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日本の学校教育で足りないもの(9) ―― 憲法教育 / 今の憲法を無条件に讃美するのではなく、より良い憲法を作ることを考える時代

「学校で習わないシリーズをこの間やってきていますが、何か感想がありますか?」

女性

「学校に行って、そこで授業を受けていればすべて安心みたいな感覚を持っていたので、実はちょっとショックを受けています」

「それは大いなる錯覚というものです。今まで、スポーツ、学問、芸術、芸能分野で活躍した人たちは、家庭が何らかのかたちでサポートしています」

女性

「基本は家庭教育ということでしょうか? ただ、そうなると対応できる家庭とできない家庭が出てきてしまいます」

「そうなんです。そうなると、それは子どもにとっても不幸なことですし、国家・社会にとってもマイナスです」

女性

「そういうこともあって、地域全体で学校に関わるようにしようというのが、コミュニティ・スクールの提言につながっているのですよね」

「そうですね。多くの人たちが関わるようになりますので、不登校とか、いじめとかということで学校から遠ざかってしまった子どもたちをサポートできる場面も出て来るのではないかと思っています」

女性

「素朴な疑問ですが、PTAはあるのですよね。地域の協議会とPTAとは、どのような関係になるのでしょうか?」

「PTAは任意加盟団体です。ただ、実質的に強制加盟のような実態になっていて、その加入を巡って裁判も起きていますし、加入意思をきちんと確認している公立小は56%だそうです」

女性

「PTAはPTA、それとは別に地域協議会があるということでしょうか?」

「そうですね。今は、学校を様々な人たちによって支えていこうという流れになっています。PTAは親の組織、地域協議会は地域の組織という位置付けです」

女性

「ただ、その役員メンバーの身分が違うというのは、おかしな話だと思います」

「その辺りが、文科省らしいですね」

女性

「ただ、親として率直に思うのは、「教育は教師なり」という言葉がありますよね。教師でも教員でも、呼び方はどちらでも良いのですが、その質を上げることを考えないとどうしようもないと思っているのですが……」

「確かにそうですね。わいせつ教員対策も大事ですが、教員養成と教員採用についてきちんと考える必要があると思います。そして、一律教育をするのであるならば、同じような教科書を揃えるのではなく、立場や考え方が微妙に異なったものも揃えることを考えるべきでしょう」

女性

「ここからが本論です  ↓」

 憲法について、客観的なインフォメーションが不足している

今の教科書、特に歴史や公民関係の教科書は文科省の意向が多分に反映されたものが採用されています。そのことは、いみじくも「自由社」の中学の歴史教科書が昨年不採択になったことで明らかです。

私も実際に自由社の中学の歴史教科書を手にして、読んでみました。第一印象は、他の出版社のものよりも良い印象でした。マルクスについても、「資本主義を批判したマルクス」と紹介し、社会主義や共産主義についても紹介しています。どうしてこれが不採択なのかと自分なりに分析をしました。

「自由社」の教科書に書かれてあって、他の教科書に書かれていないこと、それは明治憲法に関する記述です。その186ページに明治憲法は「知らす」と「うしはく」の2つの原理によって成り立っていると説明されています。これは、制定に大きく関わった伊藤博文や金子堅太郎の考えに沿ったものです

 「知らす」というのは、実際に権力を振るうということでもないし、具体的に何か政治的な指図をする訳ではないが、責任をもって国を治める「地位」というような意味です。他国に類例がなく、日本独特のシステムのため、誤解が生まれやすい言葉であることは確かです。

そして、「うしはく」というのは、「知らす」者の委任を受けた者が実際の政治を行うことです。実は、この考え方は、現在の日本国憲法に象徴天皇制として受け継がれているのです。


 

 国家有機体説と社会契約説

日本の国家をどのように説明するのか。現在の日本国憲法は、J.ロックの社会契約説を採用しています。個人と国家との関係を契約関係として捉えるのです。明治憲法は、国家有機体説で説明できます。日本は家族的国家観を有する国ですので、それを合理的に説明出来るのが国家有機体説だからです。有機体、つまり国という組織を頭があって胴体があってというふうに一つの生き物のように考えるということです。そうすると、明治憲法と日本国憲法を連続線で捉えることができなくなります。つまり、本質的な部分が変更されてしまっているからです。これを合理的に説明しようということで出てきたのが、宮澤俊儀の「八月革命説」です。

「八月革命説」は憲法学会の通説ですが、敗戦を境に、革命が起きたと考えよう、そのために違った価値観の憲法が制定されたとしようというものです。ただ、この説に対しては、明治憲法の改正条項を使用して日本国憲法を策定したこと、実際に日本国内で革命が起きていないこと、などを理由として反対を唱える方もいます。

(「JapaneseClass.jp」)

 憲法改正に向けて、解説的な記述が教科書に必要

憲法改正反対を唱えている政党や団体がありますが、未来永劫に現在の憲法を改正しないというのは、現実的ではありません建物と同じで法やきまりも制度疲労を起こしますので、時代に対応できるようなものに憲法をその都度変えていくのが現実的かつ合理的な考え方です。改正について、絶対反対を唱えている政党が共産党ですが、彼らは独自の共和国憲法をすでに用意しています。一説によると、代々木の党本部の金庫の中に保管されているそうです。彼らは、政権を獲った時に、一挙に新しい憲法にするつもりなので、それまでは現憲法を護るという考えなだけです。

現行の教科書の憲法に関する記述を見ると、明治憲法と比較をして、現在の憲法がいかに優れているかという書き方になっています。憲法とか法律というのは、その時代に於いて必要性に駆られて、当時の人たちがその叡智を結集して編み出したものです。本来は、比較して論じることではありません。比較したところで、その憲法の「客観的位置付け」が定まる訳ではないからです。

客観的な指標ということで、今回紹介するのは、東大のケネス・盛・マッケルウェイン教授が考えられたものです。統治機構を30、人権は26の代表的な項目を設定し、各国の憲法にそれぞれの項目についての規定がいくつあるかということで、その数に基づいて指標を作るというアイディアです。(すいません、画像が上の方、途切れてしまっていますが、「統治が多い」です。そして、一番上の赤丸はフランス憲法です)

(「日本経済新聞」)

見方ですが、横軸は時系列を表します縦軸を見れば人権重視なのか、統治重視なのかが分かります。真ん中にあるということは、両者のバランスが取れているということです。彼の指標を使う限り、明治憲法はバランスが取れた憲法ということが言えます。日本国憲法を守れと言っているのは、左翼・リベラ派だというのも無碍なるかなということです。なお、スマホでは画像が上手く取り込めないようです。関心がある方は「ケネス・盛・マッケルウェイン教授 指数」で検索して見て下さい。

日本国憲法は、生存権、男女平等、労働者の団結権などが「点数」を稼いだようです。他方、統治機構で何が不足しているのかということですが、緊急事態に関する条項、地方自治に関する条項が不足しているため、全体的に下に寄ったということだそうです。現在の日本国憲法を理想に近い憲法と宣伝している政党もありますが、客観的な位置づけはそうではありません。

日本国憲法は世界最古の憲法となってしまいました。はるか75年前にGHQによって作成された憲法をいつまでも使うような時代ではありません何か問題があればその都度良い方向に変えていくというのが、現代の考え方です。日本の社会の発展のため、何をどのように変えたら良いのか、そんなことを議論する時代です。

(「読売新聞」)

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