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日本共産党綱領の批判的検討 ―― .ルビコン川を渡った立憲民主党に捧げる

「ルビコン川を渡ったという表現があることを知っていますか?」

女性

「世界史の先生が何か、言っていた気がしますが、カエサルですよね。それだけしか分かりません」

「私は行ったことはないのですが、ルビコン川自体はそんなに大きな川ではないみたいですね」

女性

「なのに、どうしてそういう言葉が生まれたのですか?」

「カエサルがその河を渡る時に、重大な決断を迫られていたということなんです。カエサルは思案の末、結局ルビコン河を渡ります。それをきっかけにローマ内戦の火ぶたが切って落とされることになるのです」

女性

「何を話題にしようとしているのか、少し読めてきました」

「ヒントは、選挙です」

女性

「要するに、ルビコン川渡った政党があったということを言いたいのですね」

「そうですね。立憲民主党ですけどね」

女性

「やはり、共産党と手を握ってはいけないとお考えですか?」

「共産党の一番の問題は、求めている目標は実体がないものだということ。第二は、その絡みで政策を政策として考えていないということ。第三は、先日のブロクで取り上げた民主集中制の問題です」

女性

「最初の実体がないというのは、社会主義・共産主義社会のことですか?」

「そうですね。こういう非現実的な社会を政治目標として掲げること自体が非常識です。政治の世界は現実の問題をどうするかという世界です。仮に、宗教政党が神の国を目指そう、と言われても我々は困るでしょ。「平等社会を目指します」なら良いのですが、「平等社会を実現します」はウソになります。昨日のブログに書きましたように、平等の捉え方のモノサシがいろいろあるからです」

女性

「ここからが本論です ↓」

 コミンテルン日本支部として設立されたことが書かれていない

日本共産党綱領があります。これを読んで、感激して党員になる人もいるようですが、冒頭から書かなければいけない情報が隠されています――「日本共産党は、わが国の進歩と変革の伝統を受けつぎ、日本と世界の人民の解放闘争の高まりのなかで、1922年7月15日、科学的社会主義を理論的な基礎とする政党として、創立された。」

この社会はすべて因果関係で成り立っています。つまり、何かが起きる時は必ず原因があるはずですが、この文章を読むと日本共産党が自然発生的にどこからともなく沸き起こったような書き方がされています。あと、当時は「科学的社会主義」ではなく、マルクス・レーニン主義とすべきでしょう。

歴史を紐解くと、レーニンの指導のもとロシア革命(1917年)が成功し、ユダヤ人の彼は社会主義革命を世界に広げる目的でコミンテルンという国際組織を作りますなぜ国際組織を作ることをしたのかと言えば、ユダヤ人国家創設のためです。当時のユダヤ人は亡国の民です。ユダヤ人の彼にとってみれば祖国再建が最終目的なので、ロシア革命成功でまだ喜んでいる訳にはいかなかったのです。

日本共産党は、コミンテルン日本支部として設立をされ活動を開始します。そういったことが全く触れられていないということは、隠しておかなければいけないことと共産党が思っているということです

実は、その前年には中国共産党がコミンテルン中国支部として活動を開始していますので、2つの党は「民主集中制」という独裁システムのDNAをもった党なのです。ロシア共産党も中国共産党も政権を執った後、その独裁色を強めました。中国は現在進行形なので、よく分かると思います。日本共産党も不破-志位体制が20年の長きにわたって続いています。同じことが起きる予兆が、すでにそこに現れています

(「kogensha News App」)

 日本共産党綱領の結論部分も問題あり

綱領的文書は最初と最後が重要なので、次に何を目的として活動をしようとしているのかということで結論部分を見ることにします。「五、社会主義・共産主義の社会をめざして」という項目があります。

とにかく修飾語と決めつけの言葉が全体的に多すぎます政治的文書なので、具体性と実現のための順次性が求められるのですが、ほとんどが感覚的に書かれています。読んだ人のイメージに委ねようという魂胆なのかもしれません。読んで社会主義・共産主義の社会を自分の頭の中でイメージ豊かに描けた人は、感動して共産党の活動に加わるということでしょう。ただ、その感動は書かれている言葉ではなく、文章を読んで勝手に自分の中で思い描いた未来像に感動しているだけなのです。

具体的に指摘します。冒頭の文章から「?」のオンパレードです。「日本の社会発展の次の段階では、資本主義を乗り越え社会主義・共産主義の社会への前進をはかる社会主義的変革が、課題となる」とあります。

下線を引いたところが、問題ありの部分です。何をもって「社会発展」と考えるのか。「社会発展」の指標は何なのか。なぜ、経済発展としていないのか。経済発展であればGDPや労働生産性といった様々なデータを分析すれば、経済発展しているかどうかが分かります。「社会発展」では、発展しているかどうかを客観的に把握することができません。

「資本主義を乗り越え」とありますが、どうして乗り越える必要があるのか。そもそも資本主義というのは、自由競争市場を前提にした生産システムとそれをコントロールするシステム全体を言います。資本主義はモノではないので、「乗り越え」という表現は不適切な上に、どうやって「乗り越え」るのかが書かれていません。「乗り越え」は、破壊と同義なのでしょうか? 破壊であれば、システムの破壊となり、国語的には正しくなります。なぜ、破壊すると書かないのでしょうか。ただ、破壊してどうするのかという問題が出てきます。破壊すれば生産力は当然落ちます

「社会主義・共産主義の社会への前進」とあります。まず「・」でつないでいるということは社会主義も共産主義も殆ど同じと考えているということです。であれば、用語的にどちらかにまとめれば良いのではと思います。でなければ「社会主義、共産主義」とすべきでしょう。そして、「前進」という言葉を使っていますが、何をもって前進と言い切れるのかということです。「後退」することもあり得るはずなのに、「前進」と書き切ってしまうところに不誠実さを感じます。中国を見ると、社会主義経済から資本主義経済システム(改革開放政策)に転換して、世界2位の経済大国になりました。これは「前進」なのでしょうか「後退」なのでしょうか。北朝鮮は厳格な社会主義経済を実践していますが、現在は「前進」している途上ということでしょうか。具体的な指標を提示していないため、このように次から次に疑問が湧いてくるのです。

(「アマゾン」)

 生産手段の社会化(企業の国有化)をすれば、経済はストップして社会は大混乱する

「社会主義的変革」については、次の文章で説明があります。「社会主義的変革の中心は、主要な生産手段の所有・管理・運営を社会の手に移す生産手段の社会化である」。ここの部分は変な修飾語もなく具体的にしっかり書いています。ということは、権力を掌握した場合に、真っ先に行うという決意みたいなものが読み取れます。ただ、恐ろしい内容ということが分かっているのか、言葉をぼかしています。

内容が重大なので「主要な生産手段」というのは、具体的に何なのかを書く必要があります。共産党は大企業敵視政策をとっているので、大企業をターゲットにしているのだと思います。「大企業の国有化」を狙っているのでしょうが、何故「大企業を国有化」しなければいけないのか、そもそも何をもって「大企業」と判断するのか、何も具体的に書かれていません。

 なぜ、中小企業は国有化を免れるのか中小企業といっても、製造業であれば資本金3億円、正社員300人の会社でも中小企業であり、大企業以上の経常利益をあげている会社もあります。実際には、機械的に出来ないだろうと思います。それから、外国との合弁企業もあります。それを勝手に国有化すれば、外交問題に発展するでしょう

「大企業を国有化」して、その管理・運営を国が行うということでしょうが、実際には公務員あるいは党員が乗り込んでくるのでしょうか。どちらにしても経営の素人に交代することになります。それで収益が今まで以上に上がるのでしょうか。そして、大企業と中小企業は様々な面で繋がっています。系列会社ということもあります。それぞれ孤立して存在している訳ではないのです。そういうことすらもよく分かっていないのではないかと思います。

(「業務の教科書」)

  「搾取」という死語を使って、生産手段の社会化を正当化している

何のために生産手段の社会化をするのかということが次の段落に書かれています。「生産手段の社会化は、人間による人間の搾取を廃止し、すべての人間の生活を向上させ、……」とあり、目的は「搾取」の廃止みたいです。ただ、「搾取」という言葉は封建社会では通じますが、現代社会では成り立たない言葉です。例えば、農奴が領主に地代として収穫収益の5割を取られる。そこには、対等な契約関係はありません。身分制度の力関係を利用した単なる収奪です。こういうのを搾取といいます。

経営者と従業員が共に企業という組織体の中で働き、その収益を主に3つに分けています。経営者の報酬、従業員への賃金、企業本体にも増資や内部留保、設備投資など資金を振り向けます。「搾取」をしないということは、組織体として上げた利益を従業員にすべて分配するということです。そんなことをしたら、すべての企業はあっという間に倒産します。どうして、そういうことが、「すべての人間の生活を向上させ」ることになるのか、これもよく分かりませんし、説明も書かれていません。ただ、搾取の廃止によって「人間が、ほんとうの意味で、社会の主人公となる」とあります。そもそも、搾取は行われていないし、何が「ほんとうの意味」なのか。「社会の主人公」とは一体何なのか、これは政党の公的文書でしょ、頭は大丈夫かという感じになってきます。

日本共産党綱領の最初と最後の部分を少し見ただけでも、これだけの問題点があります。とにかく、突っ込みどころ満載の文書になっています。各自で実際に読まれてみて下さい。

ただ、読む時は、問題意識をもって読んで下さい。そうしないと、虚飾の文章の餌食になります。

(「Web 大学アカデミア」)

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