
「前回に引き続いて、「1票の格差裁判」を話題にしたいと思います」

「「一人一票」が民主主義にとって重要な原理ですが、それが絶対ではないということですね」

「民主主義というのは、実は非常に曖昧であり、アバウトな概念なんです」

「考えてみると、多数決自体が結構、乱暴なやり方ですよね」

「多数が必ずしも真ならず、ですからね。ただ、これも民主主義のあり方の一つなのです」

「様々な方法や考え方を組み合わせて、より良い結果を導き出そうというのが民主主義と考えれば、良いのですね」

「「一人一票」も、そのうちの一つという受け止めをすれば良いと思います」

「世界の他の国はどうなんですか? 2院制の国はいくつかありますよね」

「2院制を採用している国は、それぞれ違う原理で議員を選んでいます」

「その辺りも探っていきたいと思います。ここからが本論です ↓ 表紙写真は「47NEWS」提供です」
「一人一票」原理の“絶対化”は、民主主義を一元化する危険な発想
一人一票原理そのものを否定するつもりはありません。問題は、それを民主主義唯一の基準とみなし、他の価値を切り捨てる点にあります。人口比例だけで議席を配分すれば、都市部の声ばかりが強くなり、離島や山間部の意見はかき消されます。過疎地こそ政治の支援が必要であるにもかかわらず、制度的に国政参加のハードルが高くなる構造が生じます。
さらに、投票価値の形式的平等を絶対視する態度は、「地域代表」、「多元的利害の調整」、「政治的弱者の保護」といった民主主義の核心的価値を軽視する危険性をはらみます。これは、民主主義の名を借りた一元的思考であり、多様性を前提とする民主主義の理念から外れた発想と言わざるを得ません。
格差訴訟の中心を担う弁護士グループは、衆議院だけでなく参議院にも「一人一票原理」を適用すべきだと主張しています。しかし、もし衆参がともに人口比例のみで代表を選ぶのであれば、両院の議員構成はほぼ同じになります。都市部の人口が多い以上、東京都・神奈川県・愛知県など人口密集地の声ばかりが強まり、地方や過疎地は政治的影響力を失います。二院制とは、政治的多元性を確保するために、異なる代表原理を併存させる仕組みだからです。にもかかわらず、人口比例一本の論理を衆参の両方に適用すれば、二院は「同じ民意のコピー」と化し、制度としての機能が重複し、結果的に一院制に近い状態になります。二院制を保持する意味がありません。

(「Genspark」)
世界の民主主義国は「異なる代表原理」を採用している
主要な民主主義国の二院制を見ても、必ず「代表原理」をズラして設計しています。アメリカ:下院=人口比例、上院=各州2議席(人口無関係)。ドイツ:下院=人口比例、上院=州政府代表。フランス:下院=直接選挙、上院=地方代表。カナダ:上院は地域代表制。イギリス:上院は任命・伝統・聖職者など人口比例とは無関係
どの国も、上院を人口比例で選んでいるわけではありません。むしろ、下院の人口代表原理とは異なる価値を反映させるために上院が置かれています。これは、都市化が進展して、人口の偏りが激しい現代国家において、人口の多い地域の意見だけが政治を支配しないようにするための工夫です。
世界の常識から見ても、「二院制は異なる代表の仕組みをぶつけ合い、民主主義の多元性を確保する仕組み」であることは疑いません。しかし、日本の格差訴訟グループは、この基本的な制度設計の意図さえ理解していないように見えます。

(「毎日新聞」)
一人一票原理の「絶対視」は民主主義を狭める
「人口比例こそ正義」という思想は、一見すると民主的に見えますが、実は非常に一元的です。この発想は以下の問題を孕みます。1.地域代表性が消える。2.多元的価値が国政から排除される。3.少数地域・過疎地が政治的に孤立する。4.“人口の多さ=正義”という危険な価値観が形成される。5.二院制が無意味化する。こういった問題が派生します。
民主主義の精神とは、単一価値の絶対化ではなく、多様な価値の調整にあります。その意味で、「一人一票原理」を参議院にまで適用する構想は、民主主義の原理そのものから外れており、多元社会の政治制度としては不適切と言わざるを得ません。
二院制の本質は、「多様な価値を吸収し、国家運営に反映させる」ことにあります。衆議院と同じ選び方をする参議院であれば、それはもはや二院制ではありません。「一人一票原理」を絶対化する格差訴訟の動きは、政治思想としても制度論としても根拠が希薄であり、民主主義の多元性を損なう方向に進んでいます。人口比例だけが正義ではなく、地域代表もまた民主主義の重要な柱です。制度の原理を誤解した議論に流されるのではなく、多様な価値が共存する政治制度とは何かを一人ひとりが考えることが大切です。

(「You Tube」)
読んでいただきありがとうございました。
よろしければ「ブログ村」のクリックをお願いします。
↓