「中国がAI研究でアメリカを追い抜くだろうというニュースが飛び込んできました」
「研究の質が分かるのはどの位その論文が引用されたのかで分かるそうですが、2020年に中国が初めてアメリカを逆転したそうです。中国20.7%に対してアメリカは19.8%だそうです」
「AI(人工知能)は幅広い産業に組み込まれ、国家の競争力や安全保障にも影響を与えるそうですね」
「AIとドローンと小型兵器を組みあわせれば、自分で判断して飛び、攻撃することができるようになります。命中率100%です」
「いやだ、怖い」
「産業分野、軍事分野でイニシァティブを握るためにはAI研究は極めて重要なのです。ただ、誰でもその開発を担えるかと言えば、そういう訳にはいきません」
「それは当然だと思います。高度な能力をもった人でしょうね」
「そういった人材が中国には2000人位いると言われています」
「凄い数ですね」
「世界最高峰のAI国際会議「NeurIPS」の発表状況によると、中国が29%、米国20%で、完全に逆転しています」
「ちなみに、日本は……」
「殆ど圏外です。その他大勢の10%の中に入っているという状況です。日本だけで見ると、多分1%いくか、いかないかのレベルだと思います」
「少し前までは、メイドインchinaを見下す雰囲気があったのですが、これからは認識を改める必要がありますね」
「何しろ14億人の人口です。その強みを最大限に生かしていると思います」
「ここからが本論です ↓」
(2人の会話の内容を書くにあたっては、「中国AI研究 米を逆転」『日経』2021.8.8日付を参考にしました)
国際競争に負けるということは、呑まれることを意味する
日本の政権政党である自民党に覇気が感じられません。保守政党は日本の伝統と文化を守る役割があるのですが、そういった意志も自覚もないまま当面の課題をこなしているように見えます。
『2025年 日中企業格差』(PHP新書、2018年)の著者の近藤大介氏は、当時の日本と現在の中国、今の日本と日清戦争前の中国が似通っていると言います。「富国強兵、殖産興業、アジアへの拡張主義、欧米コンプレックス払拭などだ。また後者に関して言えば、平和ボケした政府と国民、増え続ける国の借金、自国の問題の解決を強国に委ねる弱腰政府、社会に蔓延する無責任体質といったものだ」としています。前者が中国、後者が現在の日本です。敢えて、そこにつけ加えるとすれば、キャリア官僚の腐敗と成り手の減少といったとこでしょうか。
それに対して、中国は横暴さが目立ちますが、勢いがあります。その勢いに日本が呑み込まれてしまっています。尖閣が奪われなければ良いなと思っていますが、防衛精神がなければやられてしまいます。
ファーウェイという中国の企業があります。中国共産党との結びつきが強いため、アメリカから標的にされて、現在はひと頃よりも勢いがありませんが、この会社は2018年春に日本の大学生に初任給40万円を提示して話題になりました。現代の企業にとって大事なのは優秀な人材の確保です。わずかなお金を積み上げるだけで、優秀な人材が採れるならば安いものと考えたのでしょう。そういった大胆さを見習って欲しいと思います。
横並び一線というのが日本の企業の考え方ですが、そこから早く脱却しないと本当に呑み込まれるかもしれません。どうすれば、良いのでしょうか。いろいろなことが思い浮かびますが、頂点を人為的に引き上げるということを考えてみましょう。
オリンピックの成果は英才教育の賜物――ヒントはオリンピックにあり
先日開催されたオリンピックですが、各国のスポーツの精鋭たちが技と体力を競い合いました。あの舞台に集った選手たちは、殆どがスポーツの英才教育を受けた人たちです。小さい頃から目標を定め、場合によってはそのように育てられた人もいるでしょう。少なくとも、そのスポーツに夢中になって取り組んでいるうちに、自分の力だけで自然にオリンピックに参加できたという人はいないと思います。世界の舞台でそのトップを競う舞台です。そこには、本人や家族の明確な意志と周りの人たちの理解と協力があったはずです。
人財開発もその位のつもりで臨む必要が出てきたということです。何故なのか。頂点がかなり高くなっているからです。頂点が低ければ、多少の才能と出会いで目標をクリアーすることもあるでしょう。ただ、専門性が高度になれば成る程、難しくなります。
(「ハフポスト」)
人材競争力を上げなければ、労働生産性は低迷したまま
日本生命が最大1億5千万円を投じ、IT人材を育成するための専用研修施設を今年度中につくって対応するとのことです。そのように企業研修で先進技術や科学を学ぶという方途もありますが、才能のある人材を早期に見極めて、別の教育課程で育てるということを考える時代です。かつての時代は飛び級というのもありました。高校に在籍しながら特定の単位については日本、あるいは海外の大学で取得できるようにすることを考えても良いかもしれません。才能あるなしに関わらず、同じ教科書で一斉に教えるという発想から脱却しなければならないということです。
人材サービス世界最大手のアデコが「世界人材競争力指数」(2019年版)というのを発表しています。125の調査対象国のうち日本は22位でした。ちなみに、1位はスイス、2位はシンガポール、3位はアメリカでした(『日経』2019.1.22日付)。人材競争力を上げれば、労働生産性も上がります。商品に価値を与える源泉は、人間の能力だからです。日本の労働生産性が低迷しているのは、政府・文科省が人材開発に殆ど関心を持っておらず、旧態依然の発想で教育を考えているからです。経済は経済産業省、教育は文科省という縦割り行政的な発想にも、問題があります。
(「三菱総合研究所」/IMD「世界競争力年鑑」から見る日本の競争力)
読んでいただき、ありがとうございました。
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