
「昨日の株式市場は1,100円安と大きく値を下げました」

「余り話題にならなかったですね」

「夜のニュースは主に山火事のことを取り上げていましたね」

「大きな問題とは考えていないということでしょうね」

「株価には余り関心が無いのですか?」

「そんなことはありませんよ。NISA枠で投信を購入しましたので、……。ただ、下がるより、上がってくれた方が良いかなという程度です」

「この1年は、現状維持という感じですね。昨日の終値が3万7,155円でした。1年前の株価が3万9,166円なのでほぼ同じところで推移しています」

「アメリカの方は上がっているのに、日本はなぜ停滞しているのですか?」

「巷で言われているのは、投資家心理の変化です。昨年の株価上昇は、企業業績の改善や政府の経済政策、そして世界的な資金流入が重なった結果でした」

「実は、史上最高値と言って世間が騒いでいた頃にNISA枠で投信を購入したのです」

「昨年の夏頃に4万2千円台になりましたので、その頃ですか?」

「何でこんなに暑いのと思った記憶がありますので、そうだと思います。岸田総理が新しい資本主義ということで経済に関心を持っていた印象があります」

「政府の経済政策も含めて、その国がどういう方向に進もうとしているのかということも投資家の資金を惹きつける上で重要な要素となります」

「ここからが本論です ↓ 表紙画像は「日経メディアマーケティング株式会社」提供です」
株価が1年前と同じ水準に停滞する理由とは?
2024年2月22日に史上最高値の3万8915円を更新し、その後7月には4万2千円台を記録するなど、昨年の熱気を思い出すと、現在の状況はやや冷めた印象を受けるかもしれません。投資家たちのリスク選好度も低下しています。また、昨年の高値更新時に比べて、海外投資家の買い意欲が減少している点も大きな要因です。
円安が進行した局面では日本株にとって追い風となることが多いですが、円相場の不安定さが続いており、短期的な資金流入が抑えられている可能性があります。さらに、国内の経済指標や企業業績の伸び悩みも株価停滞の要因となっています。例えば、大企業の決算では一部の企業が好調な業績を示す一方で、業種全体としては伸びが鈍化しており、市場全体の成長期待が後退しています。
以上のような状況が、昨年のような熱狂的な株高を支える力を弱めているのかもしれません。今後、再び4万円台を目指す動きが出るのか、それともこのまま横ばいが続くのか。国内外の投資家がどのように日本市場を評価するかが、今後の株価動向のカギを握っていると言えるでしょう。
(「京都産業大学」)
日本の株高は本当に終わったのか?
最近、日本の株式市場の先行きについて悲観的な見方が広がっています。経済関係者が集まるイベントでの調査によると、35%の人が「日本の株高は終わった」と回答しました。一方で、米国市場は昨年以降も順調に上昇を続けており、日本の株価が横ばいで停滞していることに対する懸念が強まっています。特に注目されるのが、日本企業の株価評価指標であるPBR(株価純資産倍率)の低さです。現在、日本の上場企業33業種のうち14業種がPBR1割れとなっています。PBRは「株価 ÷ 1株あたり純資産」という計算式で求められ、1.0を割り込むということは、企業の資産価値よりも市場での評価が低いことを意味します。つまり、多くの企業が本来の価値以下で取引されている状況なのです。
なぜこのような状況になっているのでしょうか? その要因の一つとして、日本企業の成長戦略の不足が挙げられます。米国企業は新規事業への積極投資やM&Aを通じて企業価値を拡大し続けていますが、日本企業は慎重な経営姿勢を続ける傾向が強く、成長期待が低いため、株価が上がりにくいのです。また、配当や自社株買いによる株主還元策も、日本企業は欧米企業に比べると消極的であり、投資家の関心を引きにくくなっています。さらに、日本市場の構造的な問題も影響を与えています。個人投資家の割合が多い日本市場では、市場全体の成長よりも短期的な利益を優先する投資行動が目立ちます。その結果、企業の長期的な成長を支える資金が集まりにくく、結果として市場全体の評価が伸び悩むという悪循環に陥っています。
とはいえ、「日本の株高が完全に終わった」と断言するのは早計でしょう。政府の企業改革推進や企業の資本効率向上策が進めば、投資家の評価が変わる可能性もあります。日本市場が再び活気を取り戻すためには、企業の成長戦略の見直しと市場環境の改善が不可欠となるでしょう。
(「富士通ラーニングメディア」)
日本市場をけん引する企業が育たない理由
日本の株式市場が世界的な存在感を失いつつある背景には、成長をリードする大企業が不足しているという問題があります。現在、日本の上場企業の多くは世界基準で見ると中小型株に分類され、グローバル市場での競争力を持つ企業が少ないのが現状です。例えば、世界の株式市場の指標の一つである「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」に採用されている日本企業の数は約200社となっており、これはピーク時の半分にまで減少しています。この指数は、世界中の投資資金の流れを左右する重要な指標であり、日本企業の減少は海外投資家の関心が薄れていることを意味します。実際、海外投資資金を呼び込むには時価総額が100億ドル以上必要とされていますが、その基準を満たす日本企業は限られています。
また、世界の時価総額ランキングトップ50を見ると、日本企業でランクインしているのはトヨタ自動車(38位)のみという寂しい状況です。これは、かつて世界市場で存在感を示していた日本企業が、成長戦略の欠如や競争力の低下によって後れを取っていることを示しています(下の表参照)。特に、米国や中国の企業は新たなビジネスモデルを積極的に取り入れ、デジタル技術を活用した成長を遂げていますが、日本企業の多くは従来のビジネスモデルに固執し、変革のスピードが遅いと指摘されています。
さらに、日本の経営者の意識の問題もあります。企業の成長は経営者のビジョンと深く結びついていますが、日本ではリスクを取らず、安定を優先する経営が一般的です。その結果、企業の規模拡大が進まず、グローバル市場で戦える企業が育ちにくいのです。今後、日本市場が世界的な競争力を取り戻すためには、企業の成長戦略の抜本的な見直しが求められます。大胆な投資やM&Aの推進、グローバル市場での競争力強化が、日本市場の再浮上のカギとなるでしょう。
【参考記事】 梶原誠「もはや株高ではない」『日本経済新聞』2025.2.20日付
中山淳史「『企業五輪』に逃げ道はない」『日本経済新聞』2025.2.27日付
(「ログミー」)
読んでいただきありがとうございました。
よろしければ「ブログ村」のクリックをお願いします。
↓