「4月1日は、全国一斉入社式ということで、私もそんな時期があったんだなと少しセンチになりました」
「中には、親御さんを招待した企業もあったようです」
「その話を聞いて少し驚いたのですが、それも時代でしょうか」
「うちの母親は、子供はいつまで経ってもやっぱり子供だと、口癖のように言っていたのを思い出しました」
「いくつになっても心配だということでしょうね」
「お子さんの入社式に招待されたら行きますか?」
「親バカかもしれませんが、行くかもしれませんね。ところで、前回話題にしたアメリカですが、アメリカにも入社式はあるのですか?」
「アメリカは一斉採用という考えがないので、入社式はありません。入社式は日本の文化と言っても良いかもしれません」
「ということは、同期採用という言葉もないということですね」
「それなりの会社であれば、オリエンテーションがあります。そこでCEOのあいさつのビデオで見たりして、その後各種の手続きの書類を用意します」
「入社の余韻に浸っている暇はなさそうですね」
「そもそも出入りが激しいので、毎月入社日があるという感覚の方が、より実態に近いと思います」
「日本も、やがてはそういうふうになるのでしょうか?」
「何とも言えませんが、桜の木の下で入社の喜びを仲間や家族と分かち合う。極めて日本的だと思いますので、残って欲しい気持ちはあります」
「ここからが本論です ↓ 表紙写真は「jobrouting」提供です」
終身雇用制度と年功序列型賃金体系―-高度経済成長を支える
日本企業の人事制度の大きな特徴が、終身雇用制度と年功序列型賃金体系です。両者はセットで考える必要があるのですが、これが戦後から続いている日本の雇用慣行です。制度というのは制度疲労を起こします。徐々に変更していかざるを得ないと思っています。
戦前は日給制が主流でしたが、戦後になって人手確保と製品の複雑化への対応といった事情の中から編み出されたのが終身雇用制度と年功序列型賃金体系です。長く勤めれば勤めるほど給与は上がりますので、社員はそれを励みに仕事をしますし、その中で愛社精神も育まれます。企業にとっても社員にとっても良きシステムとして、戦後長く多くの企業が採用したのです。このシステムが高度経済成長を支えたと言えるのかもしれません。
終身雇用制度と年功序列型賃金体系の前提には、年齢を重ねれば重ねる程、技術も能力も高まっていくという人間観があります。何かモノを作って売ることが主流であった工業社会では通用するかもしれませんが、現代のサービス経済が主流の時代に、そのまま適用しようとすると、どこかに無理が生ずるということです。
(「在宅百貨」)
インターンを採り入れている会社が増えている
4月の入社式を契機として、社会人のスタートを切るという「日本方式」を採用している企業は、約9割とのことです。これが2050年頃には約7割程度になるだろうと言われています。新卒一括採用による雇用はメンバーシップ雇用と呼ばれているものです。採用された新入社員をどこに配属して、どのような仕事をさせるかは会社が基本的にすべて決めるというものですが、そういったことに現代の若者の中には、不安感を抱くものが結構いるからです。
そんなこともあり、メンバーシップ型雇用を維持しつつ、インターンシップ制を採り入れている会社が多くあります(下のグラフ参照)。就職情報大手のマイナビによると、来春大学卒業予定の学生のうち86%がインターンに参加したとのことです。要するに、大学在籍のまま希望する会社に報酬を得ながら働く制度です。インターンにも、長期と短期があるそうです。
中には大学2年生の時にインターンシップ生として会社で働き、4年生の時に経営会議のメンバーに選ばれ、入社して9カ月後に取締役に就任した人もいるそうです。また、新卒でフリーランスを選択する人も増えているそうです。若者にとって今は売り手市場になっていますので、それを利用して、様々な経験を積んで、その後に企業に就職するということを考える人も少なからずいるとのことです。
(「ミツカリ」)
「メンバーシップ型雇用」と「ジョブ型雇用」の併存を
最近になって「ジョブ型雇用」という言葉がよく使われるようになりました。2021年に岸田首相がニューヨーク証券取引所で「ジョブ型の職務給中心のシステム」に移行させるようなことを言っています。そういったシステムへの移行は一国の総理が力んでも実現する訳がないのですが、社内でも専門職に任せる分野が増えれば自ずと「ジョブ型雇用」によって採用する社員も増えることになります。
「ジョブ型雇用」というのは、最初に仕事と報酬があり、それに見合った人材をそこにあてこむという考え方です。そして、メンバーシップ型雇用というのは、最初に人材があり、その人たちに仕事をあてこむという考え方です。ある意味、対照的な考え方ですが、実はジョブ型雇用の方が時代的に古いのです。この仕事をしたらいくらというのは、昔からある考え方だからです。ただ、こちらの方が個別に賃金を引き上げることが容易です。そんなことから職能給と呼ばれたりするのです。
そして、終身雇用制度と年功序列型賃金体系の「メンバーシップ型雇用」と「ジョブ型雇用」を対立的に捉えるのではなく、全体のバランスを考えて適用を考えれば良いと思います。つまり、併用するということです。
(「キャリアマート」)
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