は出発しています。

第一章は「商品」です。ミクロとマクロ、大きな流れを知るために最小単位のものを分析する。この手法は全く正しいと思います。広大な宇宙の研究に素粒子の研究が不可欠なのと同じ理屈です

ただ、すでにここに時代の限界性が露呈していますマルクスが考えた富の源泉は物質的な商品ですが、現代経済ではそれ以外にサービスやデータなど目に見えないものも富の源泉として考えられています。というか、後者の方が遥かに多くの富を産み出しています。

それは世界の大企業のトップ10の業種が何なのかを見れば、分かります。

企業のトップランキングですが、いろいろな指標があります。売上高、ブランド力というのもありますが、時価総額ランキングを見てみます。時価総額というのは、株価に発行株式数を掛けたものです。

【世界企業 時価総額ランキング】

 

1 アップル 6 フェイスブック
2 サウジアラムコ サウジ 7 テンセントHD 中国
3 マイクロソフト 8 テスラ
4 アマゾン 9 アリババ 中国
5 アルファベット 10 ハサウェイ

 

この中で、2位のサウジアラムコは一次産品の販売会社です。商品の製造・販売業は、8位のテスラだけです。このテスラは電気自動車製造販売会社として、時代の波に乗って急速に業績を伸ばしている会社です。

創業は2003年なので、まだわずか17年位しか経っていませんが、あっという間にトヨタを抜き去りましたその秘密はハード面ではなく、ソフト面に力を入れたことです。車を単なるモノと人を運ぶ機械と考えずに、動くオフイスというコンセプトでソフト面を充実させたのです。その考えに共感をした投資家たちが、テスラの株に投資したのです。試しに「テスラ株価」で検索してみて下さい。株価の急騰振りが分かると思います。トヨタはテスラの躍進ぶりを見て、今後はソフト面に力を入れると言っています。

テスラとトヨタの話に象徴されるように、現代は単に労働によって生産されたモノが価値を有するという考え方ではなく、知的な活動によって富が生まれると考えた方が合理的です。そして、その知的な活動は時間ではかることはできませんので、剰余労働という概念は成り立たなくなりますし、搾取という概念も成り立たなくなります。

 市場も時代の中で変化する

マルクスは資本家同士の間で激しい競争が行われ、勝ち残った企業が市場を独占するであろうと考えました。競争が激しいということは、労働者からの搾取も激しくなると考えましたので、資本主義が進展するほどに資本家と労働者との階級的矛盾が拡大するであろう、つまり革命が起きるであろうと考えたのです。

マルクスの時代は、市場が極めて固定的であったため、そのように考えたのですが、現在の市場は時代とともに大きく変化します。例えば、同じ自動車産業ですが、トヨタが想定していた市場とテスラが勝負した市場は違っています。アニメ市場というマルクスが考えもしなかった市場も生まれています。

知的な活動が富を産み出すので、それを上手く組織することができた者は、莫大な富を手に入れることが出来ます。トヨタの創業は1933年なので、今年で88年になります。わずか17年のテスラの会社の時価総額はトヨタのおよそ2倍です。マルクスの労働価値説では説明がつきません。

 人間の知的活動が価値を産み出す

人間の労働力が価値を産み出すのではなく、人間の知的活動が価値を産み出すのです。だから、それを上手くマネージメントすれば、あっという間に巨大企業に成長できるということを「世界企業 時価総額ランキング」を見て、改めて認識して欲しいと思います。ベスト10に入っている企業の殆どは、IT産業です。そして、富の源泉が知的活動にありますので、自身の知的能力に自信があれば、起業をするということです。そうすれば、資本家の仲間入りになることも出来ます。

労働者階級、資本家階級という言葉もやがては死語になるでしょう階級というのは、固定的な身分制度を意味しているからです

そして、経済理論は、哲学や教育学、政治学とは違って、時代を超えた理論を見出すことは基本的には無理なのです何回も言うようですが「経済は生き物」なので、賞味期限があるからです

変なノスタルジアを捨てて、現実の経済の流れを素直に読むことが大事だと思います

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