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4年目の大学共通テスト ――「大学共通」なので60~70点台の平均点をメドにした作問を / 大学の序列化が進み、大学間格差は広がる

女性

「今は、大学入学共通テストと言うのですね」

「共通テストが導入されて今年度で4年目になります。あなたの時代は大学入試センター試験だったはずです。私の時代が、ちょうど大学共通一次試験導入の時代でした」

女性

「どうして、そのように変わってきたのですか?」

「私の見方は、「寄らば大樹の陰」と「手抜き」の心理が大学人に浸透していった結果だと思っています」

女性

「確か最初は国立大学の一次試験を共通にしましょう、という話が出発ですよね」

「そうですね。1979(昭和54)年から導入されました。それまでは大学ごとに作問をしていたのですが、入試問題を作るのは大学にとってかなりの負担です」

女性

「その負担をなくそうという第一歩が共通一次だったのですね」

「それを私大の連中が、私立も使えるようなシステムに変えて欲しいということで出てきたのがセンター試験です」

女性

「私はそのセンター試験を利用して大学に入りました」

「センター試験をどのように使うかは、各大学の裁量に任せたのです。一次試験的に使っても良いし、その点数だけで入学の可否を決めても構わない等……」

女性

「使い勝手の良いテストだったのですね。ところで、先ほどおっしゃっていた「寄らば大樹の陰」という意味は何ですか?」

「国立大が参加するようなテストなら、利用させて欲しいということで我も我もという感じで押しかけて、今の共通テストになってしまったということです」

女性

「ここからが本論です ↓ 表紙写真は「TBS NEWS DIG-TBSテレビ」提供です」

 大学人は壮大な目標を持って大学入試に取り組んで欲しい

大学と高校はその学びの目的が違います。高校までは勉強をする、つまり、この世界で一つの常識として確立したことを理解したり、記憶したりする作業が中心となります。大学は学問をする処です。学問というのは、今まで常識と考えられたことに対しても疑問の眼差しを向けて研究したり、新しい法則や考え方を打ち立てたりすることです。

それぞれの大学には、建学の理念があるはずです。それが仮にはっきりしなくても、現在の経営陣が考える求める学生像があると思います。その学生を獲るための「意志表示」が大学入試だと思います。大学入試を一つの大きなイベントと考えて、その大学に所属する人たちの叡智と考えを結集するつもりで臨むべきだと思います。特に、定員割れをしているような大学こそ、そのような努力をするべきでしょう。

現在は様々な学問分野がありますが、大学人はそれを固定的に考えないで欲しいと思っています。法学部、経済学部、商学部というのが従来の文系学部ですが、複雑な社会を読み解く上で学部の融合を考える時代だと思います。法律の知識だけ、あるいは経済の知識だけで正確に社会を読み解けなくなったと思っています。判決文の内容に首をかしげるものが多くなったのは、法律の知識だけで判断しているからです。中央大は文理融合学部を2027年度からスタートさせると発表しました。京都精華大学はまんが学部を設置しています。個性豊かな人材を育てながら、新しい学問分野を創出する。定員を充足することに汲々とするのではなく、壮大な目標を持って大学入試に取り組んで頂きたいと思っています。

(「京進スクール・ワン富田教室」)

 「大学共通」なので60~70点台の平均点をメドにした作問を

大学共通テストの位置付けですが、今の状況は全大学共通の1次試験というものになっています。例えば、今年の物理基礎が28.7点、化学基礎が27.3点、数Ⅰが34.6点、数Ⅱが35.4点ということで、点数がかなり低くなっています。作問者が基礎的な力の判定テストではなく、大学に入るにあたっての第一関門的なテストという捉え方になっています。

「大学共通」という看板を掲げ、しかもマークシート方式なので、平均点が60~70点台となるような試験にするべきでしょう。マークシート方式のテストで問題を難しくしようとすると、文章を長くしたり、計算式を必要以上に複雑化したりすることになります。考え方が合っているのに点数が0点となることが当然ありますし、全くお手上げの問題だったのに、何となく塗ったマークが合っていたということもあります。マークシート方式で平均点を下げることを考えると、正確な選抜が出来なくなるということです。

今後は、外国移民の子弟が多く受験することになるかもしれません。数学や物理の問題なのに、日本語が複雑で何を聞いているかよく分からなかったというのでは正しい学力は測れません。今のうちから、心して対応する必要があると思われます。

(「明倫ゼミナール」)

 大学の序列化が進み、大学間格差が広がる

今のような考え方で大学共通テストを重ねると、大学の序列化が進み、偏差値の高い大学の志望者が増える傾向となります。私立高校の中には、偏差値の高い大学を目指して進学指導する学校が結構あるからです。その反面、定員割れ大学が増えることになり、大学間格差が広がることになります

入試という一つの関門を難しくすれば、良き人材が獲れると思うのは幻想です。それは科挙の歴史が証明しています。科挙は隋の時代から清王朝の時代まで約1300年間中国で続いた官吏登用試験です。つまり、中央集権国家を支える官吏を選抜するための試験で、世界で最も難しい試験と言われていました。なぜ止めたのでしょうか。日清戦争の敗退が直接の原因です。最も優秀な官僚を有する清が田舎侍集団の日本に負けるはずがないと思っていたところ完敗でした。時代に見合った人材を獲るような試験になっていないと判断し止めたのです。

日本も戦前に陸軍大学を創設し、その卒業までの成績順で陸軍の階位を決めました。その結果どうなったか。それは言わずもがなだと思います。とにかく、点数だけですべてを決めてしまうと、様々な問題が起きるというのが歴史の教訓です。関係者は、点数はある程度の目安にしかならないと少し肩の力を抜いて取り組んでいただくのが良いと思います。

(「ヒストリスト」)

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