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子どもの日に寄せて ―― 子どもが大切にされない国の子どもの人口は増えない

「今日は子どもの日なので、日本の子どもが置かれた状況のことについて話をしましょうか」

女性

「子どもたちが集まって遊ぶ姿を見ることが少なくなったような気がします。少子化の影響かなと思っています」

「遊び方の変化というのもありますね。それについては、またどこかで話題にするとして、今日は少子化に絞って話を進めることにしましょう」

女性

「少子化や人口減は「静かな有事」とも言われています。政府も子ども家庭庁の創設や男性の育休時間を増やすための法整備など、いろいろ対策を取っているようです」

「それらは、少子化の解消にはならないと思っています」

女性

「その理由は?」

「何か問題というか結果が起きるということは必ず原因があるということです。その原因を探り当てて、その原因を取り除くために動かなければ、問題は永遠に解決しません」

女性

「的外れということですね」

「少子化は様々な原因が複雑に絡み合っているので、それらを解きほぐして、一つひとつに焦点を当てた総合的な対策が必要です。そもそも、教育関連予算自体が少ないです」

女性

「そうなんですよ。そして、少子化が予算削減の口実になっている場合もあるのです」

「例えば、どういうケースがありますか?」

女性

「私の住んでいる自治体では少子化を予測して学校統廃合を計画的にこれから進めようとしています。人口が減少するので、教育予算も今後増やす訳にはいかない、それで学校統廃合をするんだという理屈です」

「発想が逆ですね。少子化を防ぐためには、今の子どもたちにお金をかけて大切に育てるという考えでなければダメだと思います」

女性

「私もそう思うのですが、教育予算は一番削りやすいみたいで、いつも後回しという感じがしています」

「これは政治に携わる人たちが長期的な視点で物事を考え、判断しなくなったというのと関係があると思います」

女性

「今の子どもたちが大人になる時の日本の社会を構想しつつ、様々な政策を考えて欲しいと思います。ここからが本論です ↓」

  

 子どもが大切にされない国の子どもの人口は増えない

子どもが大切にされていない国であれば、その国の子ども人口は増えません。当たり前です。大切にされているか、いないかをどこで客観的に判断するのかということですが、まず教育予算が一つの指針となります。

少し古いデータですが、2017年の初等教育から高等教育に対する公的支出の政府総支出に占める割合を見てみることにします。OECD諸国の平均が10.8%ですが、日本は7.8%です。GDPは一応世界で3位ですので、その割には教育予算がかなり少ないということがこのデータだけでも分かります

どうして教育予算が少ないのか。これは2つの原因があります。1つは、文科省の力が他の省庁、特に財務省との関係に於いて弱いからです。予算折衝という言葉があるように、各省庁から出された予算要求が通るかどうかは財務省との力関係と各大臣の政治的力量、政府の考え方などがブラックボックスの中で複雑に絡み合って結果が出てきます。

萩生田文科大臣(現経済産業大臣)のもとで35人学級が通ったのは、ある意味必然性があったということです。萩生田氏は約2年文科大臣を務めたのですが、この10年間の文科大臣の在任期間を調べてみると平均約1年です。約2年ということは、彼なりに教育にこだわったのだと思いますが、そのように問題意識がないと教育問題は素通りしてしまうことが出来る分野なのです。

(「教育協力NGOネットワーク」)

 教育予算は常に削減の対象となる

2つ目の原因は、教育についての財源が国と地方との合算だからです。「3割自治」という言葉があるように、地方財政は概ねどこも逼迫しています。絶対的に足りない予算、どこを削るかということになり、一番抵抗が少ないところとなると教育予算なのです。

当事者は学校の生徒や子どもたちですが、彼らは政治的に無力です。最近の教員は政治的に無関心な人が増えていますので、敢えて言えば地域の保護者ということになるのでしょうが、子供たちが小学生から中学生の親は、そういったことに関心をもつ時間も心の余裕もないでしょう。殆ど無抵抗状態なので、予算削減のターゲットとして狙われてしまうのです。

(「Visit fem.jp」)

 いまだに公立小中学校のエアコン設置率が100%になっていない現実

一つのデータを紹介します。2020年9月の時点で、公立小中学校のエアコン設置率は92.8%です。100%にいっていなかったのですが、ちなみに1年前は77.1%でした。急に数字が伸びていますが、2018年に愛知県豊田市立小で1年の男子児童が熱中症で死亡した事故があったのです。今は昔と違って猛暑ですし、かつての子どもと違って暑さへの耐性が出来ていません。今の時代に100%にいっていないこと自体が驚きですが、そういったことがあったので、設置率が高くなったのです。

さらにデータを紹介します。音楽室や理科室などの特別教室は、全国平均で55.5%です。体育館は同2.7ポイント増の5.3%でした()2020年統計。公立小中学校の体育館は、地域の避難所として使われることもあります。真夏に被災した場合を考えていないのでしょうか。ただ、これでは体育館で子供の体育指導や部活動を安心して、できないのではないかと思います。

このほか、幼稚園の保育室は94.9%、高校の普通教室は87.0%、特別支援学校の普通教室は94.9%です。これらはすべて100%になって当たり前なのです。日本の教育行政は、この程度の認識だということです。

これでは子どもを大切にしているとは言えませんし、こういった根本部分から変える気持ちがなければ、少子化など解決出来ません考え方も含めて、構造的な取り組みが必要な所以です

(「産経ニュース」)

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