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ウクライナ侵攻が続く限り、ルーブル安は進行する ―― 中国経済に吞み込まれるロシア / 中国にとっても重荷となる

「2023年の6月1日から、中国はロシア極東のウラジオストクの港の使用権を165年ぶりに回復したというニュースが入ってきました」

女性

「使用権というのは、使用しても構わないよ、ということですよね」

「そうですね。中国東北部から中国の沿海地域にその地域で作ったものや獲れたものを輸送することが出来るようになったということです」

女性

「165年ぶりということは、かつては中国が使用していたのですか?」

「清の時代には、ウラジオストクの辺りは「外満州」と言って中国領だったのです。その辺りを接収できると、ロシアは太平洋に出る港(不凍港)が手に入ります」

女性

「狙っていたのですね」

「アヘン戦争(1840)で清はイギリスに惨敗し、弱体化します」

女性

「チャンス到来ということですね」

「形の上では条約をとり交わしていますが、共同管理とした後、結局、割譲されてしまいます」

女性

「それが今回、戻ったということですが、首脳会談で決めたのですか?」

「あくまでも使用権だけですけどね。3月の首脳会談でプーチンが頭を縦に振ったようですね。経済制裁でウラジオストク港が取扱う絶対量が減っていたので、渡りに船ということで了承したみたいです」

女性

「借りたら、こちらのものという言葉がありますけど……」

「どのような約束をしたのか定かではありませんが、そういう気持ちは中国にあると思います。庇を貸して、母屋を乗っ取られるという諺もありますからね」

女性

「ウクライナ戦争で得をしたのは、中国だけという感じがしますけど……。ここからが本論です ↓」

 中国経済に吞み込まれるロシア

ロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン1」「サハリン2」に対して、日本の三井物産や三菱商事が出資をしています。ウクライナ侵攻の際に、撤退話があったのですが、日本のエネルギー事情や領土問題を見据えて出資事業を継続することにしたのです。

出資に対する配当金の支払いについて、中国の人民元で支払われたことが分かりました。制裁前はドルで支払われていたのですが、欧米がルーブルをドル決済網から外してしまったことが一番の要因です。ただ、それでも支払い準備のためにドルを保有しているはずなので、それで払っても良いのですが、その余裕がないということだと思います。

ロシアは原油・天然ガスを中国へ輸出していますが、その代金を人民元で受け取り、その人民元を支払いに充てているということです。中国は自国通貨が国際取引の決済に使われるようになるし、ロシアはドル資金の不足を補うことができるというメリットがあります。ただ、それはロシアが経済的に中国に呑み込まれる第一歩になる可能性があるということです。

(「NHKニュース」)

 ウクライナ侵攻が続く限り、ルーブル安は進行する

データを見ると、大変な勢いで人民元がロシア経済に浸透していることが分かりますロシアでの外国為替取引のデータがあります。侵攻前の2022年2月の段階では、元の決済は殆どゼロでした。つまり、ロシアでは元が殆んど流通もしていなかったし、国際商取引で元による決済もされていなかったのです。

ところが、その約1年後の2023年3月になると、人民元の取引シェアが39%と、過去最高となり、ドルのシェア34%を抜いてしまったのです。

ウクライナ侵攻が継続する限り、欧米は経済制裁を止めませんし、外国為替システムからロシアのルーブルを排除し続けるでしょう。当然、ルーブルの貨幣価値は下がりますし、そのため現在も暴落しています。暴落を抑えるため、4月にロシア中央銀行のナビウリナ総裁は政策金利の引き上げを検討すると声明を出しています。現在7.5%ですが、それでもルーブル安が止まっていません。というか、ウクライナ侵攻が続く限り、止まらないと思います。

(「livedoor」)

 中国にとってロシアは重荷になっている――元安に振れている

中国がロシア経済を支えるという図式になってきています。ただ、中国も本音では、ルーブルを受け取りたくないでしょう。国際決済に使えず、国際市場では紙切れのようなものだからです。中国は世界第二位の経済大国と言っても、当然限界があります。

資本は規制を嫌い、自由を求めて移動する傾向があります。自由闊達な人の移動と行動、さらには自由な表現が許される社会であれば、人の活力が高まり、それが経済発展の素地を作ります。鄧小平が改革開放路線に踏み切った時代の中国はそうだったかもしれません。ただ、今の中国は、その時代の中国とは違います

香港は政治的に完全に窒息してしまいました。やがてそれは、経済分野に波及します。習近平指導部は台湾攻撃を公言しています。そういう中で、国内の締め付けはさらに今後強まることが予想されます。スパイ気球を飛ばしてみたり、南シナ海を我が物顔で航行してみたり、尖閣周辺は常に波高しの状態です。

そういう強権を振るえば振るう程、実は資本は中国から逃げていきます。当然、元安に振れることになります。5月17日の取引で下落し、1ドル7元台となり、現在、1ドル7.1元位です。この間、ほぼ一直線に下がっており、歯止めがかかっていません。

通貨レートはある意味、その国の人気投票の側面があります。独裁、侵略、核保有といった物騒な国の通貨は誰もが使いたくないと思うもの。日本は経済的に安定していませんが、イメージが良いので、助かっている部分が大いにあるのです。最近の株高も、そういった要素が多分にあります。

ただ、イメージ戦略がいつまで有効なのか、それは分かりません

(「日本経済新聞」)

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