「企業の不正事件について、問題にしたいと思います」
「最近は「多いなあ」という印象です」
「不正問題というのは、組織のあり方を考える上で、一つの材料を与えてくれます」
「組織ぐるみという言葉がありますが、組織的な犯罪ということですか?」
「そのようなケースもありますが、ここで問題にしようとしているのは企業ガバナンス(企業統治)の問題です」
「そういう問題意識を感じさせるようなことが、最近あったのですか?」
「ダイハツの問題です。品質が不良な製品を生産ラインに供給し続けていたのです。その少し前にあったビッグモーターの問題もガバナンスの問題です」
「大規模な不正事件だったみたいですね。全工場を停止したのですから」
「そういった不正事件の背景には、必ず人の不満があります」
「従業員の何らかの不満が不正を引き起こしたということですか?」
「根底には、何らかの不満が渦巻いていると思います。企業ガバナンスというのは、そういう不満が起こらないようにするということなのです」
「ここからが本論です ↓」
ダイハツで多くの不正が発覚する
昨年の12月の暮れに、ダイハツで新車の安全性能を確認する認証試験で不正が見つかり、同社の奥平社長が謝罪会見をするということがありました。その内容は、新車の安全性を確認する試験における不正が174件あったこと、そして不正は25の試験項目におよび、さらに現在国内で開発中の28車種すべてに見つかったことを明らかにした上で、当面全工場を停止するという衝撃的な内容でした。
第三者委員会の報告書によると、その主な原因として、短期間での新車開発ということを強いてきたことを挙げています。そのことが認証試験にしわ寄せが来て、極度のプレッシャーがかかった結果と分析しています。
そんな単純な問題ではないと思っています。今回、『FACTA』(2月号)が発表した「トヨタが誘発『ダイハツ不正』」の記事を参照して、その構造について解いてみたいと思います。
(「Kグリーンエナジー」)
不正の背景に、大小の不満あり
2人の会話にもありましたように、不正の背景には、何らかの不満があります。人間は感情の動物なので、不満のはけ口をどこかにぶつけようとします。自分の中のストレスを解消するためです。一種の自己防衛行動です。
上司からの命令に対して逆らうことは出来ない。ただ、その命令が余りにも過酷な内容であれば、当然不満が高まります。製造の現場にいる人間にとっての良心はより良い品質の製品を作ることですが、その良心を捨て去ることによってストレスを解消し始めます。
「過度にタイトで硬直的な開発スケジュール」を勝手に決めた首脳部に原因があると第三者委員会の報告書は語っています。過度であっても話のもって行き方によっては、会社に頼りにされている、期待されていると思い、不満どころか逆にエネルギーが出ます。企業ガバナンスの第一は人心把握なのです。
(「YouTube」)
腐敗や不正は「中間管理職」の視線の方向で決まる
『FACTA』は、トヨタとの関係を見なければいけないと指摘します。それによると、出資関係が1967年から始まっています。1998年には出資比率を51%に引き上げて、子会社化します。ダイハツにとっての転機は、トヨタ副社長の白水宏典氏がダイハツの会長に就任した2005年であったと指摘します。
その白水氏の時にダイハツはリッター30キロの「ミライース」を開発し、軽自動車シェアトップの「スズキを追い越す勢いの会社に成長させた」(『FACTA』)のです。この白水氏は2016年までダイハツに君臨しますが、不正は2014年から急増しています。「硬直的な開発スケジュール」が現場に示されたのでしょう。
政治の腐敗は中央集権国家でよく起きます。中国で習近平が腐敗闘争を掲げても一向に減らないのは、中央から派遣された官僚や幹部が上を向いてしまっているからです。現場を踏み台にしてのし上がろうとして、「上部伝達機関」になり果てます。下の者たちは反発する者とその幹部に媚びへつらう者の2つに分かれます。
組織の力は一つにまとまることによって発揮されるのですが、まとまるどころか分裂をし始めます。そして、変な癒着がはびこり腐敗の温床となります。こういった現象が企業でも起きます。中間管理職の視線がどちらに向いているのか、上を向いているのか、現場に向いているのか。それによって大きく変わってきます。
(「YouTube」/ミライース)
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