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2018年を境にベクトルが逆を向き始めた――日本と中国の逆転 / 中国資本が大挙して押し寄せる時代

女性

「実は、ウチの会社はちょうど1年前にマザーズに上場したのですよ」

「えっ、そうなの。凄いじゃあない」

女性

「それはやっぱり凄いことなんですか?その時に実は上場記念パーティを会社でしたんですよ。社長が業界紙の記者にインタビューされていましたけど」

「株価が上がったでしょう」

女性

「私は殆どよく分からないけど、3倍とか4倍になったとか言って社長が喜んでいました。それで給料が余り上がらなかったので、少しガッカリした記憶があります。連動しないのですね」

「会社の価値と従業員の給料とは、別ですからね」

女性

「東証一部、二部とかマザーズとかそういう区別すらもよく分かっていません。あれはどういう区分なんですか?」

「簡単に言えば、相撲の幕内、十両、幕下といったようなものです」

女性

「一種の格付けがなされていると考えれば良いのですね」

「そうですね。企業も業績を伸ばしていくことが出来れば、上のステージで勝負できるということです。ただ、現在の一部、二部、ジャスダックス、マザーズの4市場は2022年4月からプライム、スタンダード、グロースの3市場に再編成される予定です」

女性

「その方が良いと思います」

「どうしてですか?」

女性

「1/4より1/3になるので、今までより重みが増すような気がするからです。だって、マザーはお母さんじゃあないですか。グロースの方が響きが良いと思います」

「成る程、感覚的なご発言ということですね。それはともかく、様々な資金が流入しやすくなるような投資環境を整備する必要があると思います。中国がどう動くか、アメリカなどの外資の動き方によって、株式市場はいろいろな「顔」を見せることになると思っています」

女性

「ここからが本論です ↓」

 「近代的社会主義強国の全面的完成」の意味

習近平国家主席は、「近代的社会主義強国の全面的完成」ということを共産党創立100周年の演説(7/1)の際に言いました。わざわざ「強国」とし、「全面的」という修飾語を付けたのですが、実はそこに彼の真意があると思います。ただ「近代的社会主義強国」という言葉はありません。彼の造語ですが、何を「強国」と思っているかということです。その辺りは、推測するしかないのですが、「全面的」ということは政治的な面と後はそれにプラスαということです。政治的な独裁体制は、すでにこの時点で手に入れています。それを土台に世界の「強国」として羽ばたきたいということでしょう。

「中国 IT企業統制強化」(『産経』2021.7.30日付)という見出しで、「習政権のIT統制のステージが上がった」と評する北京の日系企業幹部の話を紹介しています。その記事によると、配車サービス最大手の滴滴出行(ディディ)に対する立入り調査が行われたそうである。ただ、単なる立入り調査ではないことは、「公安省、国家安全省、交通運輸省……計7部門が共同で実施した」(『産経』同上)という一文で分かります。特に、国家安全省というのは、スパイ取締り機関です。

さらに、7月6日には共産党と政府の連名による「中国企業の海外市場での上場に関する規制を強化する方針を発表」(『産経』同上)しています。

企業側からすれば、上場について母国から規制されるとは夢にも思っていなかったと思います。ただ、中国の選んだ方針は、「既に海外で上場している企業に対する監督も強めるというもの」(『産経』同上)なので、企業人からすれば、本国は何を考えているのかと思っているかもしれませんが、経済活動分野についても手綱を引き締めておきたいというのが中国共産党政府の考え方なのでしょう。つまり、「全面的」というのは、政治、経済、軍事、サイバー空間、宇宙空間などありとあらゆる面で支配していくという決意を示しているのです。逆にそれだけのことをするためには、国家主席の任期を取り払い、自分が中国の指導者として君臨する必要があると思っているのでしょう。

(「毎日新聞」)

 2018年を境にベクトルが逆を向き始めた――日本と中国の逆転

近藤大介氏が書かれた『2025年日中企業格差』(PHP新書)という本があります。この本が出版されたのが2018年なので、日中間に雪解けムードが出始め、習近平国家主席の来日が決まった頃です。実はその頃を境にして、日中間のベクトルが逆向きになったのです。そういったことを伝えるために、書かれたのだと思います。

「2025年」とあるのは、2015年に中国が発表した「中国製造2025」を意識したためと思われます。中国の策定したロードマップである「中国製造2025」の通りに現実が進めば、中国はアメリカを凌ぐ経済大国になり、日本は中国に経済的に従属する国になるだろうという著者の予測があるからです。

日本がGDPで中国に追い越されたのが2010年です。追い越されれば、当然対処の仕方が変わるはずです。そもそも、追い抜かれたことの原因を分析するといったこともせず、淡々とそれを日本全体が受け止めていたという印象をもっています。そのためなのか、日本の政界人や財界人は自分たちの頭を切り替えず、相も変わらず旧態依然のままの状態でいるような感じに見受けられます。どういうことか。資金の流れが逆になることを念頭に置いて活動をしなければならないということです。その頭の切り替えが行われないまま、古い感覚でいたため中国の現地企業に呑み込まれてしまった日本企業もあるのです。

中国パソコン最大手のレノボ(聯想)は2011年にNECのパソコン部門を買収、さらに2017年11月に、富士通のパソコン部門を買収し2018年6月には、鴻海(ホンハイ)傘下のシャープが、東芝のパソコン部門を買収しています。日本でパソコンを買うということは中国系の会社の製品を買うということです。

先日、ヤマダ電機に行って、試しに「日本製のパソコンを」と言ったところ、店員は「日本製は高いですよ」と言いながら富士通とNECのパソコンが並んでいるコーナーに案内してくれました。さらに「NECは中身が殆ど実は中国製で余りお勧めできません、同じ値段なら富士通がいいと思います」と言ったのですが、実は大元は中国のレノボなのです。富士通、NECは日本では有名ブランドなので、それをそのまま使っているだけなのです。

ただ、この「レノボは民営企業を装っているが、中国政府傘下の中国科学院から興った会社で、いまでも中国科学院が最大の株主」(『2025年日中企業格差』47ページ)というのが実態なので、中国共産党の強い影響下にある会社なのです。

(「朝日新聞デジタル」)

 中国資本による日本の浸食がこれから更に進む

「日本市場の魅力は、何もかも『安い』ことだ。日本企業を買収しようと思うと、驚くほど安い。人件費も不動産価格も安い。おまけに技術力は高く、国民は勤勉で、社会は安定している。しかも中国の隣国だ。中国企業にとって日本市場は、まさに『宝の山』」(同上、45ページ)と言ったという中国の電気メーカーの社長の話が紹介されています。

いつの間にか、日本企業と日本市場が中国にとって垂涎(すいぜん)の的になり、2018年が中国からの「日本進出ラッシュ元年」(同上)となりました

東洋経済のオンライン記事で「縮小する日本市場に中国企業が殺到する理由」(2021.4.30)と題して趙 瑋琳 : 伊藤忠総研 産業調査センター 主任研究員が文章を寄せています。少し長いのですが紹介させていただきます。

今日の日本では5年前には想像できなかった光景が広がっている

中国で最も人気のあるSF小説でアジア初のヒューゴー賞を受賞した『三体』は、日本に上陸した途端に大きな話題となり書店を賑わせた。京都の街には中国電気自動車メーカーBYDの大型電気バスが走り、若い人たちは中国の人気ゲーム「荒野行動」やショート動画アプリの「ティックトック」を楽しんでいる。タクシーを呼びたければ中国の配車アプリである「ディディ」が使え、中国火鍋「海底撈」に行けば中国式のおもてなしを体験することができる。

実は以上のような目に見えやすい消費者向けのサービスだけでなく、デジタルソリューションやクラウドサービス分野など企業向けのビジネスでも、中国テック企業の日本進出は活況を呈している。少子高齢化や人口減少の影響で市場自体が縮小する中、日本は中国ビジネスの最前線になりつつあるのだ。」

(「縮小する日本市場」に中国企業が殺到する理由 | 中国・台湾 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)より)

アリババのアリペイや、テンセントのウィチャットペイの案内を、日本でも普通に見ることができるようになりました。そして試しに「中国企業 日本人の求人」で検索してみると、22,158件の求人募集が出てきました。その中には、正社員800万~1200万という条件で応募している企業もあります。初任給40万円ということで話題になった中国企業もあります。

基本的な流れを理解しないまま、いまだに中国へ進出しようと考えている日本企業がありますし、ジャーナリストの中にはそういうことを記事として書いている人もいますが、生兵法ケガのもととなります。

今は、資本撤退をして日本に帰るタイミングを見計らう時代です。それが会社と日本を守る行動となるからです

(「WEDGE Infinity  (ウェッジ)」)

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