「東京証券取引所の株式分布調査によると、2020年度の個人株主数は5981万人で、前年より300万人増えて最高となったそうです(『日経』2021.7.06日付記事より)」
「増えた原因は、何ですか?」
「インターネットを通じて、株式の売買の魅力を伝えたことと、知名度のある企業が新規参入の株主を増やしたことの2点をあげています」
「知名度のある企業というのは、具体的にどういう会社ですか?」
「ソフトバンク、オリックス、ENEOSといったところですね。ソフトバンク、オリックスの2社だけで130万人くらい株主を増やしていますからね」
「両方とも、球団を持っていますよね」
「株を買う方も、安心感があるということでしょうね」
「素朴な疑問ですが、多くの人に株を買ってもらうと、何か企業にとって良いことがあるのですか?株を買ったお金が、企業にいく訳ではないですよね」
「株を買ったお金は、売った人に行くだけです。多くの人に株を持ってもらえば、株価は安定しますし、株主になれば当然その企業を応援して、関連商品を購入してくれます。一石二鳥の効果を狙っているのです」
「だから、株主優待とか、配当があるのですね。実は私もついに先日、ネット証券の口座を開設しました」
「そうなんですか! 何かきっかけがあったのですか?」
「ウチのダンナがまとまったお金があるなら、株に投資したらどうかと、実は前から言っていたのです。それをずっと聞き流していたのですが、前に10万円以内でも株は買えるよって教えてくれましたよね。それから……」
「自分なりに研究したのですね」
「証券会社は敷居が高いなと思っていたのですが、スマホで手続きが出来ると聞いて口座だけ開設しました。ただ、そこから何を買って良いか全然分からず、昨日ダンナと二人でインターネットを見て、これがいいとか、こっちがとかやっていました」
「ここからが本論です ↓」
日本に足りないのは金融教育
日本証券業協会の集計によると、30歳未満のインターネット取引口座数は昨年度1年間で45%増えたそうです。コロナ禍にあってインターネットを見る時間が増えたのと、企業の宣伝やネット証券会社の巧みな勧誘などで「株式投資に今まで踏み出せなかった層にも関心が広がっている (ネット証券談)」(『日経』2021.7.16日付)、その結果ということでしよう。
超がつくほどの低金利時代、手許の現金を定期預金に預けたとしても殆ど利息が付きません。定期預金の金利が0.05%ですので、仮に300万円を1年定期にしても1200円位です。10万円以下で買える株式もあるし、配当のある会社もあります。銘柄を上手く選定できれば、それなりに楽しめて資産を殖やすこともできます。
ただ本来は、そういったことを金融教育ということで、学校教育の中で経済の仕組みとセットにして教えるべきことです。今までは、「使う、貯める」だけを教えて、殖やすを教えていなかったのです。殖やすことを考えるのは「邪道」という考え方が戦前の日本に強くありましたので、それの影響だと思います。ようやく、「家庭科」の中で来年度から学校現場でも教えることになりましたが、ここにも中央集権的教育行政の弊害が出ています。
(「三井住友カード」)
「大本営指令」を一体いつまで続けるつもりなのか
文科省がウンと言わない限り、教科書に書き込むことも、学校現場で教えることも出来ません。アメリカであれば、学校現場の教員の判断で、「殖やす」について社会科の教員が株式会社の仕組みを教えた流れで説明することも、家庭科の教員が「使う、貯める、殖やす」の3つを教えることも自由です。その際に、証券会社が作成したパンフレットを教科書代わりに使っても構いません。
日本の場合は、調理師の免許を与えておきながら、メニューと材料をすべて本店が決めているのです。しかも滑稽なことは、本店の社員の多くは調理師の免許を持っていないことです。殆ど、マンガの世界だと思っています。これからの激しい世界の流れに対応するためには、そこを直さないといけないと思います。大本営の指令がなければ一歩も動けないようではダメでしょう。もうすぐ、自民党の総裁選がありますが、教育についてのそういった問題意識をもっている方がトップになって欲しいと思っています。
(「つぶやき館」)
経済は生き物なので、完全な予測は不可能
ネットを見ていると、「株の学校」、「株の指南」ということで、新しく投資の世界に入ってきた人たちをターゲットにするような商売を始める人がいます。最終的には、会員になってもらって会費を多くの人から集めるために、株には確固とした法則があるのでそれを教えます、あるいはこの先生が上がると言った株はほぼ高い確率で上がる(絶対にと言うと詐欺になるのでそれは言わない)というようなカリスマ講師を登場させるような勧誘の仕方をします。ただ、経済は生き物なので、予測は不可能だと思って下さい。目の前のカラスが明日どこにいるか分からないように、誰も明日の株価など分からないのです。
全く分からない訳ではありません。カラスの正確な居場所は分からなくても、飛んでいるか、どこかに止まっているかのどちらかだということと、日本にいること位はわかります。株価も同じです。上がっているか、下がっているかのどちらかです。そして、明日も証券取引所の上場銘柄であろうことは分かります。
チャートというのがあります。それを見れば今までの株価がどのように動いたかが分かります。株には「性格」がありますので、チャートを見ればどういった性格なのか、およそ分かります。乱高下しやすい、気性の激しい株なのか、殆ど値動きがしない株なのか、前は気性が粗かったけれど、今は大人しいのか、あるいはその逆もあります。
ただ、チャートはあくまでも後解釈の道具として使うものなので、それをいくら分析しても明日上がるか、下がるかは分かりません。簡単に言えば、カラスにGPS機能の付いた足環を付けて、そのデータを取るようなものです。データから、活発なカラスとか大人しいということが分かりますが、明日のカラスの位置を知ることは出来ません。
(「岡三オンライン証券」)
森を見て、初めて若木が成長するかどうかが分かる
完全な予測は不可能ですが、ある程度の予測は可能です。言ってみれば、そのための経済学、統計学なのです。逆に、何故ある程度の予測が可能なのか。それは、人間が様々な経済政策、つまり金融政策、財政政策を行うからです。人間が行う政策なので、それは一つの方向性が必ずあります。それに生き物である経済が反応するからです。
カラスのエサを常にある場所に置いておけば、やがてカラスはそこに来ればエサにありつけることを知って、多くのカラスが集まるようになるでしょう。人間が何か自然界に対して働きかけをすると、それに対してリアクションが返って来ます。そこに法則性があれば、ある程度の予測が出来るようになります。
つまり、どのような経済政策がどのような意図の下で行われているかを知れば、経済の大きな流れを掴むことが出来るということです。その森が全体として生命力をもち隆盛かどうか、それを知る必要があります。そうでないと、その森にある若い木が大木になるかどうかが分からないからです。その木だけを見ていても判断することは出来ません。立派な若木かもしれませんが、森林火災で燃えてなくなってしまうこともあるからです。株を買う場合は、会社の業績やその会社に関する諸々のデータだけではなく、経済の大きな流れ、つまり森を見ることがどうしても必要です。
森の見方について、近いうちにお話をしたいと思います。
(「アメブロ」)
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