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最低賃金制度について (2) ―― 最低賃金を引き上げるのは、基本的に労働者の力

「今日も最低賃金の話題でいきましょうか?」

女性

「どうしたのですか? 私はもうてっきり、台湾問題だと思って予習してきたのですけど……」

「その予定だったのですが、中央紙4紙の社説がすべて同じような論調だったので、最低賃金について大いなる思い込みと、現場での取材不足があると思ったのです」

女性

「前回のブログが出た次の日、社説が出ましたよね。普段なら、ほとんど関心を持たないのですが、読みました」

「私は「産経」「日経」「読売」「朝日」の社説に一応全部目を通しました。ちなみに、「毎日」はこの問題で社説を出していません。それはともかく、最近はネットですべて読めますから便利ですよね」

女性

「その結果、すべて同じような論調だったので、愕然としたということですね」

「「産経」と「朝日」が同じというのも結構珍しいのです」

女性

「逆に、それは良いことだと思うのですが……」

「実態を正確に捉えた上で論調が同じであれば良いのですが、どの社も共通の思い込みを出発点としていると思います」

女性

「共通の思い込みというのは何ですか?」

「最低賃金は高い方が良いというものです」

女性

「最低賃金というのは『諸刃の刃』とおっしゃっていましたよね」

「両面から捉える必要があるのですが、1面的な見方に終始しています。中央紙がこれでは、先が思いやられますので、今回も最低賃金の話をしたいと思います」

女性

「ここからが本論です ↓なお、表紙の絵は「アゴラ」の提供です。」

 各紙の最低賃金についての捉え方

各紙同じような論調ですが、最低賃金を上げれば良いというものではない、ということを比較的分かっているのは「産経」と「日経」です。「産経」の社説の表題が「中小企業への支援強めよ」となっていますし、「日経」は「労働市場改革」が大事という認識をもっていることが分かります。

4紙のこの問題についての表題を以下表にしてみました。

朝日 最低賃金、引き上げの歩みを続けよ
産経 中小企業への支援強めよ
読売 物価高に対応したのは当然だ
日経 着実な最低賃金上げへ労働市場改革急げ

 

 最低賃金を仮に1500円にすれば中小零細企業は軒並み潰れる

「最低賃金、引き上げの歩みを続けよ」というのが朝日の主張ですが、高ければ良いというものではありません。前回のブログでも書きましたが、高く設定することによって雇用減が起こることもあるからです。要するに、人によっては失業するということです

経済分野というのは、自然の流れに任せて、本来は政治が関与しない方が良いのです「政策で人為的に実施した賃上げはどこかで壁にぶつかる」(「日経」2022.8.3日付)からです。経済政策や、ましてや数値を決める行政は、実体経済の後追いで良いのです。国や行政が先頭に立って、金額を決めるという発想を早く捨て去ることが肝要です。

空論にならないために、具体的に考えてみましょう。仮に共産党やれいわが主張している1500円にして計算すると1500×8×5×4=24万円/月になります。中小の零細企業では技術職の人員確保が大変なので、高卒である程度見込みがあると判断した人に対して、正社員として雇用しようとします。そういう職場は、週40時間でコンスタントに終わる業務を期待することに無理があります。不定期で様々な仕事が飛び込んで、それに対応するというのが現実です。つまり、当然残業があり、賃金の上では、プラスαがあるということです。社会保険費の負担を雇用主は負いますので、一人の正社員に対して30万円近い支出を覚悟しなければいけません。派遣など非正規でも24万円となります。

こういった数字をそのまま企業が抱えれば、中小の零細企業は潰れます。共産党は日頃から中小企業の味方であるかのようなことを言っていますが、現場に寄り添って政策を考えていないことがこれで分かります。

(「東京新聞」)

 

 海外からの出稼ぎ労働者に対しては新たな法を制定して対応

日本は自由主義経済の国なので、本来最低賃金の金額を国が設定すること自体が間違っています。時給300円で働く人が出てしまう、と思うかもしれませんが、本人が嫌なら仕事を変われば良いだけの話です。中には、お金は関係なく、この仕事がしたいという人がいるかもしれません。例えば、お土産物を営んでいる人がいるとします。年老いたので助けが必要と思っていると、高校を卒業したばかりの近所の女の子が「おじさん、手伝ってあげるよ」と、バイト代は払えないよおじさんが言うと「300円もくれればいいよ。今までお世話になって来た恩返しだから」という話があるかもしれません。このケースの場合は、おじさんにしてみれば店を畳まなくてもよくなったし、彼女からすれば恩返しと社会勉強ができます。

様々な思いが交錯して、労働市場の実勢に合わせて労働賃金の額が定まっていくのが自然な姿なのです国が最低賃金を決めることは誇らしいことでも何でもありません。

こういうことを言うと、海外からの出稼ぎ労働者が低い賃金で雇われる危険性があるという人がいます。それについては、新たな法律を作って対応すれば良いだけの話です。例えば、「外国人労働者賃金法」という法律を別に作って、そこで実態に合わせて金額を決めるシステムを導入すれば良いのです。そもそも、日本人に対する最低賃金の金額を外国人労働者にそのまま適用しようという考え方自体が、乱暴なのです

(「第一生命経済研究所」)

 

 最低賃金を引き上げるのは、基本的に労働者の力

最低賃金について各紙は社説でいろいろ述べていますが、抜け落ちている視点は労働者に対するメッセージ性です。最低賃金しか受け取ることが出来ないというのは、本人の能力・技能が最低として評価されているからです。

中にはそれで満足している人もいますが、不満だと言う人は、自らを発奮させて自身の能力向上のために努力するということでしょう。日本は社会主義国ではないので、自分の人生と自分の価値を高めるためには、絶えざる努力が必要です。そういったメッセージ性がどの新聞社の社説にもありませんでした。

新聞は公器と言われているのは、国民や読者に対して、社会の公的な利益という立場から時には苦言を呈する役割が期待されているからです。新聞の相手は権力者だけではなく、読者もいます。常に読者に耳触りの良いことばかり書くのではなく、時には生き方の指針となるような辛口のメッセージを発する必要もあるのです。

(「税理士法人新日本(熊本市の会計事務所)」)

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