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AI時代を乗り切るために――能力給導入と英才教育の導入をタイアップで

(2/10日に書いた文章です)

日本の雇用慣行であった終身雇用制と年功序列型賃金体系が、一気に崩れそうな雰囲気になっています
女性
日本の風土にあったシステムで、それにより「我が社意識」が高まり、日本の企業は成長したと学校で習ったのですが……
「(終身雇用制は)制度疲労を起こしている」(経団連の中西会長談/「産経」2019.7.11日付)、「終身雇用を守っていくのは難しい局面に入っている」(トヨタ自動車の豊田社長談/「産経」同上)と経済団体や大企業のトップが発言しています。
女性
いよいよ能力給が本格的に導入されるということでしょうか。
ただ、今までの流れがありますので、適用できるところは適用してしまおうということだと思います。
女性
もう少し具体的に説明していただけますか
ある程度の規模以上の会社は、内部の部署がいくつかに分かれていると思います。その中で国際的に人材獲得競争が激しい部門や新規に立ち上げた部署に所属する社員については能力給を適用するというように、本体と切り離して適用するということが出てくるでしょうね。
女性
ただ、そうすると同じ会社にいながら、所属部署によって賃金が違うということが出てきてしまいますね。平等の原則という観点からすると、どうでしょうか?
従来のシステムは、形式的平等の考えに基づいたものです。平等には形式的平等と実質的平等があります。適用する部署をあらかじめ定めてあれば、特に問題はないと思います。それから、年功序列型賃金を残す場合でも、一律のベースアップをせず、査定による差別化をはかるという動きも出てくるだろうと言われています。
女性
そういうことをしなければいけない程、競争が激化しているということでしょうか?
IT関係やAI関連の人材が不足していて、世界で獲り合いになっています。そのため、報酬を上げないと、日本から人材が流出すると言われています。能力給の導入はやむを得ない措置ということです
女性
そんなに不足しているのですか?
AI人材の獲り合いで、経済産業省は2030年に最大12.4万人不足すると試算しています。そのような状況のため、報酬も上がっています。そして、相対的に日本の報酬額が安いのです。例えば、サイバーセキュリティのコンサルタントの最高給与額は、日本が1300万、香港2480万、シンガポール1970万(「日経」2019.12.12日付)です。アメリカのシリコンバレーと比較すると、倍違います。
女性
最先端の技術者を確保するために、能力給の導入は急務ということですね。

日本人の多くは、かつての日本の残像を見て、本当の日本の現状を直視していないのではないだろうか。そんなことを最近思うことがあります。

1955年から1973年まで、日本は高度経済成長を成し遂げます。その結果、世界で2番目の経済大国にのし上がります。その頃(1979年)にアメリカで『ジャパン・アズ・ナンバーワン』という本が一人のアメリカ人の手によって書かれ、日本でベストセラーになります。このことで舞い上がり、その瞬間に優勝者になったと思ったのではないでしょうか


戦後の日本は、加工貿易国として海外から原材料を輸入して、国内の安価な労働力と高い技術力で付加価値の高い製品を海外市場で売りまくりました。特に、アメリカに大量の製品を輸出したので、しばしば貿易摩擦が起きました。最初は繊維製品、その次に問題となったのが自動車でした。1980年には、アメリカの自動車産業に従事する労働者の約4割が一時帰休を余儀なくされる事態にまで追い込まれたこともありました。

「ジャパンバッシング」(日本叩き)という言葉が生まれ、失業に追い込まれたアメリカの労働者が日本車や日本製品をハンマーで叩き壊すといったパフォーマンスが、テレビを通して世界に流されたこともありました。ただ、そういった映像を見るうちに、戦いは日本の勝利ですべて終わったと思ったのではないでしょうか。

その当時に大平正芳首相が主宰した政策研究会が、報告書を出しています。その中には、日本が西欧先進諸国に追いついたことを高らかに宣言しています。その上で「日本は、もはや追いつく目標とすべきモデルがなくなった」とまで書いています(苅谷剛彦「人びと束ねる社会呼び戻せ」『日経』2020.1.9日付)。

スポーツのトーナメント戦は、優勝者が決まれば、大会そのものが終わります。しかし、資本主義競争は世界を舞台にした終わりなきマラソンレースのようなものです。たまたまトップに立っても、力を抜けば抜き返されます。驕りが幻想を生み、残像を人々に植え付けたのではないかと思います。

マラソンコースは常に平坦な道とは限りません。坂道、下り坂、追い風、逆風などまわりの環境が様々に変化します。本来ならば、それに合わせて走り方を変えなければいけなかったのですが、平坦な道が残像として残っていたため、何も考えず今までと同じペースで走ってしまいました。

これが平成の「失われた30年」のいきさつです。この結果、息切れが生じて先頭集団から離されようとしています。作戦であえて集団から離れようとしているのではなく、原因が原因なので深刻です。経済界から人材育成について要望が出ていますが、それを具体的に実行するのは、各企業の現場と教育界です。ここが今、ネックになっています

人材投資について、学習院大の宮川努教授と滝澤美帆准教授の分析による「JIPデータベース」が「日経」(2020.1.20日付)に掲載されています。GDPの何%を人材投資にまわしているかという統計数字が載っていますが、ドイツ 2.2%、アメリカ、フランス 1.8%、イギリス1.1%、日本は0.4%となっています

なお、日本の政府は2019年6月に「AI戦略」を決定しています文系・理系を問わず全ての大学生と高専の生徒を対象に、ビッグデータ活用の素養を身につけてもらうためのカリキュラムを策定したとのことです。ただ、2025年実施予定とのこと。横に並んで揃ってから一斉に始めるという発想なので、5年の準備期間ということだと思いますが、ただでさえ遅れている状況なので、もう少し前倒しができないものかなと思います。

そしてAI時代と工業社会の時代の人材育成は違って当たり前です。現在の中央集権的な一律一斉授業は工業社会には通用しますが、AI時代には通用しません。へたをすると、全員AIを乗り越えることが出来ずに、「全員討ち死に教育」になりかねません。AIを乗り越えるのは、結構大変だからです。

少人数で良いので、最先端でAIをリードする人材が必要です。その養成は「一律一斉学習」では不可能だと思います。スポーツで例えますと、トッププレイヤーを指導するコーチがどうしても必要ですが、誰もが出来るわけではありません。今までは、ファミリーテニスレベルなので、少し上手いプレイャーであれば、十分コーチができたのですが、時代が変わりステージが変わっていますので、そのレベルでは役に立ちません。

アメリカ、カナダには飛び級制度があります。日本の戦前にも、飛び級がありました。スポーツや囲碁、将棋の世界では、若き英才が活躍しています。科学の分野も当然そういった才能をもった人がきっといると思います。特異な才能が、今の教育システムの中で埋もれてしまっていると思います。そう考えれば、社会の損失だと思います。

科学の発展は常に天才がリードをしました。難しい時代に差し掛かっています。一人の天才、秀才の発掘が日本を救うことがあるかもしれません。

トップ巻き返しのため、英才教育を採り入れることをお薦めいたします

読んで頂きありがとうございました

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