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英才教育を真剣に考える時代

 ベルギーのローラン・シモンズ君(9才)が世界最年少で大学を卒業する見込みとのこと。8才でオランダの名門大学に入学して、3年の教育課程を9か月で終えたとのことである。  このように飛びぬけた才能をもつ子供をギフテッドと呼ぶ。天から贈られた才能という意味での造語である。

  2019年8月28日にNHKクローズアップ現代「知られざる天才 ギフテッドの正体」というテーマで放映されたが、その中でギフテッド(IQ130以上が目安)が日本に250万人いるとのことであった(内容はインターネットで配信されている)。ただ、彼らの多くがその才能を発揮することなく、埋もれたままの実態があることが明らかになった。

   新生児は両親が持っていない突然変異の遺伝子を平均して約60個持って生まれてくることが最近になって分かってきた。そして、父親の年齢が高ければ高いほど、その個数が多くなる傾向があることまでは分かっているが、そのメカニズムの解明にまでは至っていない。日本には「トンビが鷹を生む」という諺があるが、遺伝子学的にそれが明らかになったということである。

   レオナルドダビンチ、アインシユタイン、ビルゲイツ、アリストテレス、スウェデンボルグといった人たちは、多分ギフテッドであっただろうと言われている。文化、文明を発達させるために、天が人間界にそのような天才たちを送り込んだのかもしれない。彼らは、周りの環境と理解の中で、その天分を人間界という土壌のもとで見事に華(はな)を咲かせたと言えよう。

    日本という国に目を転ずると、文化、芸能、芸術、スポーツの分野に優れている人として何人かの顔が浮かぶが、ギフテッドの人もいるのではないかと思う。であれば、科学、学問の世界でも若き鋭才が現れても良い気がする。ただ残念ながら、日本の文教政策には、そういう能力の秀でたものをどう見出して育て、どう生かすかという戦略が全くない。あくまでも偶然に頼っているだけである。

   ただ、日本の近代教育制度が成立した頃、つまり「学制」発布の頃(1872年)には「飛び級制度」があったのである。尋常小学校は下等小学(6~9才)と上等小学(10~13才)の8年間で、各学年は2つの級に分かれていて、半年ごとの進級試験に合格した者だけが上の級に進むことができた。そして、上の学年に進む度に「卒業証書」を発行していたようである。だから、小学校を卒業すると8枚の卒業証書が手元に残ったことになる。 不合格の者は原級留置となるが、逆に成績優秀な者は随時試験をして上の級、あるいは学年に進むことができた。夏目漱石は成績優秀のため、飛び級をした話は有名だが、本来8年かかって卒業するところを4年、あるいは5年5か月で修了した者もいたとのことである。

   学校は勉強だけではなく、人間関係を学ぶ場でもあるので、そのバランスをどう図って制度として組み立てるのかは難しいし課題があるが、AIの本格的導入の時代を迎え、最先端技術者と能力者をいかに養成するかが、これからは重要になってくる。というのは、世界は完全な競争社会に突入し、それに敗北することは国家としての衰退を意味するからである。 そのことを国家として意識して、人材育成をしているのが中国である。最先端技術の特許申請の数を見ると、アメリカを抜くかもしれないというレベルである。片や日本は一言で言えば伸び悩んでいる。この辺りについては、科学者サイドから苦言が時折発せられている。

   今から約150年前、開国して周りを見て慌てて欧米の先進国の学問成果を採り入れようとしたのが当時の明治政府である。教育制度もしかりである。学制発布は明治憲法の制定の17年前のことである。当時の政府が、人づくり、人材育成にいかに真剣であったかということを物語っている。

今の日本の政府に、爪の垢でも煎じて飲ませてあげたい位である。国会も桜を見る会だけで揉めている場合ではない。すべての国会議員が、国家意識をもって巨視的視点から行動していただきたいと思っている。

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